『もうひとつのデザイン ナガオカケンメイの仕事』トークイベント レポート(後編)

2018年3月22日(木)に青山ブックセンターで開催された『もうひとつのデザイン ナガオカケンメイの仕事』刊行記念トークイベント。たくさんの方にお集まりいただきまして、最後には10本近くの質問が続き、質問コーナーだけで1時間に!トークの内容を一部抜粋して、章立てでレポートいたします。

『もうひとつのデザイン』トークイベント レポート(前編)はこちら
2018年7月16日(月・祝)大阪の梅田蔦屋書店にて開催のトークイベントの詳細はこちらから

 


 

 

【すでにある形を使う】
・産地の得意分野を知っておく
・スタイルより技術を見る
・ものづくり産地をデザインで救う
・産地間交流を生む

ナガオカ 「第7章 すでにある形を使う」ですが、もう、デザインを放棄してますよね(笑)。いい形があれば、使わせてもらえばいいじゃん!デザインしなくてもいいよ!未来の需要を見据えようということです。
こんなの美濃焼じゃないよって、スタイルの話を言う人がいますけど、そういうことではないんです。スタイルを継承すると、そのスタイルが古くなってしまうと、もろとも終わってしまうので、技術や設備を継承すること。そういったところにも目を配るべきですよね。

 

 

ナガオカ 写真の左は木村硝子さんの〈コンパクト〉というすごく薄くて美しいグラス。これを見た人が、「こんな薄い木のコップを作れないですか?」と、北海道の高橋工芸さんのところに持っていって、紙のような薄さの木のコップができました。それが、真ん中の〈Kami Glass 〉です。
僕はその様子を見ていて、良いなあと思い、岐阜県の丸直製陶所に行って「こういう美しくて薄い同じかたちのグラスをつくってください」とお願いして、できたのが右の白い〈スキトオ 〉です。透けるように薄い陶器っていう意味です。
木村(硝子)のおっちゃんは、「できるものならやってみろ」って皆に言った結果、できちゃったんですね(笑)。今の日本の職人技は凄いです。
ここで学んだのは、産地の得意分野を知っておくということですね。当たり前のことですけど、なかなかできないので。あとは、産地はみんな同じ悩みを抱えているので、産地間交流も大事ですね。D&DEPARTMENTは国内に9店舗ありますので、そういったこともやっています。

(その他、トーク内で登場したプロジェクト例。リンク先は参考情報。)
MONPE FROM LIFESTOCK D&DEPARTMENTのオリジナル靴箱

 

 

【伝えかたをつくる】
ナガオカ こうやってD&DEPARTMENTは手差しのコピーで小冊子をつくるところから、今はトラベル誌 などをつくったりして、伝えかたをつくってきました。あとは、D&DEPARTMENTのお店で伝えています。
〈その地域のロングライフデザイン〉、〈その国のロングライフデザイン〉、〈その世界のロングライフデザイン〉。この3つのロングライフデザインをバランスよく混ぜてビジネスをしてね、ということがD&DEPARTMENTの店舗ルールなので、韓国店 に行くと、当然ながら韓国に昔からあるものを売っています。

 

 

ナガオカ こどもd SCHOOLという勉強会もやっています。子どもに大人が長く続いているものを教えるんです。以前、出汁の勉強会をやった時に「今日は出汁の勉強会をしまーす!」と言うと、大人は「はーい!」って言いますけど、子どもは「出汁ってなあに?」から始まるんですね。こちらが勉強になるんです。D&DEPARTMENT各店では、d SCHOOLという名前で勉強会を各地でやっていますので、是非参加してみてください。
それから、渋谷ヒカリエの8Fにミュージアム があります。今まで、47都道府県いう切り口で、いろいろな展覧会をやってきました。例えば、47のアクセサリー作家を見つけ出してきて、展示をして、販売をして、図録をつくりました。あとは、コンビニを47都道府県のものでやってみようという展覧会をしたこともあります。これが、大変でした。なぜなら、コンビニに間違えられたからです(笑)。そして、展覧会が終わるまで、ずーっと棚(展示台)を埋めていなきゃいけない(笑)。

書籍『d mart47 ?47都道府県のご当地ものコンビニをつくり、これからのコンビニを考えてみました-』

 

 

【まとめ もうひとつのデザイン】

ナガオカ これまでのデザインって、下に書いてあることを前提につくっているんですね。

〈これまでのデザイン、デザイナー〉
マスPR・量産・イメージ・消費・著名性
作家性・情報・スピード・流行・海外・売上

 
ナガオカ けれど、そういう時代じゃなくなっているんです。これからは、本当を求める人がどんどん多くなっていて、企業よりも個人ってことになっていたりとか……。現に、先日、中国へ視察にいったんですけど、手仕事をやっている人がかなり多くて、ほぼ100%、大企業でプロダクトデザインを経験した人たちでした。きっと、量産がもう嫌なんでしょうね。あと、流通や交通の進化で、東京に集めるということが、だんだん変わってきて、その土地に行っちゃえ!という人が増えている。僕がこういう仕事をやってきたからの感想なんですが、パッケージデザインがなくなってきています。パッケージデザインって、流通にのせるために必要というだけで、商店街で買い物をする時は、普通のビニール袋で良いよねってことが増えているんですね。だったら、グラフィックデザイナーの仕事がなくなってしまうのでは?と思いますが、そんなことはないんですよ。

 

〈これからのデザイン、デザイナー〉
・大量生産ではなくなってきている
・本当を求め始める 企業より個人
・流通、交通の変化
・環境(自然、労働、エネルギーなど)意識
・楽しく、幸せに、健やかに
・量から質

 

ナガオカ 自然、労働、エネルギーに対する意識も変わってきたし、あと、何よりも楽しく健やかに、と言われちゃう。そんな時にデザインってどうすればいいのでしょうか。当然、僕もデザイナーの端くれとして、こういう時代になってきたから、どうすれば良いのかなって考えなければなりません。

ということで、
もうひとつのデザイン
を、考えよう!!
でした。

 


 

会場質問1
デザイナーとして社会と関わっていくには、どうすれば良いでしょうか?

ナガオカ
例えば、自分が活動家だとしたら、社会に対して自分はどこに自腹を切るかって考えてみるのはどうでしょうか。
僕、「デザイン活動“家”」って名乗ってるんです。嫁に「恥ずかしいからやめなさい」って言われるんですが(笑)。昔から、建築“家”が大好きで、グラフィックデザイナーってなんであんなに格好良くならないんだろうって、思ってたんですね。建築“家”って、図面を書く建築士としてだけではなくて、建築が目指すべき意義を、社会へ向かって自腹を切ってやる人。だから、僕はデザイナーとして活動“家”になろうって思ったんです。

 

会場質問2
ナガオカさんは、お店をやりながら、自身の仕事を印刷物にされていますが、出版は、どういう部分でナガオカさんの役にたっていますか?

ナガオカ
今って、自分が欲しい情報にピンポイントで辿り着く時代。それって、Amazonにしてもネットにしても圧倒的に出会いがないですよね。新聞も、発行部数は減ってるかもしれないけれど、出会いがあります。本を買ったけど、読まずに本棚に入ったままとうこともありますが、それで良いと思うんです。その時の自分が気になったものなんだから、そういう意味ではとても大切だと思います。あと、紙媒体なら手渡しで渡せるってところも好きですね。

 

 


 

この本は全10章で構成されており、今回のレポートでご紹介したのは一部。続きをもっと知りたい方は、是非、本を読んでみてくださいね。

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来ていたいただいた皆さん、青山ブックセンターの皆さん、ありがとうございました。