岩手定食ができるまで3〈久慈・二戸編〉

岩手県北三陸に位置する久慈市。

久慈は豊かな自然と特有な地形で海の幸、山の幸に恵まれ、食以外でも国内でも珍しい、琥珀が採掘される。

三陸鉄道の駅で手を振って出迎えてくれた、「久慈観光協議会」の町田さん、久慈さんと共に、小久慈焼きや野田のホタテ畜養施設、山葡萄のワインそして震災後2015年に営業が再開された「小袖海女センター」へ。目の前の海に潜り、ウニやアワビを取る海女さん達。訪問した日は、悪天候のため海に入る姿は、見られなかったが、久慈の郷土料理「いちご煮」を食べさせていただいた。

いちご煮とは、海で冷えきった身体を採れたての貝やウニを鍋で煮て、漁の合間に食べていたことから定着したと言われている。強い雨のせいもあったからか、ひとくち口にすると、全身が温まり磯の香りの後に紫蘇の風味が。旨過ぎる。余計な調味料など一切必要ないのだ。そして、そっと小さなウニご飯のおにぎり。最高である。

岩手の食材のバラエティー豊かさ、県北、県南はもちろんの事だが、同じ県にもかかわらず特色が全く異なる。

定食取材後半になるにつれ、その豊富さゆえの定食迷走は続く。

小袖海岸の夫婦岩に見送られ、私達は、岩手内陸部北端に向かう。

 

岩手県では、長年培われた郷土の味と技術と後世に伝承していく「食の匠」認定を積極的に行っている。

平成8年に認定された米田カヨさん。「米田工房そばえ庵」を切り盛りする傍ら、二戸の郷土料理を教え続けている。

 

私達が米田さんに教えていただくのは、「柳ばっと」と「へっちょこだんご」。県北で暮らす人達が、日常的に食す普段食だとカヨさんは言う。岩手を代表する「ひっつみ」は県内全体で食されるが、そば粉やキビ粉をよく使用するのが二戸の特徴。

「そば粉をお湯っこで練ると、柔らかくなるんだよ」とやかんから熱湯を粉の上にかけまとめていく。

私もやってはみるが、なかなかカヨさんのようには、いかない。しかも、熱湯を使っているから生地が非常に熱い。

そうこうしていると棒状にまとめあげ、小さく手でちぎっていく。「柳は強い、風が吹いても柔らかくしなり折れない。丈夫で長生きの意味が込められているの」皆でおしゃべりしながら、柳の葉に見立てて細長く形つくる。

お皿いっぱいの柳ばっとを、人参、ごぼう、鶏肉などと煮込んでいく。出汁には煮干しを。味噌を使う家庭もあるが、カヨさんはお醤油を使う。

煮えるのを待っている間に、へっちょこ団子を作る。たかきび粉を練り小豆と炊きお汁粉のようにして食べる。

大変だったことを方言で「へっちょ」と言う。一年の農作業の締めくくりの、庭終い時に食べる団子。苦労した事をねぎらう意味を込めてへっちょこ団子と呼ばれている。そうこうしているうちに湯気とともに、煮上がる柳ばっと。

椀に盛りつけいただく。素朴で優しい。蕎麦の香りと柔らかく、つるりとした食感。じんわりと美味しさが広がる。

最後にカヨさんが出してくれたのは、南部煎餅の元祖と言われている「てんぽ」。

これがまた、ほんのり甘く、もちもちしていて旨い。カヨさんが南部煎餅の型を使い毎日焼いているもの。

漆塗りの麺鉢を囲んで、顔を合わせながら作る料理。自然と会話も生まれ、暖かい時間が流れる。幼い頃、祖母と台所に立った事を思い出す。

岩手定食を作る為に、私達が一番大切にしたいものに出会ったのかもしれない。

居心地の良い、カヨさんのお宅。あっという間に時間が過ぎてしまう。

 

今日の最後の訪問先、滴生舎へと急いだ。

 

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開催日:2018年10月25日(木)
場 所:8/COURT、d47食堂(渋谷ヒカリエ8F)
参加費:6,000円(岩手号1冊付き、ドリンク・フード込み)
定 員:80名
<第一部>トラベルショー@8/COURT
19:00~20:00(開場 18:00~)
<休憩>ミュージアムツアー@d47 MUSEUM
20:00~20:30
<第二部>岩手を食べる会@d47食堂
20:30~22:00
問い合わせ先:d47 design travel store(TEL:03-6427-2301)
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