愛媛定食ができるまで 食べた人を笑顔にする「じゃこ天」

愛媛を代表する郷土食として、広く知られている「じゃこ天」。実は愛媛に来ていちばんよく食べていました。様々な店舗を巡り、じゃこ天の食感や風味、美味しさを追求して4日。取材の最終日に辿り着いたのが「宇和島練り物工房 みよし」のじゃこ天でした。

工房に伺うと、ちょうど作業の真っ只中。12月末に伺いましたが、お年賀として使われることが多いため、この時期はどこの店も朝から忙しく作業に取り掛かるそうです。かきいれどきにも関わらず、優しく出迎えてくれたのは店主の三好良貴さん。

「揚げたてのじゃこ天をご用意したかったのですが、よかったらトースターで焼いたものを食べてくだい。」

お言葉に甘えて、じゃこ天を試食させていただきながらお話しをお伺いしました。ひと口食べて驚いたのは、プリっとした食感。そして、今まで食べたことのない優しい味でした。

「話すよりもまずひと口味わえば、うちの良さは分かっていただけると思います。」

私たちは手が止まらず、あっという間に完食してしまいました。

三好さんは、練り物職人として20年ほど大手の練り物製造会社で腕を磨くなかで、ある疑問を抱く様になったそうです。

「子どもたちに、自分の作るじゃこ天を自信を持って食べさせられるか。」

じゃこ天は健康食品としても広く認識されていますが、その一方で、多くの製品には保存料や食品添加物が使われています。そこで、退職してじゃこ天職人として独立し、宇和島の自宅の一角に工房を立ち上げました。近所のお客さんもじゃこ天を買いに来ていたり、町で親しまれている味です。

こだわりはもちろん、完全無添加でのじゃこ天作り。原材料は、ホタルジャコ(地元宇和島では「ハランボ」と呼ばれています)など、朝漁れた新鮮な魚、馬鈴薯でんぷん、天日塩、米麹甘酒、低温圧搾菜種油のみ。

魚は、市場から厳選した鮮度抜群のものを仕入れ、頭、鱗、内蔵を一匹一匹丁寧に捌き、全て生魚だけで製造しています。甘みも、一般的には砂糖やみりんを使うそうですが、三好さんは自家製の甘酒を使っています。

じゃこ天のルーツは、宇和島藩初代藩主の伊達秀宗が故郷の仙台から蒲鉾職人を連れてきて作らせたのがはじまりといわれています。その名前は、使われる小魚を「雑魚(ざこ、じゃこ」)、すり身を「天ぷら」と呼ぶことが合わさって「じゃこてん」と呼ばれるようになったとか、「ほたるじゃこ」に由来するなど、様々な言われがあります。

三好さんは、できたてのおいしいじゃこ天を多くの人に届けたいという思いから、全国に活動範囲を広げ、各地でじゃこ天の実演販売を行なっています。安心して食べてもらいたいという思いが伝わっていった結果、今では全国から宇和島の工房まで訪ねてくる方もいるそうです。

私も家で三好さんのじゃこ天を家で食べた際、普段は魚を嫌う祖母が「おいしい」と喜んで食べてくれたことがとても印象深く残っています。

本当においしいじゃこ天を知ってほしい。

じゃこ天に対する三好さんの熱意に触れ、私自身も愛媛定食に向けての士気が高まる取材になりました。

愛媛定食

※左下から、時計回りに

○日向飯めし
「無茶々園」の片山恵子さんに教えてもらった「日向飯」。ネギをニラにすると、また格別な美味しさ。

○こんにゃくのみがらし
「一柳こんにゃく」の「媛だるまこんにゃく」に、麦味噌とからしと酒と砂糖と米酢で和えた、みがらし。

○季節のみかん
明浜町の段々畑で収穫される「無茶々園」のみかん。農薬を抑えると、外見は悪くても、味は美味しい。

○じゃこ天
「宇和島練り物工房みよし」のじゃこ天。味違いで。朝取れの生魚を使うので、素材の美味しさを感じる。

○石鎚黒茶
酸化発酵と乳酸発酵を経て作られる、ほんのり酸味を持つ「さつき会」の独特な発酵茶。

○味噌汁
宇和島で無添加麦味噌をつくる「井伊商店」の麦味噌を使った味噌汁。「松山あげ」を浮かして。

新型コロナウィルス感染拡大防止に伴い、d47食堂は、5月6日(水)まで臨時休業させていただきます。今後の営業につきましても、決定し次第お知らせしてまいります。ご来店の前には、SNSにて最新の情報をご確認いただくようお願いいたします。

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