BALMUDA The Lantern

BALMUDA The Lantern(バルミューダ ザ・ランタン)は、バルミューダが開発・販売しているLEDのランタンです。つまみを回すとスイッチが入り、暖色の灯りから温白色まで、用途に合わせて調光できます。シンプルな構造ですが、実は高機能。暖色の灯りはキャンドルのように揺らぐように設計されており、今までにない“灯りの体験”を提供しています。充電式のバッテリー内蔵なので、部屋のどこにでも置くことができ、持ち歩いて使うことも可能です。

誕生
なぜこのラウンジは、こんなに居心地がいいんだろう。その理由は、ほのかな灯りだった――。BALMUDA The Lanternの誕生は、バルミューダの代表取締役社長の寺尾玄さんのそんな実体験から始まりました。スキーを楽しんだ後の滞在先のラウンジで、灯りの質の高さに気付いたそうです。その空間には、大きな照明はありませんでした。少し暗めな灯りがいくつも点在することで、本が読める程度の明るさでありつつ、ゆったりと過ごせるくらいの暗さだったそうです。暖炉の炎からはパチパチ音を立て、キャンドルの火が静かに揺らいでいる。そんな“灯りの体験”が、開発の背景にはありました。「その体験をバルミューダで提供するとしたら、どういった製品になるか。そんな寺尾の思いから製品開発はスタートしました」と話すのは、バルミューダのイノベーション本部 プロダクトデザインエキスパート髙野潤さん。
開発の初期段階で生まれたのが「テイスティ」というキーワードです。たとえば、ほのかな灯りがあることで、日常のさまざまな時間の過ごし方が、どんな風に味わい深いもの(テイスティ)になるか。そんな風にイメージをふくらませいったそうです。「テイスティという言葉からイメージするものが、各担当者によって少しずつ違います。解釈の幅が広いからことで、議論も活発になりました。寺尾をはじめ、開発に携わるメンバー同士でイメージを共有し、理解し合う時間も大事にしていました」(髙野さん)

デザイン
BALMUDA The Lanternは、つまみを回すとスイッチが入り、暖色の灯りから、柔らかくて温かみのある温白色に調光ができます。特徴は、暖色の灯りがキャンドルのように揺らぐように設計されていることです。「ランタン中央にある透明の筒の中に、白い管が入っています。これは、LEDの光を反射させたり拡散させたりするためのもので、透明層と白い部分の隙間の開け方や、白の濁り具合によって光の伝わり方が全く違ってきます。ほのかな揺らぎをつくるために、担当デザイナーがエンジニアと協力し何度も微調整を行いました」(髙野さん)
プロダクトの外観は当初、暖炉や古い街灯などをモチーフにした四角柱のデザインだったそうです。しかし、ご馳走を並べたテーブルとイメージが合わないと見直すことに。「テイスティな体験をもたらすことができるか。それを開発者自ら確認するために、デザインチームで実際にパーティーを開いて実体験しながら、みんなで検証しました」(髙野さん)。最終的には、昔ながらの丸みのあるランタンをベースにデザインしたものが採用となりました。
バルミューダ製品に共通しているのが、質感の高さ。BALMUDA The Lanternの場合、上部のフックなどの素材はステンレス鋼で、粒子を感じる粗めの塗装が施されています。「プロダクトの価値は、触ったときの質感や重さからも伝わるものなので、とても大事にしています。素材の検証をしているときも、爪でたたいて軽い音がしないかチェックしています」(髙野さん)

産業
バルミューダでは「自由な発想から思い描いた未来を、デザインとエンジニアリングの力で実現し、人々の役に立つ。」というミッションを掲げています。「私たちが開発しているのは、家電という“もの”ではなく、お客様の未来の生活や人生がよりよくなる新しい“体験価値”。そのための道具をつくり、電化しているという考えです」(髙野さん)。
バルミューダでは、製品開発のための市場調査は行っていません。家電業界の流行に関しては「参考にはしていますが、追いかけるという意識はありません。流行しているものがあれば、なぜ、それが注目を集めているのか。その本質について考えるようにしています」(髙野さん)
どのバルミューダ製品も現代の生活空間に溶け込むシンプルなデザインですが、存在感があります。その理由は、色や質感、形の美しさなど、ディテールまで徹底的にこだわったデザイン性と体験価値の提供のために開発した機能性、どちらも備わっているからです。
インハウスのデザイナーとエンジニアが同じ志で開発した製品は、家電業界でも大きなインパクトを与えています。その代表的な製品が、BALMUDA The Toasterです。スチームの力で焼き立てのパンの味を再現する機能が特徴で、スタンダードなタイプは定価2万7940円(税込)。トースターの中では高価格帯ですが、2015年の発売以来、国内外で160万台以上販売している大ヒット商品です。家電メーカー各社も追随し、機能性とデザイン性を高めたトースターが続々と誕生。日本の家電業界に多大な影響をもたらしています。

販売・仲間
BALMUDA The Lanternは充電式のバッテリー内蔵で、外に持ち出すことができます。生活防水レベルの防滴性能を備えているので、アウトドアやキャンプ用品店などからの引き合いも増えているそうです。室内で常夜灯としても使用でき、赤ちゃんのいる家庭で夜中にミルクをあげるときに使っているというユーザーの声も届いています。単なる照明とは違う情緒的なプロダクトで、使用シーンも限定しないためギフト需要も高いそうです。「贈り物として選んでいただけることで、バルミューダを知ってもらうきっかけにもなっています」(髙野さん)。
バルミューダの製品は、決して安価ではありません。それは、大手家電メーカーのような大規模な大量生産ではないことが、要因のひとつです。「新しい体験価値の提供を目指し開発しているため、まだ世の中にはない機能や部品が必要になることも少なくありません。既存の何かを流用することが難しいため、部品の金型からつくることもあります。そうすると、どうしても費用が積み上がるのです。製品によっては工場の方が驚くほど、部品点数が多いこともあります。とはいえ、お客様が購入しやすい価格であることも大切に思っていますので、体験の品質や価値を落とさず、適正なコストで提供するための模索はこれからも続けていきます」(髙野さん)
バルミューダを愛用するファンと交流するコミュニティのような仕組みは、現段階では構築されていませんが、顧客に向けた情報発信は積極的に行っています。「東京・青山にある旗艦店『BALMUDA The Store Aoyama』でイベントを開催したり、ニュースメール会員に情報発信したり。お客様とのコミュニケーションには力を入れています。2023年3月20日に創業20周年を迎え、それを機に公式noteも立ち上げました」(バルミューダPRチーム)。東京・青山の旗艦店は、商品の展示・販売だけでなく、キッチン家電の試飲や試食なども行っています。新製品の発表時には、シェフが製品をつかって料理をつくって振る舞い、機能を実体験できるイベントなども開催しているそうです。

環境
長く使いつづけたいと思ってもらえる製品を提供することは、環境への配慮の1つと言えます。そのためには、修理やメンテナンスのサポートを用意することも必要です。「サポート体制の強化は、今後の課題の1つです。これまでトースターを160万台以上販売していますが、それはつまり、それ以上のお客様が使っているということ。安心して使っていただくためにも、修理やメンテナンスなど必要があると考えています」(髙野さん)。
ロングライフデザインを目指すバルミューダの製品づくりの特徴の1つは、担当者が開発の最初から最後まで一貫して手がけていることです。新しい顧客体験をもたらす製品が生み出すために、愛着を持って粘り強く開発しています。「どういう思いでつくられているか、また、どういった新しい体験ができるのか。担当者が自分の言葉で熱く語ることができるので、社内でも製品への理解が深まります。セールス担当やコミュニケーションデザイナー、PR担当などに情報を共有するときも、内容がぶれることがなく、一丸となって世の中に伝えていこうという気運も生まれています」(髙野さん)。
バルミューダ製品をデザインするとき、髙野さんが心掛けていることは、美しさだと言います。「見た目の新しさだけを追求すると、完成した瞬間から少しずつ古くなってしまい、すぐに次の新しさが必要になるはずです。その一方で、美しさや愛情のような感覚的なものは、時間を超えてずっと残っていくものだと思っています。そんな美しいデザインを生み出すために大事にしているのは、日常の何気ない時間です。たとえば、家族とリラックスして過ごしているとき、ふとした風の気持ちよさや、きれいな夕日の色などに気づくことが多い。そんな心が動く瞬間を大事にすることが、自分の中の美しさをチューニングする時間にもなっています」(髙野さん)