洸春陶苑のもののまわり

洸春陶苑に学ぶ、京都の焼き物文化

西陣織に京漆器、京料理など、日本を代表する伝統産業が息づく街・京都。中でも「京焼・清水焼」は、焼き締めの陶器から、色鮮やかな磁器のものまで手法が幅広く、窯元によって特色が異なります。そんな京都有数の陶磁器産地として知られる日吉地域で、創業80年になる「洸春陶苑」は、鮮やかな発色が印象的な「交趾(こうち)」技法を使い、茶道具から日常食器まで幅広く製作しています。その三代目の高島慎一さんが得意とする「いっちん」技法は、筒で粘土を絞り出しながら線を盛り上げて描き、線に沿って色釉を挿し、低温で焼成することによって交趾独特の色彩が生まれます。すべての工程を一貫して手掛け、手作業から生まれる繊細な絵付けや使い勝手の良さから、料理店や茶人、一般家庭に至るまで、暮らしのハレとケのシーンで多くの人々の暮らしを彩ってきました。

今回の展示では、「洸春陶苑」のまわりにある、京焼の産業としての歴史や技法などをギャラリー展示を通してご紹介すると共に、京都店の定番で販売しているお茶漬け椀やオリジナルマグカップに加え、この開催に合わせて誂えて頂いた器を販売します。

 

京焼には決まった土や技法の基準がありません。原料となる土が採りにくい京都は、都に集まるたくさんの貴族や茶人などの需要に応えるべく、各地の材料や技術を駆使して焼き物づくりを続け、手作業で行われる伝統的なものから、最新技術を取り入れた技法や染料など、時代にあわせて多様な広がりを見せてきました。そんな地域と共に柔軟に発達してきた個性溢れる京焼の魅力を、洸春窯の手仕事の美しさと共に感じていただければと思います。

 


つづく産業

京焼・清水焼の始まりは諸説あるが、平安時代以前とされており、江戸時代の始めごろから茶の湯文化の流行と共に、茶道具や器がつくられ、茶人や大名へ献上されることで発展を遂げた。京都では焼物に適した土をほとんど採ることができないため、例えば備前焼や有田焼のように、決まった土や技法がない。当時、都であった京都はさまざまな焼物に関する依頼があったため、京都の陶工達は各地の陶土を吟味・配合し、技術を取り入れ、新たな技法を生み出しながら器づくりをしてきた。現在でも求められた依頼に応えながら、新しい伝統を生み出す土壌が育まれているが、その一方で機械化が進み輸入品も増えてきたことで後継者不足や、作り手・窯元の全体の数も減ってきており、業界全体としての課題を抱えている。

3代目の高島慎一さんが得意とする「いっちん」は、手書き友禅の糊置きに由来するもので、粘土をペースト状に水で溶き袋から絞り出しながら、菓子づくりのアイシングのように描かれる。器に触れた時のぷっくりした立体感と、手の中に納まる丸みを帯びた感触を大切に、手仕事で出せる温かみが感じられるものづくりで、暮らしに彩りを添える器を作陶している。

 

つづく暮らし

高島慎一さんの作風を代表する文様として、七宝(しっぽう)が挙げられる。吉祥文様とされる、日本の伝統的な模様で、器に施すときは、印刷や型押しが一般的だが、慎一さんはあえて手描きをすることで手仕事の温かみを表現している。 洸春陶苑さんの器は、薄くて軽やか。繊細でいながら、盛り付けやすさ、運びやすさ、洗いやすさまで考慮されており、祭や行事、お祝いなどのハレの日や、日常の食卓まで、テーブルに彩りを添えてくれる。中京区にある料亭「完熟近江牛 鴨川たかし」では、洸春陶苑さんの器が使用されており、器と料理を通し、視覚的にも楽しませてくれる。

つづく地域

清水焼の郷として100年余の歴史を持つ、日吉地区

古くは、平安京造営の際に瓦が焼かれていたエリア。大正2年に、西仁太松(にしにたまつ)より初めて陶業の窯が開かれ、以降京焼・清水焼の主要産地として、食器、花器、茶器などを製造。伝統技法を守る窯元が点在している。

 

つづく仲間

昔から陶磁器の原料が採れにくい京都では、各地から入ってくる上質の材料をいかに加工するかが職人の技にかかっている。特に安土桃山時代以降、茶の湯の流行と共に、茶人や宮家、公家の要望に応え、茶道具や器をつくる「お誂え(おあつらえ)」の文化が生まれた。手びねり・轆轤・流し込みなどの成形技法と、染付・色絵・銹絵・交趾などの装飾技法を組み合わせた、それぞれの陶工ならではの表現方法がある。伝統を大切にしながらも、使い手と共に常に新しい焼物づくりを目指すものづくりへの姿勢が、宮中、寺院、公家など、格や位を表す道具として長く愛されてきた。現在でも「お誂え」の姿勢のもと、飲食店からの要望に応え、オーダーメイドでの制作も行なっている。

洸春陶苑のもののまわり

日程
2023/10/19(木)~11/27(月)
時間
11:00~18:00(水曜定休 )
場所
D&DEPARTMENT KYOTO Map D&DEPARTMENT KYOTO

●お問い合わせ:075-343-3217(京都店)

※最終日は17時までとなります。

洸春陶苑×D&DEPARTMENT KYOTO
\オリジナルマグも店頭に並びます/
d design travel誌の「CAFE」マークと同じ赤色とシルエットにこだわった、dオリジナルのマグです。?ひとつひとつ丁寧に作られた手仕事ならではの個性が光るマグカップは、「交趾(こうち)」焼ならではの、艶感のある朱色が特徴的。深みを出す為に2度塗りで仕上げています。dのロゴの中には、「いっちん」とよばれる絵付け技法で縁起のいい七宝柄がえがかれています。

洸春陶苑さんの技が詰まった京都店オリジナルのマグカップ、ぜひ店頭でご覧ください。
洸春陶苑のもののまわり

洸春陶苑

洸春陶苑は、1943年に京焼・清水焼の主要産地の一つである東山区日吉地区に開窯。白地に藍色の絵付けという伝統的な京焼から始まり、2代目は、茶の湯の世界で重宝されていた中国伝来の色鮮やかな彩色が特徴の交趾(こうち)を、日常の食器に取り入れた新しい作風を生み出した。そして現在は、3代目の高島 慎一さんが交趾の技術の一つである「いっちん」技法を用いて七宝柄を手描きする作風を生み出し、茶道具から日常の器まで幅広く制作している。