尾山製材が作る「みつろうクリーム」

富山店でセレクトしている、みつろうクリーム。
先日、作り手である尾山製材さんにお伺いしてきました。
富山市から東へ、電車で1時間程の朝日町に尾山製材さんはあります。

元々は障子戸などの建具を製作されている尾山製材さん。
こちらは障子戸などに使われる杉材を乾燥させているところです。
こうすることで、木のあくが抜け、色の変化を防げるそう。

大きな倉庫や、活気ある工場。
こちらの工場の2階の1角でみつろうクリームは作られていました。


これはみつろうクリームの原料となる、みつろう。
尾山製材さんの3種類のみつろうクリームの主成分は同じこちらのみつろうです。

こちらはみつろうを溶かした状態。
固形状のみつろうを60℃程度で溶かし、富山県産の菜種油や椿油などの油分を添加します。

この状態から半日もせずに固まり、缶につめたら完成です。
完成したみつろうクリームは、バターより少し柔らかい程度の固さで、伸びやすく、簡単に塗ることができました。

「みつろうクリームを作るまでは林業や製材までで、使い手に長く使ってもらう提案はできていませんでした。全国的に見ても、地域で木材の循環を考えて取り組んでいるところは少ないんです。自分達の地域では、林業に始まりメンテナンスまで木材の循環を考えてやっていきたいと思っています。」
と尾山さん。
なぜ材木業に取り組む尾山製材さんが、みつろうクリームを作っているのか、このお話をお伺いし腑に落ちました。

みつろうは、ミツバチが体内から分泌されたロウのこと。
撥水性に優れ、安全に使うことができるため、木工の現場ではメンテナンス用に使われてきました。オイル仕上げの木の質感を生かしたまま、艶をだし、汚れの付着を防いでくれます。
固形のみつろうをメンテナンスに使うプロの方も多い中、油を添加し柔軟性を持たせることで、一般家庭でも使えるように作ったのが、尾山製材さんのみつろうクリーム。

固形状のみつろうを手で10分程押しつぶしていると段々と柔らかくなってきましたが、
固い状態から使うには技術やコツが必要です。
「自然塗料との大きな違いは、実はないんです。ただ、自然塗料よりも使い勝手が良い。」

と尾山さんはいいます。
塗料と比べると、色ムラなど気にすることなく使えるので、専門知識がなくても誰でも簡単に使うことができます。
塗料を塗り直すとなると、臭いが気になり、換気が必要で冬場はなかなか手が出せません。
みつろうクリームはほぼ無臭なので、室内でも無理なく使えます。
直接手で触れても安全な成分なので、扱いやすいところもポイントです。

こちらはみつろうを塗る前の素地の状態と、みつろうクリームを塗った状態。
艶感が全く違います。

「木工用は従来のみつろうクリームに近く、長くみつろうと付き合っている方には安心感があります。革用は木工用に比べ、べたつきがないのが特徴。愛犬の肉球用はホホバ油など、スキンケアに使えるレベルの油分を使っています。」

「木工用」「革用」「愛犬の肉球用」と3種類ありますが、
みつろうに添加する油の配合や量の違いが質感の違いを生み出しているので、質感や香りなどお好みのみつろうクリームを見つけ、メンテナンスに使っても良いかもしれません。

3種の中で尾山さんのおすすめは、革用のみつろうクリーム。
油分は主に椿油で構成され、べたつき感がなく、快適に使えるところが気に入っているそう。

私は、木工用のみつろうクリームを愛用しています。
ヒバ油が唯一添加されていて、開けると木の香りが漂うのも木工用の特徴です。
こちらは我が家で20年以上使っているウレタン仕上げのテーブルの天板です。薄く2つの円形の線が入っています。これは熱いものを置いてしまい、跡になってしまった部分。

20年も経つとウレタンの塗膜層も薄くなるそうで、こういったところに使用しても効果があるのだとか。ウレタン仕上げのものは、一度傷つけてしまうとどうしようもないという印象で諦めていたのですが、完全に元通りにはならなくても、メンテナンスしながら長く使えるのは嬉しいです。

みつろうクリームは木製品以外にも、撥水性や艶が必要な様々な製品のメンテナンスに使うことができます。
是非自分にあったみつろうクリームを見つけてみてください。