オリジナルワイン2021ができるまで・東京ワイナリー編(1)

2021年8月末のまだ蒸し暑い日が続く頃、収穫のため降り立ったのは国立駅。東京ワイナリーの醸造家・越後屋さんから、「とにかく蚊が多いから刺されないような格好で!」というメッセージを受け、この日は首から腕まで肌が露出しないような格好で向かいました。こんなところに果樹園があるのかと思うほど住宅街が続く道を進むと、目的地の「澤登キウイ園」に。

こちらでは名前にもあるキウイと「山葡萄」を育てています。ちょうどこの日は東京ワイナリーさんの声かけに集まったサポーターの皆さんと収穫。昨年は収穫された葡萄を使ってオリジナルワインを仕込みましたが、木に実った葡萄を獲るのは初めて。こちらの山葡萄は棚仕立てに近い栽培方法で育てられ、高い位置に棚を作り、そこに葡萄の木を誘引させています。風通しがよく、葡萄の葉が太陽にあたる面積が広くなることから、日本でも生食用の葡萄づくりに応用されています。

実際に山葡萄を獲ってみるとデラウェアと同じような大きさですが、デラウェアのようにぎゅっと実を寄せ合っておらず、一粒一粒が独立しているような形。「ついているのは埃くらいだから、ぜひそのまま食べてみてください。山葡萄はポリフェノールがたっぷりなんです」と教えていただき、食べてみると、甘酸っぱく濃厚な味。小さな一粒にぎゅっと旨みがつまっていました。

実は国立は、山葡萄とキウイの栽培を日本ではじめて開始した場所と言われています。それがこの「澤登キウイ園」さん。元々こちらでは、葡萄を研究するために山葡萄の栽培をはじめたそうです。育ててみると山葡萄は病気にも強く、それ以降こちらでは無農薬無肥料で育てています。

山葡萄は雌雄異株のため園内には4つの雄木を植えており、5月頃に風にのって受粉します。しかし、その年によって雄木の調子の良し悪しがあるため、採れる量は毎年変わると生産者の澤登さんは笑っておっしゃいました。ちなみに今年は豊作とのこと。

山葡萄は大きな葉の影に隠れるように実るものもあれば、人の手が届かないような場所に大きな実をつけるものが多く、終始上を見上げながらの作業です。
「山葡萄も人に獲られたくないんだろうなあ、上へ上へってどんどん実が成っているよ」

見上げてみると、確かにこれは届きそうものないところに大きな実をつけた山葡萄。
遡れば古事記にも載っているほど古くから日本の在来種として存在し、薬代わりや滋養強壮のため親しまれてきた葡萄ですが、ワインとして活用されるようになったのは近年のこと。

昨年のオリジナルワインにも山葡萄がブレンドされていますが、どの葡萄よりも色味がつよく、少し入れるだけで全体の味わいに深みや渋みが加わります。赤ワインらしさがグッと際立つ大事な存在です。

気づけばカゴいっぱいの山葡萄。自分一人だけでも三箱は山盛りになるほど収穫できました。この後は一つ一つの葡萄を選果、そして破砕作業が待っています。これも全て人の手によって行うもの。

東京ワイナリーさんのワインは、多くの人の手に支えられて作られています。どのワインにもたくさんの人の愛情や思いが詰まったものばかり。私も昨年以上にワインへの愛情が深まっています。収穫した葡萄たちは一体どんな風にワインになっていくのだろうか……そんな、親が子どもを見守るような、携わった人々の愛情や願いが詰まったワインが出来上がりました。ワインへと育った葡萄たち、食卓を囲む楽しいひとときを彩ってくれるでしょう。

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