五感を磨く発酵茶。Jikonkaから伊勢茶のルーツを学ぶ旅

d47 MUSEUM第30回企画展「ものにはまわりがある展」では、「もののまわり」をテーマに、地域のものづくりや、場所、食文化、活動を紹介しています。本展では、その土地らしいプロダクト、場所、食文化、活動を「もの」として捉え、その「まわり」を会場内で紹介する他、各地のキーマンとのツアーや勉強会など、現地へ実際に旅をして学ぶプログラムを実施しています。
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ツアー終盤となった、2022年9月24日は、三重県亀山市へ。

亀山市で衣食住の道具や楽しみ方を提案する「Jikonka」の米田恭子さんと一緒に、伊勢茶について学ぶ旅です。

 

「Jikonka」は、米田恭子さん・西川弘修さんご夫妻が、1998年に三重県関宿に立ち上げた、衣食住にまつわるものを扱うギャラリー。東京にも拠点を構える。関町の「Jikonka SEKI」では、オリジナルのウエアから、各地の作家たちの器や、染ものを実際に手に取ることができ、5分ほど離れた「工房 而今禾」では、手摘みのお茶作りや、正藍染めにも取り組み、それぞれを体験できる教室も開催しています。

今回のプログラムでは、米田さんが台湾で出会い魅了された発酵茶を中心に、全国第3位の生産量を誇る、三重県の茶産業を体感していただきました。

 

貴重な茶品種「F4」の茶畑へ

「工房 而今禾」から車で20分ほど。同じく亀山市の米田さんが管理する茶畑へ向かいます。前日までの台風が嘘のように、この日は快晴!絶好の茶摘み日和でした。

聞きなれない「F4」とは、茶品種の名前。台湾の山茶をルーツにもつ紅茶向けの品種です。
戦前の台湾で紅茶生産に関わっていた故 川戸勉氏が試験栽培しており、日本国内でも亀山市だけでしか見つかっていません。

米田さんは「Jikonka」の活動と続ける中で、耕作放棄地となったこの茶畑を案内され、茶葉の大きさや独特な清涼感のある香りなど、台湾茶と類似した要素を感じ、ご自身で茶畑の管理・発酵茶を手がけることとなります。

「F4」の茶畑は、私たちが一般的に思い浮かべる茶畑とは違い、身長よりも高く太い木からなります。(お茶畑=腰高くらいのお茶の木をイメージする方も多いはず‥)その光景に皆さんと圧倒されつつ、早速茶摘み体験へ。

今回の茶摘みは一芯二葉まで。お茶の先端にある芯芽からその下の二つの茶葉までを摘み取っていきます。ほとんどの参加者の方が初めてのところ、まったく感じさせないスムーズな手つきで、皆さん黙々と作業をしていきます。

 

約1時間ほどの作業で、収穫袋がパンパンに‥!両手で抱えるサイズのカゴが、2つとも半分以上埋まりました。カゴに集め、この後工房に戻り「萎凋(いちょう)」(風通しのよい場所に広げ、茶葉を萎れさせて、香りの発揚を促す工程)させていきます。

 

古き良き街並みが残る、関宿の街を散策

街中へ戻り、参加者の皆さんと昼食をとるため、米田さんおすすめの「お食事処 会津屋」へ。山菜や季節のおこわが名物のお店です。ツアー開催時は秋だったこともあり、栗入りのおこわが登場していました。

 

関宿は、江戸時代に整備された53箇所の宿場。東海道五十三次で江戸から数えて47番目にあたり、参勤交代や、お伊勢参りの人々で賑わった町は、今も歴史的な建物が立ち並んでいます。

 

その中で、Jikonkaのお茶のブレンドも行う、創業150年の老舗茶問屋「かねき伊藤彦市商店」へもお伺いしました。

樹齢100年を超えた茶樹から採れた茶葉を使った「百年乃茶」や、三重県の北と南の茶葉をブレンドした「天下一」など、街の人たちにも愛されるここにしかない伊勢茶を求めることができます。お茶の味わいについても丁寧に教えていただけるので、伊勢茶初心者にも安心のお店。

その他にも、銘菓「関の戸」や、旅人が親しんだ餅菓子「志ら玉」など、落ち着いて情景を楽しみながら散策できるエリアです。

 

伊勢茶を五感で体感する茶体験

「工房 而今禾」へ戻り、皆さんお待ちかねの茶体験へ。
今回は、飲み比べをしながらそれぞれの味わいの感じ方の違いを体感していただきます。

まずは「F4」でつくった白茶と、在来種でつくった白茶の飲み比べからスタート。

清涼感のある味わいや、飲んだ後の余韻、茶葉の香りなど。お茶をいただきながら、参加者の皆さんが思う、感想を出し合っていきます。

 

続いては紅茶の飲み比べ。F4の茶葉と、在来種の茶葉との違いを体感します。

 

三煎目は、小さい柑橘に紅茶の茶葉を詰めた「伊勢小青柑」をいただきます。
「小青柑」は中国茶のひとつ。青い時期の柑橘を収穫し、果実を取り除いたあとに茶葉を詰めたお茶です。米田さんたちは自然栽培の柚子を使い、ひとつずつ手作業で作っており、紙の包みを解くといい香りが漂ってきます。

 

「伊勢小青柑」が出たところで、お茶受けが登場。
見た目も涼やかな菓子は、素精糖(さとうきびが原料)と水だけでできた、水まんじゅう。かぼすのスライスと、ゆずのジュレがのった柑橘づくしの一皿です。

 

最後に、水色のきれいな台湾の烏龍茶・文山包種茶(ぶんさんほうしゅちゃ)と、お茶にあわせた栗きんとんと、なつめをいただきました。

 

お土産に、皆さんと茶畑で摘んだ、萎凋させたばかりの「F4」の茶葉をお渡し。
Jikonkaさんとの白茶と比較もしながら、皆さんそれぞれの白茶づくりを目指していただきます。

 

<参加者の皆さんの白茶作り|その後>

ツアーに参加された方より、白茶を乾燥させている過程をお送りいただきました。経過は順調そうで、飲める頃が楽しみですね。

 


今回のツアーでは、お茶をキーワードに各地から集まっていただき、ゆるやかに交流が生まれた回でした。参加者の方が管理する茶畑で、手伝ってくれる人募集!という呼びかけから再集合?というお話も‥。

Jikonkaさんの設えた空間で、静かに皆さんとお茶を楽しんだこの日は、都会にいると見落としてしまっていた過ごし方を体感する時間でした。

三重県はまだまだ広く、ツアーではご紹介しきれなかった場所がたくさんあります。完成したばかりの『d design travel 三重』をもって、各地を巡っていただけると嬉しいです。