スタッフの商品日記 096 ユニバーサル多用深皿 14cm

「すくいやすく、みんなでいっしょに食卓で使う皿」というアイデアの元、生まれたユニバーサル多用深皿

誕生
多用深皿が発売されたのは2001年。「ユニバーサル多用深皿」という名前にしたのには、訳があったそう。今では多くのひとたちが、「ユニバーサル」ということばを、家族一緒にまた多くの人たちが分けへだてなく、やさしく使えると理解されている。けれど、当時は「ユニバーサル」という言葉が、使われだす以前。「バリアフリー」という言葉がよく使われ、陶磁器デザインに関しては試行錯誤の状況だった。そんな状況を見て、デザイナー森正洋さんはきちんと「ユニバーサル」を理解してもらえるものを作ろうと、φ16.cm、φ19cm、φ21cm の3サイズの皿をデザインし商品名も「ユニバーサル多用深皿」とした。φ14cmが増えたのは子供食器の需要に合わせたものだ。子供食器を提案された森正洋さんは子供サイズの発想はなかったよ。と喜んで追加図面を書かれたそう。子供用食器という事もあり、φ14cmのみ裏面がシリコン付きとなっている。
森正洋さんは「すくいやすく、みんなでいっしょに食卓で使う皿」というアイデアを展開し、当時デザイン顧問の契約をしていた山加商店(岐阜県土岐市のメーカー)に持ち込んだ。しかし、営業部門の反応は芳しくなく、なかなか生産にはいたらなかった。山加商店で作ろうとしたのにも、品質と価格が大きな要素と考え、みんなで使うというコンセプトにマッチさせるためだった。2001年の展覧会「粟辻博・森正洋・柳宗理三人展」(松屋銀座)を機会に、改めて提案し、山加商店で生産する約束を取り付けた。
決まってしまえば山加商店のデザイン室と現場のひとたちが生産・販売のために手順と手続きをとってくれ発売に漕ぎ着くことができた。

つづく仲間
今回、この記事を書くにあたり、森正洋さんのデザインを広げる活動をされていたデザインモリコネクション 小田寛孝さんが残された文章と山加商店 小木曽笑子さんに文章をいただいた。小田寛孝さんは、日本の陶磁器デザイナー森正洋さんを世界に広め、日本人に日本のものづくり、地域の個性を意識するきっかけとなる活動をされた。ユニバーサル多用深皿を製作する山加商店は、1913年に山加商店という名称で岐阜県土岐郡泉町で国内及び、中国向陶磁器卸及び貿易商を創始し、その後、洋陶メーカーとして北米向けディナーセットの専門メーカーへ。1982年頃、日本市場へと大きく転換すべく、商品開発に苦労している際に森正洋さんにデザイン監修を依頼し、その後、約20数年デザイン指導をお願いした。現在も岐阜県土岐市の陶磁器メーカーとして、自社製品の製造販売、国内海外陶磁器の仕入販売を行っている。


ユニバーサル多用深皿は、森正洋さんと山加商店が、力を合わせ誰でも分け隔てなく使える皿として協力した結果20年以上愛され続けている。

つづく技術
皿などを成形する際には、形を整えたり表面を滑らかにする時に「鏝(こて)」を使用する。ユニバーサル多用深皿は、通常の外ごての皿を作るより手間がかかる。外ごての皿は中の形が石膏型、名の通り外側の形は金属製の鏝(こて)が回転して出来る。一方ユニバーサル多様深皿はごての成型だ。鏝で皿の内側の側面をえぐるような動きで作る。このえぐりがすくい易さの源だ。この成型方法は鏝の角度調整がシビアで、職人は鏝合わせに神経をつかう。さらに鏝で作り切れ ない内側中心部分と皿のフチを手作業で仕上げる。
現在の製品は職人たちの工夫の積み重ねで、開発当初より森さんの図面に近いえぐりが実現している。

「みんなで使えること」の意味にはいろいろあり、価格の問題、収納のよさ、洗いやすさや、小さなひとからお父さんお母さんがそろっていっしょに使える。そのすべてを解決したこの「ユニバーサル多用深皿」は真のユニバーサルを実現した。ある売り場では「この皿のどこがユニバーサルなの?」と質問を受けたそう。そんな質問を受けるということは、これが本当の「ユニバーサル」の意味なのだと小田寛孝さんは喜ばれていた。

お気に入りのポイント
子どもが生まれる前に買い揃えたものの一つとして多用深皿がありました。生まれる前に買い揃える物としては、お皿は早いと思うのですが、このお皿を使う!と決めていました。子どもが、まだスプーンを使えない離乳食はじめから、4歳になる今も使い続けています。離乳食をはじめた頃、多用深皿の凹みは小さな口に合わせ量を調整するのに活躍しました。少しづつ子どもがスプーンを持てる様になった時、力加減ができずお皿が飛んでいきそうな勢いですくっていましたが、裏面のシリコンのおかげで、一度もお皿が宙を舞う事なく助かりました。4歳になる今は、スプーンを使っていない手はお皿に添えて、お皿が動かない様にできますが、大人でも最後のひとくちが難しいプリンやチャーハンなどを食べる際にはまだまだ大活躍。そして、子どもも自分のお皿という認識があり、おやつを食べる際にもこの食器を自ら出してくるほど愛着を持っているようです。

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