d SCHOOL わかりやすい自然栽培 関野塾

2019年夏に荒川土手沿いにオープンした農泊施設「THE PUBLIC」を拠点とし、土手沿いの肥沃な土地を活用し、自分達が生活する土地で、自分達の手で、自分達が食べるものを、自然のままに育てる「わかりやすい自然栽培 関野塾」が開講しました。

今回、私たちと手を取り合い協力いただけるのは、「埼玉県全63市町村キーマン」の方々。まずは、妻沼にある農福連携の埼玉福興株式会社(代表 新井利昌氏/熊谷市キーマン)。社会復帰を目指す障害者の方と農業生産やオリーブ畑の栽培事業を手がけています。農地の開墾から土地管理を担当いたします。農福連携事業と私たち民間企業活動のコラボ、それはまさにSOCIAL&PUBLIC!そして、メイン講師には、同じく富士見市キーマン、自然栽培の師として名高く、全国に多くのファンを持つ大人気講師の関野幸生氏をお迎えいたします。食のプロ、農福連携のプロ、自然栽培のプロが集う、全国的に見ても初めての自然栽培学校です。

本コースは1年を通じ、道具の選定方法からはじまり、種取りも実施。土に触れ、自然と対峙する時間を持つことで、まさにロングライフデザインのど真ん中を実践します。(現在全20講座中8講座が終了しています。2022年8月14日現在)

2022年冬。荒れ果てた耕作放棄地の整備からスタート。

埼玉福興の先鋭部隊が素晴らしい土地に開墾してくれました!

開講前には参加希望者への入塾説明会を行いました。これから1年間どんな場所で、誰と一緒に自然栽培を学んでいくのか、そして関野氏から自然栽培とは何か、についてのお話を聞きました。今回は収穫した野菜から種を採り、その種で次の苗を育てるという半永続的な講座となります。年間通じて参加の方だけでなく、単発で気になる講座のみ参加することもできる非常にオープンな講座になっています。この会を通じて、新しい出会いもたくさん生まれているようです。

参加者の多くは熊谷市外から、一番遠い方では県外からの参加があります。スタッフを含め全員がほぼ初心者!どんな1年になるか?とても楽しみにスタートいたしました。

関野氏から学ぶ自然栽培と自家採取は、単に美味しい野菜を作ることだけが目的ではありません。現在の国内の農業産業や、市場に出回る野菜についての実情を改めて学び直すことができます。実際に自分達が野菜作りに携わることで、野菜が育つためには何が必要なのか?自然と対峙し次は何が起こるのか?そしてそこから何を学ぶのか?自然環境に適応し成長する(適応できず枯れてしまうものや、病気になってしまうものもありますが)野菜たちを通じて、私たちも全身を使い、五感を通じての初体験の学びの連続です。
固定種野菜の自家採取とは、その土地で勝ち残った、いわばその土地に適用した強い遺伝子を持つ種だけを次世代に繋ぐという一大事を行っているのです。自家採取がもっと日本で行われないのか?とても不思議でなりません。これこそ本当の意味での地産地消です。この講座を通じ、今まで、スーパーに季節問わず陳列された、色とりどりで綺麗な形の野菜たちに違和感を感じなくなっていた自分の感覚が、ガタガタと崩れ落ちていくのが分かります。普段スーパーなどで見られる野菜の多くはF1種野菜のため(その特質な性質上)種取りをして、それを育てても同じ形の野菜が収穫できないそうです。そのため、収穫後は種屋さんで新たな種を購入し、野菜を栽培する仕組みとなっています。同じ形の野菜をたくさん生産できるということは、その後の加工工程の効率化にも影響します。確かにF1種野菜は生育スピードも早いため、収穫量も多く、効率の良い生産方法と言えるかもしれません。
しかし、F1種の種は、自然の仕組みを強制的に変性させている点において、それを最終的に食べる人間の私たちに何らかの影響があるのではないか?と疑問を持たずにはいられません。野菜にとっても人間にとっても「健全」 であるべき道をつなげていきたいと強く感じました。
さらに、関野氏のまるでご自身の子供を愛でるような野菜への接し方や考え方、自然観察の仕方の素晴らしさ、忍耐の強さなど、講座の至る所で学び取ることができます。私自身も普段、身の回りで起きている事柄のいかに小さいことか、などと、吹っ切れることが多くあり、畑作業の後には、不思議と気分が爽快になります。
関野塾で学べることは、野菜の育て方だけではない、ということです。

今回は、初回ということもあり、関野氏が育てくださった苗を植えましたが、来年からは自家採取した種を植えますので、本当の意味での、SOCIAL&PUBLIC産のお野菜の誕生となります。

以下、過去の講座内容をご報告いたします。

●2022年4月19日<第1回目>
天気:晴れ(前日まで大雨のため畑に入れず)
・農作業で使用する道具の説明を行いました。農作業の道具には、個性的な名前がついているという面白い発見がありました。(例えば、マルチに穴を開ける道具は、“ポンポンカッター”と呼びます。)

●2022年4月26日<予備日>
天気:曇り
・畑畝り直し→マルチ貼り(機械にて)
スケジュールの関係上、初回の講座が座学になってしまったため、マルチ貼りは、機械にて行いました。

●2022年5月3日<第2回目>
天気:晴れ
・マルチ穴あけの仕方や、防虫ネット(ダンポール設置)方法の実践、カッターの使い方、トンネル支柱の建て方
<植えた苗>
・真黒ナス
・アロイトマト
・ビックネネ
・里芋
・手島じゃがいも
総勢30名の大所帯で畑を整備していきました。全員が初めての作業でしたが、それぞれが協力をして、関野氏の指導のもと一つ一つを進めていきました。

●2022年5月17日<第3回目>
天気:曇り
・トマト支柱立て、胡瓜のネット貼り、畝建て
<植えた苗・種>
・相模半白胡瓜の苗
・ズッキーニの苗(バンビーノ)
・オクラの種まき
・ケール、ビーツ種まき
・さつま芋苗植え
夏の収穫に向けて、夏野菜の苗を植えます。関野氏から巣立った苗たちはこれから熊谷の土地で育っていきます。無事に育ってくれることを祈って。

●2022年6月7日<第4回目>
天気:雨のち曇り
・トマト、ナス、胡瓜の誘因、トマト、ズッキーニの一番花摘みの仕方、トマトの脇芽つみ、摘芯つみ、マルチ手張り、じゃがいも土よせ
<植えた苗>
・黒皮スイカ
・マクワウリ
だいぶ成長してきた苗を選別し、支柱へ誘因したり、果実がしっかりと育つように、トマトの脇芽を摘みます。

●2022年6月21日<第5回目>
天気:晴れ
・きゅうり母本選別&受粉の仕方を確認、支柱への誘引、トマト支柱への誘引、ズッキーニ母本選別、収穫
<植えた苗・種>
・固定種カボチャ
・空芯菜の苗
・モロヘイヤ

●2022年7月5日<第6回目>
・きゅうり、ナスの収穫、トマトの誘引、摘芯、ナス母本選別、ズッキーニ収穫、バジル収穫、ビーツ選別、除草作業、防草シート貼り、防虫ネット畳み方

●2022年7月19日<第7回目>
・すいか・トマトの鳥避けの糸張り、トマトの種取り、大豆の種まきと防虫ネット張り、きゅうり・ナス・トマト・じゃがいも・バジル・空芯菜・モロヘイヤ収穫

●2022年8月2日<第8回目>
・各野菜の収穫(トマト・半白きゅうり・真黒ナス・バジル・モロヘイヤ・空芯菜・ビーツ・オクラ・万願寺唐辛子)、トマトの整理、にんじん種まき、ズッキーニとアロイトマト/ビックネネの種取り
この日は熊谷の最高気温が更新されそうな勢いの暑さでした。畑の脇には木陰で、休憩をこまめに入れながらの作業でした。みなさん汗だくでしたが、畑で採れたきゅうりや茄子、トマトを食べて水分補給です。

関野氏の土地から熊谷へ巣立った苗たちは、予想を遥か超えた成長をし、大大豊作となりました。
まだまだ夏の暑さが厳しい熊谷ですが、次は秋に向けた準備のスタートです。

一人一人の食べる意識が変われば、作る側の意識も変わります。
そして、今度は作る側の立場に立ち、何ができるのかを常に考えながら、未来に向け、全体にとっての「健全」さが保たれるよう活動を行なっていきます。

そして、この畑がいつもきちんと整備されているのは、埼玉福興のスタッフの方々が毎日毎日畑と対話をしながら様子を見てくれているおかげです。
自然に対してだけでなく、このような活動を共にしてくださっている関係者の方やご参加の方たちへ感謝の気持ちを持ちながら、この野菜たちの子孫がまた来年もこの土地で実りがあるよう、引き続きしっかりと自然と対話しながら学び、仲間をもっと増やしていきたいです。