23 1%の格好よさ

自分たちのやっていることを言葉にすると、こうも言えるかなと思っています。普通のことを「1%だけデザインで格好良くする」。普通が50パーセントだとすると、デザイン家電は80パーセントデザインが際立っている。そこまで行くと居心地が悪くなる。しかし、普通の50パーセントだったり、47パーセントくらいに下回ると、魅力がなくなって見える。
LONG LIFE DESIGN.1の図録では、その考えの写真で大変苦労しました。キレイすぎる80パーセントの写真の嘘臭さではなく、また、40パーセントの普通すぎて魅力のない写真ではなく、51パーセントを目指す。普通なんだけれど、ちょっと格好良い。チューニングが難しいから、大変苦労する。でも、そこにリアリティとクリエイションが同居して、居心地が生まれた時、ほっこりしながらも、格好良いとなる。
コピーにも同じことが言える。コピーライターの後藤さんに、これからdのコピーをお願いしようとするキックオフ的な打ち合わせの席で、この話になりました。「広告コピーのようなコピーの時代は終わった」という話です。相変わらず「伝えたいのは、未来です」的な、コピーライターが得意なトーンはもう、逆に80パーセントの胸焼けするもので、でも40パーセントではダサい。ほんの少し、1パーセントだけデザインされていることで、トレンドに流されず、息の長いこととなる。「そうだ、京都へ行こう」は50.5パーセント。「恋を何年休んでますか?」は、60パーセント。そう思うと、「伊勢丹」の眞木準さんのコピーは絶妙で、ファッション臭を効かそうとすれば80パーセントくらいがいいとしたら、60パーセントくらいのところに落ち着かせて、流行の渦を作りながらも、普遍的なポジションを強く意識していたように思う。
dはこれからも51パーセントのデザインでありたい。それはサービスも接客も。そして、内装もオリジナルアイテムのデザインも、50ぱーせんとの普通に1パーセント足せるというのは、かなり難しい。来店客に「いらっしゃいませ」と言うのは、ある意味「店員」として簡単である。お客さんと店員の垣根もなくして、とはいえ、お客さんより1パーセント店よりの立ち位置で、「こんにちは」を1パーセント店寄りにした意味としては「いらっしゃいませ」が作りたい。
100パーセント店員、100パーセントお客さんという時代が終わる。お客さんと店員がそれぞれに1パーセントづつ食い込んで、賓主歴然(ひんしゆれきねん・亭主とお客、お客と亭主が時に入れ替わるようなこと)なこととなった方が、良いものが生まれる。ここには相互に認め合い、共有し合うビジョンが必要で、相当難しい。でも、新しいサービスや商品を生み出すためにも、ここの関係の壁の破壊は必須と思う。
dはこれからますます51パーセントを目指したい。