Long Life Plastic Project プラスチックマグカップ

大阪
Since 2021
Long Life Plastic Projectプラスチックマグカップ
Long Life Plastic Projectは、経年変化と、みんなでプラスチックを一生ものとして使うプロジェクト。D&DEPARTMENTとプラスチックメーカー サナダ精工が立ち上げました。目的は、プラスチックについて各自が考え、価値を再定義していくこと。プロジェクトの象徴となるアートピースとして、「プラスチックマグカップ」をサナダ精工とオーケー化成、テクノグローバルが開発しました。2022年12月に発売するプラマグは、プラスチックのリサイクルとバイオマス化を推進する三井化学も参画。マグカップには、Long Life Plastic Projectのメッセージと一緒に、三井化学のバイオマス化の取り組み「BePLAYER」のロゴも入っています。

誕生
プラスチック愛から生まれた
「経年変化を楽しむ」という新たな発想

Long Life Plastic Projectは、ナガオカケンメイの“プラスチック愛”から始まりました。“プラスチック製品は使い捨て”というイメージが定着していますが、ナガオカさんはD&DEPARTMENTを立ち上げる前から、外に置き去りにされて日焼けして変色していたり、傷が付いていたりする、経年変化した古いプラスチック製品に愛着を感じていたそうです。趣味でプラスチック製品を集めるようになり、それらを展示・販売したのが、2020年1月10日から2月16日まで金沢市で開催された展覧会「nagaoka kenmei plastics」です。

木材や陶器、ガラス、鉄などと同様に、プラスチックにも経年変化がある。そんなメッセージを込めた展覧会「nagaoka kenmei plastics」には、プラスチック業界の関係者も数多く訪れました。特に注目を集めたのが、色褪せた植木鉢。アートピースとして、1万1000円で販売しました。その現物を会場で見たプラスチックメーカー、サナダ精工の社長、眞田和義さんは「衝撃的でした。プラスチック製品をつくっている自分たちの考え方が凝り固まっていたことに、気づくきっかけにもなりました」。そこからナガオカと眞田さんの交流が始まり、Long Life Plastic Projectの立ち上げに向けて動き出しました。

デザイン・販売
アートピースだけど実用的
なプラマグは参加型プロジェクトの象徴

Long Life Plastic Projectは、プラスチックの価値を再定義することが目的です。プラスチックの経年変化を楽しみながら一生ものとして使う。参加型のプロジェクトで、その象徴として、2021年12月にプラスチック製のオリジナルマグカップ「Long Life Plastic Project 2021 プラスチックマグカップ(以下、プラマグ)」を開発しました。プラマグの表面には、「Plastic Products can be lifelong companions if you care for them.(プラスチック製品であっても、一生モノになり得ます。あなたが大切にすればね)」というメッセージが刻印されています。
マグカップといえば、誰もがこの形を思い出す、そんな普遍的なデザインですが、サイズは少し大きめで、ギリギリまで注ぐと500ml入ります。「一般的なマグカップのサイズにしたら、単なる普通の商品になってしまうから」とナガオカさん。Long Life Plastic Project の象徴=アートピースであることが際立つように、あえて小ロットで生産しました。4色展開で各200個、合計800個、価格は4950円(税込み、以下同)。D&DEPARTMENT各店で限定販売し、完売しました。「価格はナガオカさんが決めたのですが、ひらめきだったはず。ただ、偶然にも絶妙な価格設定で、各社採算は採れています」と眞田さん。ただ、高価格なので通常よりも検品を厳しくしすぎて、B品が大量に出てしまったそうです。それでも採算は採れていたのですが、ナガオカさんが「それも売ろう」と。B品も同価格で販売することになりました。

産業
ビジネスの多様化にも対応する
プラスチックの少量生産

プラマグの製造は、サナダ精工とオーケー化成、テクノグローバルの3社が担当しています。サナダ精工は、主に100円ショップで取り扱う生活雑貨の企画・販売を手がけています。オーケー化成は、プラスチック製品に彩りを加える“色”専業のメーカー。プラスチックに色をつけるメーカーは国内に約50社しかないそうです。テクノグローバルは、2006年創業のプラスチック製品の金型メーカーで、製品設計から金型製造、成形、組み立て、納品までトータルで手がける仕事も増えています。
プラスチックといえば大量生産のイメージが強いですが、そうとは限らないようです。オーケー化成副社長の亀井昭夫さんは「企業のビジネスの形態も多様化しており、スモールビジネスを展開する会社から小ロットでの受注も増えています。そうしたニーズに対応できるように、少し前に少量生産が可能な設備に入れ替えました」と話す。テクノグローバル副社長の池谷健さんは「プラマグは、テスト販売用の比較的安価な金型で製造しました。20個ほどの小ロットでの対応も可能です」。プラスチックの使い捨てのイメージを払しょくするための動きもあります。

オーケー化成では以前から、ジーンズのように経年変化する色の開発も行っており、プラマグではネイビーに採用しました。


2021カラーのネイビー


加工を施したネイビー

仲間
メッセージに共感した仲間とともに
プラマグを惜しみなく応援できる場所

D&DEPARTMENTでは、つくる人と伝える人、使う人たちが楽しく交流する場として「LINEのオープンチャット」を活用しています。Long Life Plastic Projectも、購入者だけが参加できるオープンチャット「プラマグの会」を開設し、現在168名が参加しています(2022年11月30日時点)。ナガオカさんをはじめ、参加者が日頃、どんな風にプラマグをつかっているか写真入りで投稿したり、「電子レンジで使える?」といった質問にプラスチックメーカーの眞田さんがコメントしたり、ナガオカさんが新商品のアイデアを披露して意見を募ったり、プラマグでつながった仲間たちが交流しています。「自分たちがつくったプラスチック製品をつかってくれている写真や、プラスチック製品について考えてくれている様子が垣間見られるのは素直にうれしい」(眞田さん)
鹿児島在住の河野秀樹さんも「プラマグの会」のメンバーのひとり。河野さんは、ムシ歯にならないための「予防歯科」に取り組む歯科医です。プラマグとの出会いは、D&DEPARTMENT鹿児島店。フォルムに惹かれて手に取ったものの、4950円という価格を聞いて驚き、その日は買わずに帰りました。しかし、商品の説明入りのチラシを家で見直したところ「Plastic Products can be lifelong companions if you care for them.(プラスチック製品であっても、一生モノになり得ます。あなたが大切にすればね)」というメッセージを読んで、一瞬でファンになったと言います。「歯も大切にすれば一生モノになり得る。そう思って仕事をしてきたので、プラマグのメッセージにとても親近感がわきました」。河野さんは、2023年2月に歯科予防を実践するカフェ『おやつ堂』をオープンする計画で、什器としてプラマグを100個購入したそうです。

環境
プラスチックにまつわる環境問題
取り組みの一歩は“知ること”から

軽くて丈夫なプラスチックは、あらゆる産業に関わり、私たちの生活に溶け込んでいます。脱プラスチックの流れが加速していますが、完全になくすことはできません。では、どうすべきか。総合化学メーカーの三井化学では“素材の素材”まで考え、“脱プラ”ではなく“改プラ”を進めています。三井化学では、これまで実現が難しいと言われていたプラスチック素材「ポリプロピレン」のバイオマス化に成功しました。2023年のプラマグはマスバランス方式によるバイオマスプラスチック(=バイオマスのポリプロピレン)を100%使用してつくりました。
プラスチックの“バイオマス化”とは、プラスチックを“植物由来の資源”でつくること。「バイオマス化は、カーボンニュートラル“の達成のためには重要なアプローチ」と話すのは、三井化学ESG推進室 カーボンニュートラル戦略グループの松永有理さん。” カーボンニュートラル”は、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの”排出量”から、植林や森林管理などによる”吸収量”を差し引いて、実質的ゼロにすること。現在は石油など化石資源由来の温室効果ガスの排出量が圧倒的に多いため、社会のバイオマス化が必要なのです。ただ、従来の石油由来のプラスチックと植物由来のプラスチックは、「見た目では違いがわかりません」(松永さん)。社会のバイオマス化を推進するためにも、丁寧に説明する必要があるのです。Long Life Plastic Project2023は、社会のバイオマス化を推進する三井化学のブランド「Be PLAYER」と連携。2023年のプラマグには「Be PLAYER」のロゴが入ってます。