30 dの将来

dをやっていて一番楽しい事。それは「USEDの仕入れ」です。新しくものをデザインしたりする事よりも、すでに世の中に生まれたものから選び出したり、本来の使い方とは違う「みたて」をする事が、本当に楽しいのです。僕にとって今のdは全て、この「中古品の仕入れの楽しさ」がベースになっていて、企業の創業時の商品を復刻する「60VISION」も、47都道府県の”らしさ”を再確認する「d47museum」「d design travel」も、そういうものを販売する「D&DEPARTMENT」も、すでにある素晴らしい個性を、僕の言語で構築していったものです。展開していくうちに「47都道府県に店を展開する」とか「長く続いているものを育む」とか「食の豊かさを伝える」とか・・・・。dのみんなによって、そこに枝葉が伸び、花を咲かせ、皆さんが集まって下さり、と、展開していきました。

時代は大きく変化し、「直して使い続ける」「個人売買」「経年変化」などが一般化して、もはやdの役割は終わりつつあります。これは正直な話です。
僕は紙媒体が好きで、路面店空間が好きです。なのでネット社会とはいえ、楽しい印刷媒体を作り続け、路面に実店舗を構え続けるとおもいますが、体にいい、とか、しっかりと制作者の顔の見えることよりも、「ウィットのある表現」「楽しいこと」が好きで、新しい表現にもワクワクします。しかし、今のdは、やや「健やかさ」をまっすぐに進み過ぎていて、本当はもっともっとふざけたり、やんちゃな少年のようなままでいたいのです。

今年に入り、急にではありますが「ロングライフデザインの10か条」を変更しました。急過ぎて、もしかしたら僕らdのwebサイトですら、更新されていないかもしれません。どう変えたかというと、Gマークのような社会のみんながそれに沿えば、わかりやすくグッドになれるということよりも、なんとなく生き物のように、曖昧で、それでいて、楽しそうで、親しみやすい方がいいと、何より自分が10か条なんて言っていることで窮屈になってしまったようで、どうしようかなと思っていました。「正しさ」に向かい過ぎると、危険なことや、反発が生じる。そこを緩やかにしていくことと、楽しく継続していくことが、何より大切じゃないかと思いました。変更した10か条は、次の4つにしました。「歴史」「健やか」「根付く」「仲間」です。正直、フランチャイズという縛り、仕組みも違うんじゃないかと思い始めています。もっと自由にそれぞれの土地のdは、自分の屋号で「d」がきっかけで気づいた「その土地の個性」をそれぞれに伸ばしていく。今の仕組みだと、「d」という同じ名前を名乗るスケールメリットの陰に、本部としての「厳しい選定の基準」や「ロイヤリティ」が存在し、もっともっと大切なこととは、同じ名前を名乗ることではなく、「同じような意識」の緩やかな友達関係で、教えあい、励まし合い、お客さんを紹介しあうことなのではないかと、思うように思っています。この考えは代を受け継いだ相馬社長、松添副社長から出てきたもので、「もっとのびのびとみんな仲良く自由に」という発想に、心底、共感したものです。

さて、2020年に向けて、様々にdは新しくバージョンアップを図ります。そんなに劇的には変わったりはしませんが、もっともっと自由に健やかに成長していきたいと思います。ぜひ、末長く、おつきあい下さい。