d SCHOOL「わかりやすいぬか漬け」開催レポート

5月14日・28日にd47食堂では、d SCHOOL「わかりやすいぬか漬け」が開催されました。(研修生である私は、D&DEPARTMENT TOKYO店スタッフではありますが、今回のイベントには参加者となり、見えたもの・感じたもの・dの様々な取り組みを通して伝えようとしているものをお伝えするイベントレポートです)みなさまに、よりさまざまな視点で見えるdをお伝えしていきます。

d47食堂のぬか漬け

d47食堂では、開店当時からつづいてきたぬか漬け。10年という長い時間の中で手間と愛情がかけられたそのぬか漬けには、ファンの方も多くいらっしゃいます。そんなd47食堂で、ぬか漬けの仕組み・始め方など基礎的なことを、実践を通して体験できるイベントが「わかりやすいぬか漬け」です。ぬか漬けの楽しさや、普段の生活に活かす工夫のヒントを学び、実際にぬか漬けを始めるきっかけができます。

素材の味を知り、見える世界が広がる

土曜日の朝9時。開店前の店内に、少し緊張した面持ちで私たち(参加者)はそれぞれ席に着きました。

「畑を始めたから、自分で育てた野菜でぬか漬けを食べてみたい」

「毎日の忙しい生活の中に、リズムを作りたい」

「祖母の代からつづくぬか漬けを引継ぎたい」

「ぬか漬け作りを始めてみたい」

色んな思いをもって、空の容器を取り出しました。

 

まず最初は、素材であるぬかを食べるところから始まります。生ぬかとd47食堂のぬか床のぬかの食べ比べです。見た目も味も全く違います。生ぬかは、きなこのようにさらさらしていて、口に含んだ瞬間、米のような甘みが広がります。一方のぬか床のぬかは、ピリリとした塩味、酸味、深みのある甘みがあり、複雑な味をしています。普段何気なく食べていたぬか漬けも、その素材そのものの味を口にし、自分の手で作り、できあがった味を知れば、見える世界が広がります。

 

例えば、ぬか床を作るとき、必要となるかつお節。おいしい鰹は、巻き網でなく一本釣りで採られた鰹だそうです。それは、採る時に一本釣りは、鰹の体内に乳酸が発生しにくいため、えぐみが少ないから。これを知った時、自然と目の前にあるかつお節の姿から、素材となる鰹が生きていた時の姿を想像していました。食材1つをとっても、漁や加工そして、流通までにも「人」が関わっています。当たり前すぎて、見えにくく、忘れがちなことですが、私たちは人と自然の中で存在しています。そんなことを思い出し、目の前のぬか漬けをきっかけに、想像できる範囲が広がっていきました。

手さぐりで”やってみる”、感じるぬくもり

素材の味を知った次は、いよいよぬか床作りです。生ぬかに塩水を入れて混ぜ始めると、たちまちぬかの香りが広がりました。混ぜているうちに、感触が変わってきます。

「すちゃっすちゃっ」

音も変わり始めました。五感をフルに活用させながら、ぬか床を観察します。混ぜ終わったら、かつお節や野菜くずを入れていきます。

▲ぬか床を作るときの材料(野菜のくず、いりこ、かつお節、生姜、唐辛子、昆布、食堂のぬか床のぬか)

▲ぬかに塩水を入れていきます

▲ぬかと塩水が混ざったら、野菜くずをいれていきます

▲容器にいれて、残りのいりこ・昆布・生姜・唐辛子・かつお節も入れて行きます

▲完成!

d47食堂のスタッフさんの見よう見まねでなんとかマイぬか漬けが完成しました。自分で作ったぬか漬けは、すでに愛おしい存在になっていました。何よりも、朝の緊張した面持ちから、表情が広がり、愛おしそうにぬか床を持ち帰る参加者のみなさんの表情は忘れられません。

正解がないことを楽しむ

2週目の28日までの期間で、宿題が出されました。毎日、ぬか床の表面と底をひっくり返す「天地返し」を行いながら、ぬか床を育てていき、前日にきゅうりを1本漬けてみるというもの。私は、朝ごはんを作る時にぬか床の天地返しをすることにしました。毎朝容器の蓋をあけては、見えないぬか床の菌を相手に「これでいいのかな?」と手触り、匂い、見た目の変化を探しながら、手探りで向き合います。何日か経つと、ぬか床は自然と私の生活の中になじんでいきました。ぬかを触るほんのわずかな時間が、忙しない生活の中で、一呼吸つけるような、そんな存在になっていきました。前日の夜、やっときゅうりを漬ける日です。育てたぬか床が、どんなぬか漬けの「味」となって現れるのか、わくわくしました。

 

そして28日。各自漬けてきたぬか漬けの試食会と2週間目のぬか床の状態チェックです。同じ日にぬか漬けを始め、同じ日にきゅうりを漬け、できあがった味を食べ比べてみました。2週間、手探りで毎日手をかけたゆか床。参加者のみなさんに食べてもらう時、少し恥ずかしいような、でも反応が気になるような...そんな緊張感を覚えました。いざ実食。「こんなにも違うものですね!!」と参加者のGさん。

人によって、ピリリとした酸味や、香ばしい香り、すっと抜けるような酸味、まるい甘みのように、1つとして同じ味がありません。1つ1つ違ったぬか漬けの味わいがあるのです。季節によって、漬ける野菜によって、漬ける人によって、さらには漬ける人が食べているものによって、味が変わるぬか漬け。今日のぬか漬け(あなた)はこんな味なのね、という具合にゆっくりとその日の状態を観察し、感じる豊かな時間が生まれました。

 

わかりやすいぬか漬けで感じた面白さ

このd SCHOOLを通して、

1.素材を知り、見える視点が広がる

2.ぬか漬けと向き合うことで、生活の中に、ゆっくりとした時間が生まれる

3.正解がないことを楽しむ

こんなことを感じました。ぬか漬けは1日1日の積み重ねが、ずっとつづくものです。つづくもののまわりには、どこか人や自然のぬくもりを、私は感じます。もし少しでも興味が湧いた方は、ぜひぬか漬けをはじめてみてはいかがでしょうか?きっと、食の奥深さに触れながら、生活の中に温かい時間が生まれます。