55 実店舗で買う

いつものように、本をAmazonで買おうとした。多分、本屋で探すには微妙に置いてない可能性の本だからという理由と、もちろん、結構すぐに届くということで。
向こうから本がやって来てくれるということは、ガソリンや人の力を使っている。それを「便利」と呼ぶ時代はいつまで続くのだろう。飛躍して地球のことを心配するとしたら、本屋に歩いていった方がいい。輸送する梱包材も減るし・・・・・。

そうして時間を使うことは、無駄だろうか。歩いて本屋に行き、もしかしたら置いてないかもしれないから、事前に電話でもして、確認してから本屋に行き、お金を払い、レジ袋を拒否してそのままカバンの中に入れて帰る。amazonでポチッとすると、その時間が浮く。浮いたら有意義な時間になるだろうか。歩いて電車に乗って本屋に行くことで失う時間は、無駄なんだろうか。それを飛躍させて「人生」と考えたら、どっちが有意義なのだろうか、そう感じるのだろうか。

僕は実店舗が好きだ。だから今も店をやっている。実店舗は効率が悪い。そもそも「来るか、来ないかわからないお客さん」のために、従業員とともに店を掃除し、在庫を抱え、きれいに陳列し、接客の時に聞かれたら答えられるようにメーカーと勉強会を開き、知識としてハードディスクではなく、クラウドでもなく、頭のなかに記憶する。時々、思い出せないことに遭遇するけれど・・・・。そんな実店舗は、Webストアより劣っているだろうか。ある意味、強烈に劣っている。でも、なくなってもいいのだろうか。

実店舗はほっておくと簡単になくなる。お客さんが来ない間も、人件費や家賃、光熱費を払い続け、全くお客さんが来なければ、簡単に潰れてなくなる。でも、僕は実店舗が好きだ。

いろんなことが、便利という言い方で、合理化されていく。もしかしたら不便と言いがかりをつけられたものの中にこそ、正しいことがあるのかもしれないのに。それでも、私たちは本を、生活雑貨を、ぶら下がり健康器具を、ガスボンベを、大根を、ラーメンをAmazonで買う。そんなに忙しいのだろうか。そんなに急いで手に入れる必要があるのだろうか。そんなに急いで手に入れて、それと引き換えにした時間の所在は、ちゃんと把握しているのだろうか。