種子鋏のもののまわり

鹿児島県の南に位置する種子島。黒潮に乗って運ばれた良質な砂鉄が多く採れ、1543年鉄砲伝来と同時に、唐の鍛冶職人によって鋏の技術がもたらされました。鉄砲が伝わるまでの日本の鋏は、糸切り鋏のような“U字型”のものしかなく、持ち手と刃の中間に支点が位置する“X字型”の鋏の起点は種子鋏(たねばさみ)がはじまりとされています。種子島の伝統的な鍛冶技術は、鉄砲や刀から鋏や庖丁へ、脈々と受け継がれてきました。

 

最盛期の1930年代、種子島には30軒近い製造所がありましたが、時代とともに槌音も消え、現在はわずか3軒のみ。一人で全工程を手掛け伝統的な”鍛治仕込み”を続ける「梅木本種子鋏製作所」、機械技術を取り入れ生産効率を革新した「池浪刃物製作所」。それぞれのスタイルで、共に種子鋏の技術と切れ味を後世に残していこうとしています。

 

今回は、「種子鋏」のほか、刀鍛冶技術から生まれた「種子庖丁」の家庭で使いやすい万能庖丁から鹿捌きなど専門的な刃物まで、幅広くご紹介いたします。種子鋏の文化や歴史を広く知ってもらうと共に、それぞれの使い心地を比較しながら、長く寄り添う日常の道具をお楽しみください。

種子鋏のもののまわり

日程
2024/4/25(木)~5/28(火)
時間
10:00~20:00
場所
D&DEPARTMENT KAGOSHIMA by MARUYA Map 鹿児島県鹿児島市呉服町6-5 マルヤガーデンズ4F

●お問い合わせ:099-248-7804(鹿児島店)

名入れオーダー承ります
梅木本種子鋏製作所の受注製作オーダー承り時のみ、名入れをお承りいたします。
漢字2文字、平仮名3文字まで。アルファベット不可。
6寸・7寸・8寸の鋏と、さくら柄の庖丁が対象。
製作に約2ヶ月ほどお時間をいただきます。名入れを施すことで、より愛着をもった道具に仕上がります。
種子鋏
種子鋏は刃と刃が常に一点で交わるように、弧を描くように曲げられています。この曲線による反りを「ねり」と呼びます。ティッシュペーパーのような薄手のものから厚手の布まで簡単に切れるほど切れ味もよく、軽い力で切ることができます。切るたびにジャキジャキと刃がこすれ合い、同時に研がれる仕組みで、切れ味が落ちにくい鋏です。
種子庖丁
“刀”をつくる鍛治技術から生まれた「種子庖丁」。その後、家庭金物として姿を変え、時代に合わせて使いやすい形を追求しながら伝承されてきました。特徴は、“切れ味”と“軽さ”。万能庖丁から鹿捌きなど専門的な刃物まで、日々の暮らしの中から今も発展を遂げています。
種子鋏のもののまわり

梅木本種子鋏製作所

梅木本種子鋏製作所の梅木昌二さんは県外の金属関係の会社に勤めたのち、種子島へ帰郷。鍛冶屋として37代続いた牧瀬義文さんの外弟子として技術を継承する。刀鍛冶からの伝統的な製作技術、つけ鋼製法(鍛接)で1本1本手造りの鋏を製作するのは、種子島では梅木昌二さんのみである。

種子鋏のもののまわり

池浪刃物製作所

先代まで旧式の鋏造りを継承してきたが、機械技術を取り入れ効率良く安定した生産に成功。何十年と背中を見て学ぶ経験と勘の技術伝承ではなく、数値化と機械化によって種子鋏の技術が後世に残るようにした。黒仕上げの種子鋏もここ、池浪刃物製作所が生み出したものである。