54 個展

金沢21世紀美術館の横にあるガラス作家の辻和美さんによる「factry zoomer gallery」にて展覧会をすることになりました。2020年の春です。きっと1月とか2月とかです。

色々社会に発表したい価値観があります。なので色々悩んだ結果、展覧会のタイトルを「PLASTICS」と、しました。3度ほど、銀座松屋で開催された原研哉さんによる「銀座目利き百貨街」に出品、全く売れなかったあの「プラスチックの経年変化」ものたちです。

ギャラリーとは、作家の商品が売れた何割かを収入として成立していますので、辻さんには「売れなくても本当にやりますか?」と、逆に念を押しました。「知ってる、売れなくても私はやるよ」と言ってくれて、ある意味、辻さんに「世間は評価してないかもしれないけれど、私はそういうのは好きだよ」と言われているような、そして、言ってもらえもして、本当に救われました。なので、堂々と、全く評価されていないプラスチックもの100パーセントの展示、販売会をしたいと思っています。そして、この企画展の企画意図をここに少しだけ書いてみたいと思います。

人類は様々に自然の摂理を捻じ曲げながら人間の都合で発展させてきました。土の中のものは取るべきではない、という意識人の考えなどもあります。その代表的なものが石油でしょう。そこから便利という人間の都合による様々な生活用品が生まれました。その一つが今回の主役「プラスチック」です。熱に強く、落としてもガラスや陶器のように割れず、そして軽く、量産もできる。様々なカラー展開も、その鮮やかな発色も魅力で、雨にも強く屋外使用もできる。

最近、ステンレス製品による人体への影響について騒がれています。もちろん、プラスチックも何年も前から騒がれてきました。それはもちろん、当然のことです。私たち人間は都合よくそれらを使ってきました。なので、またしても都合よくこれらを「害」としようとしています。少し前では FRPが「土に戻らない材料」ということで、エレファントスツールなど、廃番に追い込まれ、樹脂によって復刻は成し遂げたものの、結局、最近、FRP版が復刻。これも人間の都合・・・・。

僕は昔から「経年変化したプラスチック」が意味はわかりませんがとても好きです。そして、収集を始めながら、D&DEPARTMENTでも多くを販売しました。今でもその魅力をうまく言葉にできませんが、誰からも愛されず、ただ、必要な用途を全うすることで擦れたり日焼けしたりして変色したその様子に、どこか健気(けなげ)さを感じるのです。もちろん、擦れて変色したからと言って、陶器などの付加価値に発展することもなく、ただ、使い古されたとだけ認識され、多くは捨てられていく。長く大切に使い続けようということを言う人もなく、です。つまり、彼らは「長期使い捨て用品」だったと言えるでしょう。誰も愛してはくれない・・・・・。

今回は日本中からそうしたものを集め、改めてプラスチックの経年変化を直視してみようと言うものです。もちろん、そのほとんどは生活用品だったもので、収集した場所は一つとしてまともな場所ではありません。要するに「再需要を見込まれず、放置されていたものたち」なのです。

銀座での展示では、毎回、一つも売れませんでした。それは僕の美意識とこれらに直面した人たちとの美意識との差。世の中の価値観のギャップ、「わからない価値」をじっくり見ようとしないことによる、ある種の人間的な無責任もあると思うのです。作って、便利に使い倒し、壊れないので、捨てもしない。彼らにできることは、変色したり、すり減るだけ。しかし、それが彼らの最大の表現であり、そこに人類としての新たな美意識で近寄ってみてはどうか、と言うものです。

金額は全体的に高めにしています。一つ一つ、問屋さんからまとめて仕入れたりできるものでもなく、僕が一つ一つ拾ってきたかものだからです。それらを丁寧に洗い、簡単な消毒を施しています。そして、これらは1998年に発想し2000年に開業したD&DEPARTMENTの原点とも言える発想、商品でもあります。

木材や陶器、ガラスや鉄に経年変化があるように、プラスチックにも立派な経年変化があります。そこに皆さんと一緒に注目してみたいと思い企画しました。