81:  d&ドライカレー

今、創業時からダイニングでお出ししているメニューのドライカレーをレトルトにして販売する準備をしています。味の開発はすでに終え、今はパッケージのデザインをしています。

1998年に当時、デザイン事務所として六本木で仕事をしていて、dを思いつき、物件を探し、現在の奥沢に開業。当時はデザインの仕事で収入を得ていましたが、これからどんどん「店」へ使う時間、パワーを切り替えていく。そんな時代に飲食業経験を持つ僕は「いつか、自分でカフェか何かをやるときは、絶対出したいメニュー」がありました。それが「ドライカレー」「オムライス」「シュークリーム」です。そして、これらの特に思い入れが強いものには「d&・・・・」という名前をつけて差別しています。このd&ドライカレーのルーツはまだ、サラリーマンデザイナーだった時代に通っていた「ハイチ四谷四丁目店」のドライカレーです。ほぼ、ドライカレー専門店と言っていい”ハイチ”のこのシンプルな味と、この一皿を軸に作られている世界観が大好きで、味を極める大切さよりも、オリジナルさを突き詰めることをここで学んだように思います。

普通、私たちが何かを始めようとすると、どこかの何かの影響にひきづられて似たような、どこかで見たようなものを作ってしまう。無意識に「全く新しいこと」とか「これまでなかったもの」とかコンセプトで言っていても、やはり、どこで見かけたものからの安心感で発想している。それをハイチにいると、カリブ諸島の物語を軸に、そこに素直に沿って新しく何かを作ってやろうとか考えていないような、独創感があり、こういうことを目指したいと思ってd&dを作っていきました。とはいえ、カレーはこれに大きく影響されていて、当時の思いを忘れないように真似たようなところが大きいです。

さて、このカレーには面白いエピソードがいくつかあります。当時、「飲食禁止」物件だった奥沢本店で、それでもなし崩しにカセットコンロ2台でカレーを作っていた頃、当時の料理担当と色々試作を作り、ついに隠し味に味噌を入れたり、卵を半熟でフライにするなどのアイディアで完成。それが評判となり、行列ができるほどにカフェは繁盛していくのですが、ある日、その料理担当の女性が辞めることになり「私の作ったドライカレーを持っていきたい」と言い出したのです。もちろん、お給料を長らく払いながら一緒に作っていったので、彼女だけのものとはなりませんが、そこまで思ってくれるところに大いに感動しました。

また、しばらくして長らく料理長をしていたシェフが、山形に引っ越してレストランを開く際に「d&ドライカレーをメニューとして出したい。そのかわり、一皿ずつ、ロイヤリティを払う」と申し出てくれました。もちろん、長く続いた関係があるので、そんなものはいらないのですが「d&ドライカレー」という名前で出し続けたいということだったので、面白半分でやってみることになりました。遠く離れた山形の地で、全く同じdの名物ドライカレーが出されている様子を想像しただけで、ちょっぴり泣けてきます。そして、一年が経ち、約束通りロイヤリティとしてお金をもらったのですが、その額が意外と多くて、なんとも嬉しい気持ちになりました。

他にもつまようじで作った旗を立てたり、など、いろんなエピソードを生んで今もいます。

さて、新しいデザイン事務所を東京都東神田に新設し、そこに「ギャラリー」と「ショップ」と「カフェ」を作ろうとなった時に「d&ドライカレーを主にしよう」と決め、ネオンサインまでカレー色で作ってしまいました。残念ながら、このデザイン事務所がやるd&dは当分、開業はしませんが、レトルトのd&ドライカレーはもうすぐ、創業記念日の11月3日に販売開始します!! どうぞ、お楽しみに。