オリジナルワイン2022ができるまで・東京ワイナリー編(1)

照りつける日差しはまだまだ夏のようでも、そよぐ風は少し秋らしくなってきた8月末。今年もオリジナルワインづくりはぶどうの収穫からはじまりました。昨年に引き続き、国立にある澤登キウイ園さんへ「ヤマブドウ」の収穫に行ってきました。

元々この畑は研究のために開かれた場所で、原木となるヤマブドウはヒマラヤの山麓で採取された種を蒔いて育てたものだそうです。そこから雌雄の木を育て、園内の角には雄の木を、中心には中でも選抜された雌の木が植えられています。5月頃に吹く風に乗って受粉したヤマブドウは8月のこの時期に収穫の時期を迎えます。

今、畑に植えられている木はすでに樹齢40年超え。ある程度育った木は下垂させて樹勢を止めるそうですが、ここではあまり人の手は介入せず自由に育っているため、枝が張り巡っています。ここがヤマブドウの収穫の難所なのです。

棚仕立てのぶどうの収穫は常に上を向いての作業です。かといって、自分の身長よりも低い場所もあれば、脚立に登らないと届かないところも。収穫作業をしていると、そういった人の目の届かないところにこそヤマブドウは隠れていたりします。ほとんど収穫が終わっている場所も屈んで下から見上げると、まだまだいっぱい!忍耐強く探せるかがヤマブドウの収穫のポイントです。

ヤマブドウの実はきゅっと小さめなのに、中につまった果実はブルーベリーよりもさらに酸味があるのが特徴です。収穫作業中に一粒いただきましたが、今年も酸っぱい。この皮の渋みと果実の酸味がワインの味を決める大事な部分でもあります。小さいのに野性味溢れるヤマブドウ、オリジナルワインづくりには欠かせない存在です。

約3時間の収穫作業で、気づけばかごいっぱいのヤマブドウがいくつも並んでいました。ここからは、東京ワイナリーさんでは恒例のヤマブドウの実を一粒ずつ採る除梗(じょこう)作業*がはじまります。*除梗(じょこう)とは、果梗(かこう)と呼ばれるぶどうの房と実を繋ぐ部分を除くこと。つまり、房から実を一粒ずつ外していきます。


もくもくと作業をするベテランの方に作業のコツを聞くと、「自分が見て、おいしそうな実を選ぶこと。」だそう。艶々と輝くおいしそうな実を一つ一つ選定していきます。

近くで作業されていた方たちのところに混ぜていただきました。お二人とも東京ワイナリーさんのボランティアを何度か経験されているそうで、作業もお手の物。
「東京でワインを作っているなんて、聞いた時びっくりしたんですよ。そしたら作業のボランティアも募集していたんで、もうそのまま申し込んでました。」
「私は元々ワインが好きだったんですけど、東京ワイナリーさんがきっかけにもなり、ナチュラルワインを好んで飲むようになったんですよね。」
気温は30℃を超え、汗がじとっと流れるような蒸し暑さ。炎天下での農作業は確かに過酷ですが、ここにいる人々は汗を流しながらも楽しくてしょうがないという表情が目に見えて分かります。

越後屋さんの「そろそろ終わりにしましょう!」という声に答えつつも、みなさん手がなかなか止まらない様子。ようやく重たい腰を持ち上げて最後の片付け作業に移ります。除梗したヤマブドウを持っていくと樽のなかにはきらきらと光るヤマブドウがぎっしり。まるでブラックパールみたいですね、という声にみんなうなずきます。

帰り際、この畑の原木となるヤマブドウを見せていただきました。

他のヤマブドウと異なり実は大きく、もう少し熟すと黄桃色になるんだそう。ヤマブドウの栽培の発祥はここ、澤登キウイ園さん。この木が日本で栽培されるヤマブドウのはじまりの一つとも言えるでしょう。

収穫に参加する度に思うのは、参加するみなさんがとにかく楽しくてしょうがないという表情をしていること。誰もがこのワインづくりに夢中になっています。そんな多くの人々の愛情がつまったぶどうたちは今年もどんなワインになっていくのでしょうか。
 


オリジナルワイン2022ができるまで
D&DEPARTMENT PROJECTが、親睦の深いワイナリーさんと一緒につくるオリジナルワインシリーズ。2020年から始まったワイン作りは、今年で3年目。今年も生産者さんを訪ねワインづくりに参加したスタッフによるレポートをお届けします。(不定期連載)