35 d hotel サイン

dのホテルは基本的に会員になってもらい利用してもらうスタイルを考えています。それは前にもここに書きましたが、知らない同士のただの接客やサービス提供が嫌だからです。知っている人、友達のような人なら、普通はできないようなもてなしができます。閉店時間を過ぎたレストランのテーブルを解放することも、ワインが飲みたいと言われたら、厨房からボトルを出してくることもできると思います。だから注意書きも減るし、室内に不要なサインはつけない考えです。家にトイレのサインなど必要ないようにです。

僕は常連にならないと分からない独特なルールがある店が好きです。みんながさくさくと利用できるより、なんだかよくわからない状況があった方が、そこにひとつの乗り越えたくなる壁ができて、そこを超えるおもしろさがある。仲間になった感じ。ひとに教えたくなる感情・・・・。

日本は注意書きが多すぎます。その多くの理由は「くだらないクレーム」が多いからです。言いたい気持ちはわかりますが、大目に見たり、我慢して見守ったりする大きな気持ちがどこかに行ってしまったのでしょう。ある時、僕らのd47MUSEUMの展示物を触りまくっているおばちゃんがいました。スタッフが軽く注意をすると「だったら、書いときなさいよ!!」とキレられました。もちろん、おばちゃんの考えは間違ってはいません。でも、貴重なものを借りてきて、展示しているその気配、様子、緊張感がわからないわけですから、もう、僕らのお客さんではありません。来なくて結構です。僕はそんなスタッフに、謝りすぎないようにと言っています。もちろん、何様な気持ちで言っているのではありません。お客様は神様ではないのです。だから、いい店や場所には50対50の関係があります。お客さんも感謝する。店側も一生懸命に準備する。この関係に関心のない人は、他のそうしたお客様は神様と考えている店に行って、一方的にいい気分になる接客を受けるのがいいと思います。今後、僕らの店、ホテルなどの場を僕らなりに快適にお客さんに過ごしてもらうために、会員になってもらった人しか利用できないようにしていくのも、そのためです。こう言う書き方をすると、ムカムカくる人もいるかもしれません。でも、いい場所を作るには、ホスピタリティを一緒に作っていかなくては、私たちだけではできません。一緒にいい空間を作りたい。だから、お客さんにも仲間になってもらう必要があるのです。

日本の街の、店の、サービスの現場のあちこちに、誰かが言ったクレームに対応すべく注意書きが増えていきます。そんな国って嫌じゃないですか? もっと察する気持ちで、お互いの場所としてのホテルや店を作っていきたいものです。と、いうことで、dのhotelには、ほとんどサインはつけません。わからなくなったら僕らスタッフに聞いてください。ご案内します。