Gallery TALK vol 1 レポート

416日から開催しているD&DEPARTMENT TOYAMA GALLERY 32回目となる展覧会「Torii Black and White Exhibitiion」では『d design travel TOYAMA(※)』の中でキーマンとしてご紹介したVEGAの貫場幸英さんと、富山市のテラゾタイルメーカー「鳥居セメント工業」が取り組む、セメントの新たな可能性を提案するプロジェクトをご紹介しています。貫場幸英さんと「鳥居セメント工業」の鳥居照子さんに展覧会の見どころを解説していただいき、その様子をライブ配信しました。

今回お招きした1人目のゲスト貫場幸英さんは元スキーレーサーで日本トップクラスで活躍していた異色の経歴をもつ方。その後瓦職人の経験を経て、出身地である富山市福沢に自分のアートスペースVEGAを立ち上げられました。現在は企業のプロデュースなど幅広く活躍されています。

2人目のゲスト鳥居照子さんは富山市にある鳥居セメント工業の2代目代表取締役を務めていらっしゃいます。鳥居セメント工業は、創業1954年で東京駅や公共施設の床材として多く使用されている「テラゾタイル」を製造されています。

「テラゾタイル」とは、セメントに石などを混ぜてつくる人工大理石のことです。みなさんも一度は触れているかもしれませんね。

お二人は、平成29年より、貫場さんプロデュースのもと床材として使用されてるテラゾタイルを、花器や家具・アート作品として進化させ、建築材料以外への新しい可能性を作品として生み出されました。本展覧会ではその作品を展示してます。

今回のライブ配信では、貫場さんより作品の説明をしていただきました。

まず見せていただいたのは白色の花器。

この花器は、貫場さんが去年雪不足のゲレンデを訪れた時、雪面からブッシュが出ている様を見て、これが花なら美しいだろうなとテラクリエで作る事を思いついたそうです。スキーレーサーとして活躍した貫場さんだからこそのアイデアです。本当に雪の中から花が咲いてるように見え、白の花器が花をより美しく見せてくれます。

 

次に見せてもらったのは先程とは対照的な黒色のテーブル。黒色は漆加工がしてあり、とてもエレガントな雰囲気を表現しています。

 

天板をみてみると、丸を幾重にも重ねたような独特の模様が施されています。作品で浮き出ている模様は、意図して描いたものではなく、職人が無心で磨けあげた跡です。貫場さんは、その職人さんの無心の仕事自体が美しいと感じデザインに生かしました。本来は見えない模様も個性的で作品をよりシックでエレガントなものにしています。

次に見せていただいたのがトスティーカです。トスティーカはテラゾタイルに強度を持たせる為に中に仕込む鉄筋に光をあて、家具として提案するシリーズです。鳥居セメント工業は、元々建築家のオーダーに合わせた特注のテラゾタイル作りを得意としてきました。建物のイメージや雰囲気、建築家の細かいオーダーに合わせて、細やかにサイズや形をカスタマイズできるので鉄筋も自社で作っています。

この椅子に使われてる足の部分はコンクリートの中に仕込み強度を持たせる為に使われる鉄筋を使用しています。実はテーブルの脚にも使われています。普通は見えない鉄筋部分にまで視点を当て作品として表現する貫場さんの観点に鳥居さんもとても衝撃を受け驚いたと語っていました。座面は『d design travel TOYAMA』の中で紹介している「KAKI CABINET MAKER」が作っています。貫場さんは若い頃からKAKIさんの元でスキーをされていたので、古くから親交があるそうです。貫場さんだからこそできる作品ですね。私も初めてテーブルやスツールを見た時はこれがテラゾタイルに使われている鉄筋だという事に全く気づきませんでした。こんなにも素敵な家具の一部に生まれ変わりお部屋のインテリアになるなんて衝撃でした。

 

続いて見せて頂いたのは一輪挿しです。

鳥居さんも数ある作品の中で一輪挿しはお気に入りの一つといい、テラゾタイルでこんなにも可愛い作品が表現でき見るだけでほっこりするし感動したと楽しそうに語っていらっしゃいました。

TOWA(トワ)は、テラゾタイルをランダムにカットしたオブジェです。テラゾタイルの形を多面的に捉えて欲しいという貫場さんの思いから、同じ形は一つもなく、ランダムな多面体の形をしています。

 

テラクリエはオブジェの他にもブックエンドやペーパーウェイトなどテラゾタイルの重さを活かした様々なアイテムがあります。

 

そして最後に見せて頂いたのはヒートです。

ヒートはテラゾタイル自体が発熱し、温かくなる作品です。ヒートに足を乗せるだけで、足先がじんわり温まります。また体を温めるだけではなく靴を乾かしたりと多様な用途に使えます。テラゾタイルは冷たいと言いうイメージがありましたが、そのイメージを変えてくれたと鳥居さんも語っていた作品です。

今まではテラゾタイルは建造物などに使われているイメージしがありませんでした。でも、今回みた作品は、どれも可愛くて自分も思わず欲しくなります。”冷たいもの”とか”土木材料”というイメージしかなかったテラゾタイルが、今回の展覧会でガラッと変わりました。ぜひ実物を観に来てください!

 

(※)D&DEPARTMENTが作るトラベル誌。デザインの視点でその土地に長く続く個性・らしさを紹介する。