行ってきました 江戸時代からつづく 藍染め武州中島紺屋

D&DEPARTMENTでは、4年ぶりにd&RE WEAR 2024 AIZOMEを開催しました。年に2回開催している、機械染めでのd&RE WEARではなく、植物染料の「藍」を使用し、職人が1枚1枚染め上げるものです。「そもそも藍染とは何か」を知り、そこに何があるのか、自分で感じたものを伝えるために、「武州中島紺屋(ぶしゅうなかじまこんや)」に向かいました。

埼玉県の北部に位置する羽生市(はにゅうし)で、1837年に創業した武州中島紺屋。江戸時代からつづく「武州正藍染め」という天然素材のみを使用した染色技法を継承しています。元々は、近くに利根川が流れる土壌が藍の栽培に適していたため、藍染めの産地となりました。しかし、羽生市内で昭和初期には100件以上あった紺屋と呼ばれる染色屋も、足袋の衰退や化学染料の発展により、近年稼働しているのは数軒。衰退していく中、4代目にあたる中島安夫氏は、カリフォルニア美術工芸大学で客員教授を勤め、海外で藍染めの魅力を広めたことで「埼玉県指定無形文化財技術者」としても認定され、まさに藍染の先駆者でした。そんな安夫氏の講義を受けた新島大吾氏は藍染めに魅了され、安夫氏に弟子入りし、現在5代目を務めています。


「藍染」とひとくちにいっても、錆浅葱(さびあさぎ)と呼ばれる淡い色から、褐色(かちいろ)と呼ばれる漆黒のような藍色まで色は無限大。合成染料では出せない色の奥行き。色のなかに、どこか大地を感じるような土っぽさがあり、そのうつくしさには本当に驚きました。

その「藍」をつくるには、原料となる植物、蓼藍(たであい)を畑で育てるところから。葉を堆肥状にした藍玉(あいだま)に発酵菌を入れます。これをぬるま湯で、こねてだまをつぶし、石灰や糖を入れて発酵させていきます。藍染の職人の腕が光るのは、この発酵具合と理想の色の出し方。見えない菌を相手に、理想の藍色をつくるために、感覚をフル稼働させるそうです。音、温度、さらには味で判断していくこともあるのだとか。

藍染体験の工程

▲藍染の原料(すくも、石灰、フスマ、日本酒など)で発酵させていく


▲絞ることで模様をつける。


▲藍につけていく。掘りの深さは1.5mほど。


▲藍につけたあとしっかりと空気に触れさせる。染めたばかりの時は、生わかめをゆでた時のような、あおあおとした緑だったが、酸化させていくほど藍色になっていく。

▲染色後、きんきんに冷えた水ですすぐ。このとき、よりくっきりと色が浮かび上がるのがとても印象的で、この瞬間の藍染のうつくしさに、目が離せなくなった。

▲絞り染(左)、グラデーション(右)など、染めに表情を出すこともできる。

藍染という言葉だけでは見えてこない魅力が現地にはたくさんあります。藍染工場に漂う発酵の匂い、水の冷たさ、職人の人柄、羽生市の環境、藍の色で染まっていくうつくしさ…。あの色をつくるために、蓼藍を育て、時間をかけて発酵させ、1枚1枚染めあげています。d&RE WEAR AIOZOMEや、染色に興味を持っていただけたなら、ぜひ現地にいってみてほしいです。江戸時代からつづく技法を継承し、今も残っている武州中島紺屋には、目で見て体で感じるものがたくさんあります。それこそが、「もののまわり」を本当に知ることができる瞬間です。そしてぜひいく時は、d design travel 埼玉を見ながら「埼玉らしさ」に触れ、ひとりひとりの埼玉も感じてみてほしいです。