107:”継ぐ”と”生かす"

京都で長らくラジオをやっているわけですが、先日、ある京都の方と会食していて、その方が結婚されると聞きました。旦那様になる方が、その会社を継ぐわけですが、そこにある娘として自分の家の跡取りを迎える、ということと、結婚する相手の家業を、結婚と同時に継ぐ(直接、代表になることはないとしても、長らく続く妻の家業のことをこの先の人生で考えていくことは間違いない)わけで、そこにある「継ぐ人生」に考え込んでしまいました。

そうした代々続く家業などのなかった僕は、普通に自分のなりたかったデザイナーという職業を目指し、今も、それは続けつつも、誰か、例えば、娘に継ぐ、継がなくてはならない、などとは考えたこともないわけで、会社の創業者ではありますが、ここも、別に今の社長で会社をたたむとなったとしても、長い歴史があるわけでもなく、ま、仕方ないということで済みます。

ラジオで多くの老舗の継承者と話していると、継ぐつもりはなかった、または、先代が継がなくてもいい、継がせない(時代的、経済的に)ということは聞けましたが、多くのそうした経営者と話していて、やはり、「人生のメリハリ」がある。僕はそこにちょっと羨ましさを感じました。

自分の今の人生の中に「継ぐ」というキーワードがもしあったら、おそらく「自分一人のこと」だけを考えた、なんとも単調な人生なんだと、改めて思いました。少なくとも「継ぐ」ということは、「先代」の仕事があり、「後継者」へのバトンタッチが必要。そして「自分の代でなすべきこと」という意識も必要で、そう考えていくと、「自分の人生の中で継ぐものがある」って、とてもいいなと、やはり、思うのです。

d design travelという本は現在、三代目編集長が、D&DEPARTMENTという会社も、現在三代目社長が継承はしています。僕の中にもそんな「継承」があったことを改めて思い起こしながら、既に次の代にバトンタッチして自由になった身として、他にもっと「継承」を考えないといけないことがある、とも、思うのでした。