TALK 1「“グッド”なデザインとは」開催レポート

d47 MUSEUM第23回企画展 LONG LIFE DESIGN 1」展関連トークイベントとして、「LONG LIFE DESIGN TALK 2019」を開催。
2019112日(土)のゲストには、公益財団法人日本デザイン振興会(グッドデザイン賞事業部)矢島進二さんをお招きし、本展ディレクターのナガオカケンメイとの対談を行いました。

現在、デザイン振興会が運営している「グッドデザイン賞(Gマーク)」では、1980年からロングライフデザイン賞の前身となるロングライフ特別賞が設けられ、それ以降毎年継続して実施し、2018年は19点の受賞作品が選ばれました。

私たちD&DEPARTMENTでも創業から約20年間「ロングライフデザイン」をテーマに活動を続けてきました。この両者の視点から「ロングライフデザイン」を通して、デザインの変化から、これからのデザインに必要なことについて考えました。

まずは、矢島さんより「ロングライフデザイン賞」についての説明を。
設立当初の対象は、グッドデザイン賞の受賞後15年以上経過しているプロダクト(物)に限られており、「つくり続けられていること」を賞賛するのが目的でした。

しかし、その後選定基準は変化し、過去にグッドデザイン賞を受賞していないものでも対象となり、製造(開始)から10年に短縮もされました。さらに一昨年からは有形無形は問わなくなり、銀座の歩行者天国が受賞。2008年からはユーザーによる推薦制度を導入するなど、私たち一般の生活者も参加できる工夫のあるデザイン賞となっています。設立には「息の長いデザインを讃えたい」という、当時のデザイン関係者の想いがありました。

高度経済成長を経て、その後バブル経済に突入してゆく時代では「どんどんつくって、どんどん使うこと=経済が回るために必要なこと」という考え方が主流でした。

大量生産・大量消費の時代真っ只中であっても、Gマークが「一つのものを長く使うことを良しとする」という、時代に逆行するような活動があったことを改めて知り、驚きました。

続いては、ナガオカが用意してきた10の質問を矢島さんへ。

 

「① 展覧会をご覧になった感想を率直にいただけますか?」 では、デザインの「健やかさ」とは?という話に。

矢島さんは公式書籍の書き出しにあるナガオカの「デザインがロングライフになってきました。」という言葉が心に響き、文中にも繰り返し使われている「健やか」という言葉に意外性を感じたそうです。

例えば、展覧会公式書籍に出て来る「デザインも健やかな時代に来ています。」という表現。

この言葉に対し、ナガオカは「今の世の中では心が病気になってしまう人が増えてきている。人々の心の健やかさを育む生活リズムはモノのつくり方や無理のない生産体制ともリンクしているの部分があるのではと考え、デザインにも“健やかさ”が求められていると考えました」と語りました。

 

終盤の「⑨ デザインはどう変わってきているのでしょうか?」という質問では、デザインにも地域特有の独自性が生かされているものに注目が集まっているという話題へ。

その流れから、矢島さん自身も日本中を周り、各地で「デザイン」の小さな勉強会を開催し、その土地に生きるデザインをつくり出す人々との直接の対話や交流を深めてみたい、と考えられていました。D&DEPARTMENTの各店舗での全国ツアーも計画しています!

このトークショーに参加し、改めて今の時代に求められているデザインとは「健やか」であること。これからd47 MUSEUMとしても、デザインと向き合ってゆくことが大切なのだということを改めて考えさせられる、貴重な一時間半となりました。

会の最後には参加者の皆様からの質問も多数寄せられました。

「つくり手」と「使い手」の関係性についてどうあることが最良なのかなど、デザイナー目線のご質問から、学生の方からは「グッドデザイン賞だけでなく、ロングライフデザイン賞を受賞した作品にもその事がわかるシールをつけるのは?」という話から、「ロングライフデザイン」が消費者に選ばれる価値基準となる時代が来るのではという話題にもなり、「グッド」だけではなく、「ロングライフ」なデザインも手に取るきっかけになるという、新しい視点に気づかされました。

トークショー後のアンケートでいただいたご感想には、
「デザインは世界を変えうると勇気をもらった」
「”デザイン”と”健やか”という言葉の親和性に気付かされた。」
「デザインがエッジの効いた尖ったものだけでなく、優しく、柔らかく続いてゆくものでもあるのだと気付かされた。」
「デザインは新しさや普遍性だけでなく時代に応じる「変化」も兼ね備えなければならないことを痛感した。」
など、デザインの在り方が変化するなかで、改めて社会にとってどのような役割を果たせるのか、私たちの暮らしとの関係などを考えるきっかけになりました。

この「LONG LIFE DESIGN TALK 2019」は、全2回のトーク。次回TALK2では、ゲストに京都の老舗茶筒店「開化堂」の6代目八木隆裕さんをお招きし、「”らしさ”の継承とは」というテーマでナガオカとのトークを開催。

伝統工芸などの技術や、メーカーの持つ「らしさ」をどう残し、進化させているのか。ナガオカも新たな質問を用意し、ながく続く為に必要なことを八木さんとのトークで紐解きます。お申し込みはWEB、電話(03-6427-2301)、d47店頭にて。皆様のご参加お待ちしております。

開催概要
「LONG LIFE DESIGN TALK 2019」
TALK 2「”らしさ”の継承とは」
2019127日(日)17:00-18:30(16:30開場)/会場:8/COURT(渋谷ヒカリエ8階)
詳細、お申し込みはこちらから