スタッフの商品日記 082 AKARI

芸術家イサム・ノグチがデザインした“光の彫刻”
今や日本だけでなく、海外からも人気を博しているAKARI(あかり)シリーズ。彫刻、絵画、造園、舞台、インテリアデザインなど幅広い分野で活躍した芸術家イサム・ノグチが手がけました。誕生してから半世紀以上が経過し、生活様式が大きく変わった現在でも全く色褪せていないデザインです。多くの人を魅了している理由として、姿美や機能性はもちろんのことですが、AKARIが作り出す優しい光が第一にあると考えます。


あえて自然光に近い、まるで太陽と月の光のような柔らかい光がもれるように作られているというわけです。名前は日と月を組み合わせた漢字の「明(あかり)」から付けられ、ロゴマークは太陽を示す正円と三日月を並べたデザイン。パッケージデザインは、イサム・ノグチと友人の亀倉雄策が手がています

シェードは竹ひごの骨組みに和紙を張った最小限の構造。自然な素材とシンプルな製造工程だからこそ、手に入りやすい価格になっています。自然光のような柔らかな光そのものを彫刻としてとらえ、使う場所や使う時間によって全く異なる表情を見せてくれる。単なる照明器具でも、芸術作品でもない、和紙と竹からなる光の彫刻と呼ばれる所以はここにあります。


↑D&DEPARTMENTでは丸型と楕円型を取り扱っています。

つづく地域
岐阜提灯とは名前の通り、岐阜県岐阜市で作られています。もともと岐阜は豊かな自然に囲まれていることもあり、竹や和紙の産地として栄えていました。そのような産地で採れる竹と薄くて丈夫な和紙を使用し現在まで作り続けられているのは、良質な原料と長良川や板取川の清流に恵まれた環境だからこそなのです。

岐阜提灯の歴史
岐阜提灯は江戸時代の徳川三代将軍の頃には幕府に献上されたと言われており、300年以上の歴史を持っています。特徴の一つである草花や風景が施されている装飾が人気だったと言います。1878年 (明治11年)に明治天皇が東海北陸地方巡幸の際、美しさと技術力の高さが目に留まり、そこから岐阜の伝統工芸品として全国に知られるようになりました。現在でもお盆の時期の盆提灯として広く使われています。

つづく仲間
岐阜県の株式会社オゼキは昭和17年に設立され、AKARIをはじめ様々な岐阜提灯を製造しています。岐阜県に本社が、東京にも営業所があります。

明治の初めに初代尾関次七は荒物雑貨小売りの兼業として、提灯の販売のほか、製造に着手したことが始まりでした。明治20年には伝統工芸品として全国に知られるようになったことを契機に、販売量が飛躍的に増加。そこで2代目次七は自ら製造に関わりながら岐阜提灯の製造販売を専業とし、新しい技術や海外向けの製品などを次々と開発していきました。現在は新しい試みとして、現代の生活空間に溶け込むようなを提案。手紙として送る小さなレター提灯や、多くのデザイナーとコラボレーションし、インテリア照明として使いやすいデザインの岐阜提灯を販売しています。→株式会社オゼキのHPはこちら

↑コードレスの盆提灯もある

AKARIの誕生
イサム・ノグチと岐阜提灯の出会いには経緯がいくつかありますが、その一つとして1951年、岐阜県の長良川の鵜飼見物のため岐阜を訪問した際、当時の市長が戦後低迷した提灯産業の活性化のために協力を求めたことがありました。こから岐阜提灯に強い関心を持ったノグチは尾関次七商店の提灯工場(現・株式会社オゼキ)を見学し、のちの「AKARI」シリーズの制作が始まりました。その後もノグチは度々岐阜に向かい新作に取り組み、株式会社オゼキは指定工場として協力し、生涯制作したAKARI は200種類以上にのぼります。

製造方法
伝統的な岐阜提灯と変わらない手順ですが、シンプルな構造で細い竹や破れやすい和紙を使用しているからこそ、職人の技が光ります。イサムノグチが当時デザインした図案を元につくられた型を使用し、職人が一つ一つ丁寧に仕上げています。ここでは岐阜提灯の制作写真を例に、提灯が如何にしてつくられているのかをご紹介します。
①番号に沿って型を並べ、輪をはめて型を固定する
提灯の大きさに合わせた張型を組み、カガミ(コマともいう)を上下にはめて固定します。

↑火袋の形を決める木型(張型)
②型に刻まれたみぞに沿って竹ひごを螺旋状に巻く
型の側面には無数の溝が切ってあり、その溝のことを竹ヒゴを乗せるためのヒゴ目と言います。ヒゴ目の切られた側面のカーブに鬢付け油(現在ではハンドクリーム)をヒゴ目には漆を塗り、和紙が張型に付着しないようにします。その後、張型に切られた溝に沿って竹ヒゴを螺旋状に巻いていきます。

③糸かけを行う
②が終わると上下に張輪をはめます。上の張輪に張型とおなじ間隔で9本の糸を結び、鈎針を使用して一番上の竹ヒゴに糸を巻いていきます。最初の竹ヒゴに糸を巻き終わると、上の張輪から下の張輪に向け張型に沿って糸をかけます。最後に一番下の竹ヒゴに糸を巻き、下の張輪に結びます。

③ヒゴと型の表面にのりを塗り、火袋となる和紙を貼付けていく
上下の張輪から4~5本のヒゴの部分に薄紙を貼り付けます。これを腰張りといい、この部分が最も破損しやすく、補強をするための工程です。その後精製した小麦粉で作った糊をノリバケでヒゴに叩くようにしてムラなくつけます。糊の付けすぎは、ヒゴから糊があふれて仕上がりが見苦しく、逆に少ないと紙がはがれやすくなるため、手加減は、張師の熟練の勘に委ねられます。また、叩くようにしてつける理由は竹ヒゴの表面だけに糊が着くようにするため。「糊を打つ」と表現します。その後撫で刷毛で撫でて、絵紙と竹ヒゴを完全に密着させます。

④余分な和紙を剃刀で丁寧に取り除く(同じ作業を繰り返し全面を貼り包む)
なるべく継ぎ目が目立たないように間隔を狭く切ることが重要。火袋の張り合わせの継ぎ目が均一で細いことにより、和紙を透した光がより優しくなります。

⑤型を抜き、脚・灯具を取り付ける
紙を張った後、乾燥後はカガミを外し、張型を抜きます。その後、脚や灯具を取り付けます。

お気に入りのポイント
引っ越しのタイミングに合わせて寝室用に念願のAKARIを購入しました。4畳くらいの、ベッドしか置けないようなコンパクトな寝室でしたので、購入したのは45Aの小さい丸型にしました。灯りが点いている時は、和紙を通した暖色のやさしい光で落ち着くのですが、寝室にいる時間が少ないのか、個人的には朝の目が覚めた時、自然光で見る灯りが消えている時の姿が好きです。時間が止まっている。と言うと大げさですが、無機質で静かに宙に浮いている、そんなonとoffの両方の表情を楽しむことができる彫刻のようなシェードです。(藤田諒/d東京店ショップ)