8 dさん

僕は「ブランドの人格」を意識することが大好きです。そして、dというブランドは、生真面目ではなく、「ウィットが大好き」「チャーミング」に育てたいと思っています。これは働いているスタッフ全員で作っていくものだとも思っています。しかし、一人一人の中の「d」がバラバラではいけません。そして、こういうものは、なんとなく伝染していくもので、例えば、MUJIが好きなスタッフが多いと、なんとなくそれを意識して、MUJIに似ていきます。僕はこの「D&DEPARTMENT」というブランドの人格の骨の部分をディレクションしているつもりです。例えば、紙袋の考え方。普通の新品ではなく、また、印刷されたものでもない。例えば、「d design travel」。例えば、d47 MUSEUM…。ダイニングにしても、食堂にしても、売り場にしても、どこかちょっとチャーミング。それを意識してお客さんはやってくるから、ちょっとチャーミングな接客をしないと、お客さんはがっかりします。MUJIっぽかったら、がっかりでしょう。
これは取り扱いをさせてもらっているメーカーや作家さんからも影響を受けます。いろんな取引先が僕ら「d」の人格を意識する。「ああいう店で取り扱ってほしいな」と思ってもらえるってことは、「ああいう人と付き合いたいな」ということと一緒だと思う。人に言葉や服のセンス、身振りや、行動があるように、dにもそれはある。あった方がいい。あった方が楽しい。僕ら「d」が好きな作家さんは、きっと、僕らのことも好き。きになる。そんな両者が会うことで、何か楽しいことが生まれる。それを期待している。だから、それが百貨店のようになっては残念だし、ちょっと洒落っ気のあることを期待されているのだから、いちいち工夫をしたい。
MUSEUMの音声ガイダンスのipodは、全国のみんなからが使っていないものを呼びかけて回収したもの。こういうアイディアの一つ一つで、「d」という人格は作られる。働く一人一人のみんなのちょっとしたアイディアが、日々、dを成長させている。「いらっしゃいませ」でもなく「こんにちは」でもなく、何かdらしい呼びかけとか、ないかなー。
世の中がお客さんのクレームに怯え、どんどんセルフに、どんどんマニュアル通りになっていく。不条理なことを言うお客さんには、帰ってもらって構わないし、注意したって構わない。ただ、私たちがまず、全力でちゃんと提案できること。情報を知っていること。そういう基礎を抑えた上で、ユニークで楽しい店として人格を育てたい。そこに集まって気に入ってくれる人たちと、ユニークな価値観を作っていきましょう。