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d design travel誌の30県目となる「福島県」。料理で心に灯りをともす「やすらぎの宿 とまり木」を訪ねました。

福島定食ができるまで(6)やすらぎの宿 とまり木

0円(税込)

発売日時:2022年 05月 23日 00:00

福島県

さて、福島の中通りからスタートした我々だったが、今いるのは会津のまだまだ入り口。二日目の宿泊を兼ねてうかがうのは会津地域の中間あたりとも言える昭和村にある農家民宿「やすらぎの宿 とまり木」だ。会津若松を離れて山間に入っていくと、景色が少しづつ変わっていく。一際長いトンネルを抜けると、そこはまさに雪国だった。有名な小説の冒頭と同じく、地面は白く覆われ、周りの山々は緑から見事に雪化粧していた。いつも以上に運転は安全に、慎重に目的地へと向かった。

山間を抜けると、赤い屋根の民家がポツポツと増えはじめた。あたりは霧に包まれて視界も限られるが、外の空気は澄んでいて、吸い込むたび心地よい冷たさが体の中を巡る。

「待ってましたよ~」と出迎えて下さったのはここを一人で切り盛りする、皆川キヌイさん。

宿に入ると部屋の中は暖かく、なんだか親戚の家に帰ってきたような匂いがした。既に夕食の準備をはじめていた皆川さん。ここ「やすらぎの宿 とまり木」では、宿主の皆川さんから手ほどきを受け、一緒に食事を作ったり、準備や片付けを手伝ったりして、宿泊しながら農家の暮らしを体験できるのが特徴だ。

挨拶もそこそこに、荷物を置いてすぐに調理が始まった。一人一人に料理を振り分けられ、私はきのこ炒めの担当に。

用意されていたのは「さくらしめじ」や「一本しめじ」、「ホウキタケ」など、あまり聞き慣れないきのこたち。どれも大きく立派なきのこ、すべて皆川さん自ら山で採って来たという。

不器用な手つきでカットをする私に「愛情込めればなんでもおいしくなるんです!」と励ましの一言。皆川さんに見守られながらカットしていると隣からはいい匂いが。

こちらもまた見慣れない石油コンロの上では、ゼンマイが醤油の香ばしい香りと共に炒められている。

そして、皆川さんが次に取り出したのは紫色のかまぼこのようなもの。「これは、いももち。紫芋(紫じゃがいも)使ってんだあ。」

いももちは、じゃがいもと片栗粉に塩だけのシンプルな料理。フライパンに油を引いて両目をこんがり焼いていくとこちらもいい匂いが。お腹の減り具合も準備万端だ。

気づけば食卓には、「キクラゲのくるみ和え」や、「大根のビール漬け」、福島の郷土料理「ニシンの山椒漬け」や「凍み餅」などたくさんの小鉢がずらり。

こちらでは、凍み餅にじゅうねん(エゴマ)味噌をかけて出していただいた。これだけご馳走が並ぶと、どれから食べればいいか分からなくなる。なんと幸せな時間だろう。

お腹も半分くらい一杯になっていたところで、ご飯とざく汁を振る舞って下さった。

ご飯は勝ち栗を炊いたご飯。これまたご自身が山で拾った栗を砂糖やお酒で甘く煮て作るこの料理はお祝いの日などに食べるそうだ。そして、ざく汁は昔から福島で親しまれてきた味。「ざくざく」とも言われているが、その起源のひとつに、集会など、突然の来客で人が増えたときでも具材を「ざくざく」切って増やすことができたからとも言われている。福島には「ざくざく」と近い「こづゆ」があるが、こちらは会津藩の武家料理として親しまれてきた背景がある。内陸部にある会津藩では海産物を手に入れることは難しく、当時は北前船によって日本海側から運ばれて来ていた。その中の一つである「ホタテの貝柱」を使って出汁をとるのが「こづゆ」だ。当時としては高級品だが、明治時代にかけて料理が庶民にもご馳走として広まり、ハレの日、祝い事の日には定番の料理として親しまれるようになった。

ご飯もザク汁もおいしさにぺろりと完食。横から「おかわり要りますか?」と声をかけて下さった。おかずもまだ残っていたので半分くらいとお願いすると……「いっぺくわっしぇ~!」(いっぱい食べてください!)と山盛りのお茶碗が返ってきた。

これには自分も思わずにんまり。すでに満腹に近かったが、皆川さんの笑顔にもう少しだけ胃袋の限界を緩めた。「お客さんが、自分の作ったご飯を食べてくれるのが嬉しいんです。料理してるとそれだけでお腹いっぱい。」料理は食べる人だけでなく、作る人も暖かい気持ちにさせてくれるのだ。だからこそ、「いただきます」「ごちそうさま」を伝えなければならない。皆川さんの作る料理に、身も心も満腹になった。

皆川さんはこの民宿を70歳を越えてから始めたそうだ。「お米も味噌も、なんでも自分で作るんだあ。」と語る姿は、今の暮らしが本当に楽しくてしょうがないという思いで溢れていた。家の周りには田んぼに畑、近くの山で山菜を採ったり、わな猟で獲った猪なども自分で捌くという。ほとんどが自給自足の生活、だがその暮らしが皆川さんにとっては心地いいのだ。豊かさとは、目に見えるものだけでなく、日々の暮らしのそこかしこに溢れていることを皆川さんと一緒に過ごした時間のなかで気づく。福島で受け取った温かさを、今度は私たちがd47食堂で返していきたい。

農家民宿 やすらぎの宿 とまり木
昭和村大字大芦字大向4478 MAP
昭和村観光協会HP


「福島定食」ができるまで
D&DEPARTMENT PROJECTが、47都道府県それぞれにある、その土地に長く続く「個性」「らしさ」を、デザイン的観点から選びだして紹介するデザイントラベルガイド『d design travel』。30県目の節目となる、今回の目的地は「福島県」。d47食堂では、『d design travel』の発行毎にテーマとなる県の定食を提供しています。今回の旅は、「福島定食」を完成させるため、福島県でたくさんの場所や人を訪ねました。現地を訪ねたd47食堂スタッフによるレポートをお届けします。(全10回予定)


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福島定食 福島 民宿 とまり木 郷土料理

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