117:ダメージプラマグ

「プラスチックも一生物になり得る」を合言葉に、プラスチックメーカー数社と「ロングライフプラスチックプロジェクト」(LLPP)をやっています。そもそも僕が経年変化した、つまり、日焼けしたプラスチックが病的に好きで、ヤクルトやチチヤスヨーグルトをスーパーで買って飲んでは、きれいに洗って日なたで太陽にあて、育てたりしています。するとそこに時間の経過がまるであぶり出しのように変化していきます。

プラスチックはこの「変化」をずっと「絶対にダメなこと」とされて製品化されてきました。均一で大量に作れて、ずっと使える。けれど、大量に安くも作れるので「使い捨て」にもされる。ずっと使えて、私たちの生活に欠かせない物になっているのに、私たち人間のモラルの問題で、ゴミ箱じゃないところにも捨ててしまう。丈夫に残る物だから、土にも帰らず、海に流れてしまったら海の動物たちが間違って食べてしまったりして大変なことになる。そして、プラスチック=自然や生き物に良くない、と、なっていきました。それはそれで徹底的に人間に責任があるわけですから、なんとか解決しなくてはなりませんが、一方の「素材の魅力や面白み」については、全く誰も目利きしてこなかった。なので、その「一生物」という見方については、未開拓な訳で、今のところ「価値ゼロ」なわけです。

今回、2021年モデルのマグを発表、発売(ほぼ、完売)したわけですが、大阪のオーケー化成という会社の新商品( ここはプラスチックの材料、カラー表現会社 http://www.ok-kasei.co.jp/index.html ) が、この未開拓な「経年変化」をテーマとするものがあり、もちろん、これを加工会社であるサナダ精工さん( https://www.sanadaseiko.co.jp )、金型会社のテクノグローバルさん( http://techno-global.jp )と、作ることに。

「経年変化を楽しむプラスチック」ですから、よほど何十年、何百年も使わないといい感じになっていきません。この素材はダメージジーンズと同じく、表面が擦れていくことで表情が出てくるもの。とはいえ、ダメージジーンズのようにケミカルウォッシュや、ヤスリでこすったり、サンドブラスト(砂状の金属をエアーガンで当てて、劣化させる技法)をするわけには・・・・・と、言いながら、サンドブラストしてみました。さてさて、これが結構よくできて、まるで表面は海に打ち上げられた時間と距離の経年劣化の景色で、中は新品。海辺でよく、プラスチック探しをする僕にとって、とてつもなくワクワクする仕上げとなりました。

一番書きたかったこと。それは、こうしたものの中に、まるで民藝のような「美」を見出そうとする時代が来るかもしれないという予感が、このプラマグから感じたわけです。もちろん、僕の企画なので、僕は感じるのですが、プラスチックメーカーのみなさんも「いいかも」と、思っているところです。なんか、未来の物に見えてきています。