神奈川定食取材記① ~小田原編~

2022年12月にスタートした神奈川取材は、全3回という今までにない取材回数。様々な文化が入り交じり都市化が進行しつつある神奈川で、郷土料理を探すことは難航しました。取材を通して様々な地域を巡りながら、その土地ごとの食文化と歴史を学び、深掘りしてきたことを、「神奈川定食ができるまで」としてご紹介します。

1日目:小田原

最初の目的地は、東海道の宿場町や城下町の賑わいが残る小田原市へ。最初に伺ったのは「薗部産業」。d47食堂でも大変活躍している「桜ボウル」の生産者です。

約1200年前から木工の歴史が続く小田原。薗部産業では、丸太を切り出すところから製品にするまでを一貫生産で行っています。

職人がまず最初にするのは自分の道具(刀)を作ること。自分のものは自分で直していくことを基本とし、それぞれが手の形にあった道具を増やしていきます。

この日は木地挽きの現場を見学させていただきましたが、木材を自らの刀と手の感覚を頼りに削っていく姿は、見ているこちらが息を飲むほどでした。

触った感覚や木の種類によっても重みが違う器たち。神奈川定食のけんちん汁で使っている器も様々で、ひっくり返すと木の種類が書かれています。食べ終わった後に、ぜひ覗いてみてください!

薗部産業
神奈川県小田原市桑原867-8
薗部産業 HP

 

そして次に向かったのは「鈴廣かまぼこ」。小田原周辺では、多くの蒲鉾屋が今でも軒を連ね、神奈川では家庭ごとに好みの蒲鉾屋さんがあります。鈴廣かまぼこは創業150年を越える老舗の蒲鉾屋。

蒲鉾の歴史を辿ると、かつては相模湾で豊富に獲れた魚をすり身にし、箱根の山から流れる良質な水と一緒に蒸し上げて保存できるようにしたことから、宿場町に来る旅人や参勤交代の大名たちに広まったと言われています。


写真提供:鈴廣かまぼこ

今でも素材のおいしさを追求し、時には魚を求めて漁に出ることもあるといいます。無添加にこだわる鈴廣かまぼこの蒲鉾は、プリッとした弾力と魚の旨味が詰まっていて、食卓に並ぶとつい嬉しくなります。職人さんの手作業で綺麗に整えられた蒲鉾は美しく、その作業風景を間近で眺められる「かまぼこ博物館」はお勧めですよ。

鈴廣かまぼこ博物館
神奈川県小田原市風祭245
鈴廣かまぼこの里 HP


「神奈川定食」ができるまで
D&DEPARTMENT PROJECTが、47都道府県それぞれにある、その土地に長く続く「個性」「らしさ」を、デザイン的観点から選びだして紹介するデザイントラベルガイド『d design travel』。32県目の目的地は「神奈川県」。d47食堂では、『d design travel』の発行毎にテーマとなる県の定食を提供しています。「神奈川定食」を完成させるため、現地を訪ねたd47食堂スタッフによるレポートをお届けします。(全3回予定)