オリジナルワイン2021ができるまで・東京ワイナリー編(2)

2021年9月下旬、夏の暑さがじりじりと続く頃、この日は東村山市にある志村果樹園さんへ。東京ワイナリー・醸造家の越後屋さんのトラックに乗せていただき揺られること5分ほど、大きな幹線道路の目の前に果樹園が広がっていました。

到着して一息つくまもなく手入れバサミとかごを渡された私。志村さんの手解きを受け、すぐに収穫がはじまりました。こちらで栽培されているのは白ワインによく使われる「シャルドネ」、そして「ベリーアリカント」の2種類です。果樹園を囲むように育てられているシャルドネは、垣根栽培で育てられています。大きな葡萄の葉の下に大きな実をぎゅっと寄せ合うような形のシャルドネ。片手に乗せるとずっしりとした重みがあります。

葡萄の茎を切り、覆っている袋をあけると中から甘い香りが。こんなに甘いと虫が多いのも当然、内側は虫の住処になっていました。いつも綺麗に並んだ葡萄しか見たことのなかった自分にとっては、かなりの衝撃。志村さんに見せると「無農薬だからどうしたって虫や動物に食べられるんだ」と一言。虫に食べられていない部分をパチッと綺麗に整えてカゴの中へ入れていきます。

もったいないようにも見えますが、畑に落とした葡萄は畑の肥料や虫たちの餌になります。なかなか勇気のいる剪定に戸惑いつつも、気づけば2時間ほどたちシャルドネの収穫は終了。

これで終わりかと思いきや次は「ベリーアリカント」の収穫へ。暑さで疲れがではじめている私に比べ余裕たっぷりのお二人。頼もしい二人の背中を追いかけ次の作業へ向かいます。

ベリーアリカントは棚作り栽培のため、前回の澤登さんと同じく上を向いての収穫です。一つとって袋をあけると、ブルームがきれいついたアリカントが。このブルーム、葡萄作りでは大事な存在で、果実に含まれる脂質から作られた「ろう」が雨や病気から葡萄を守り、果実の水分の蒸発を防いでくれるのです。

日が沈み辺りが暗くなり始めたところで、この日の収穫作業は終了しました。

2週間後、収穫したベリーアリカントを圧搾するため再び東京ワイナリーさんへ。桶の蓋を開けてみると、既にいい香りが漂っていました。東京ワイナリーさんでの圧搾作業は2回目ということで、去年の感覚を思い出しながら今年も人力で搾ります。

少し力を入れるだけでバスケットプレス機からじわじわと溢れてくる果汁。搾り始めはほとんど力がいりません、後半が自分の体力との戦いなのです。プレス機が下がるにつれ徐々に重くなるハンドル。越後屋さんに支えてもらわないと回せないほど重く、力をいれすぎると自分がふっとんでしまうことも。

「一人で作業するときは、終わるのが深夜近くになるんです」と言う越後屋さん。この作業を越後屋さん一人で行うなんて考えられないほど体力のいる圧搾作業です。すでに筋肉痛の気配を感じつつも、搾りきれていない葡萄を取り出してほぐし、再びプレス機の中へ。この作業を何度か繰り返し、ようやくワインの元が完成します。

気づけば真っ赤に染まった自分の手。ベリーアリカントの果汁はとても濃く、一度手につくとなかなか落ちないのだそう。それでも仕込みに参加できた証として、自分の手も誇らしく思えました。ここから再び発酵期間がはじまります。

1ヶ月後、この日はワインの味を決める「アッサンブラージュ」を行いました。ブレンドするという言葉にも言い換えられますが、味を組み立てるという意味も含むフランス語の方がなんだかしっくりくるこの作業。今年用意していただいたのは、「ベリーアリカント」「山葡萄」「キャンベルアーリー」「ナイアガラ」「マスカットベリーA」「高尾」の6種類。どれも東京都内で収穫された葡萄です。

オリジナルワインの組み合わせを参考に足して試飲してみると、どの種類の葡萄も喧嘩している状態。少しづつ葡萄の種類を減らしたり、分量を変えたりと試行錯誤の時間を過ごしました。

そしてようやく2021年のオリジナルワインが完成しました。去年よりもそれぞれの葡萄が力強く、ぎゅっと旨みが詰まっています。爽やかな香りのなかに、畑を思い浮かべるような土や根の香り、6種の葡萄のそれぞれの個性が一つにきゅっとまとまりました。東京で元気に育った葡萄たち、まずは飲んでそのおいしさを体験してみてください。

レポート前編はこちら>>2年目の東京ワイナリー ~前編~

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