91:  型紙を売るってどういうこと?

もう一つ、今回の三重店商品開拓の旅で思ったことを書いてみたいと思います。伊勢型紙とは、「友禅、ゆかた、小紋などの柄や文様を着物の生地を染めるのに用いるもので、千有余年の歴史を誇る伝統的工芸品(用具)です。 和紙を加工した紙(型地紙)に彫刻刀で、きものの文様や図柄を丹念に彫り抜いたものですが、型紙を作るには高度な技術と根気や忍耐が必要です。昭和58年4月には、通商産業大臣より伝統的工芸品(用具)の指定をうけました」と、hpにあります。僕が資料館や売店を見ていて思ったのは「型紙って売っていいのかなぁ」ということです。上記したhpの解説文の中にも「千有余年の歴史を誇る伝統的工芸品(用具)」とあります。(用具)なのです。その技術は本当にすごい。緻密で根気がいり、しかも時間がかかります。しかし、売店に行くと型紙をしおりやコースターにしている。おそらく、一つ一つは一点物なので、作業の大変さに比べて500円とか安いのです。

僕らの身の回りにも「道具とそれを使った技、それによって作られた品物」という関係性はあると思います。売るべきは「道具を使い技術で作ったもの」であって、「道具」ではないと思うのです。そして、「型紙」とは「道具」だと思うのです。来る日も来る日もそんな、技術と技で作った「道具」そのものを売るなんて、なんだか虚しい感じがしました。僕は正解はやはり「道具と技術を駆使して作る素晴らしい型紙を使って作られた反物や印伝(鹿皮に漆を型紙を使って刷った伝統工芸品)のような、刷った後のものなんじゃないかと思うのです。もちろん数十万で売られている「型紙」もあります。当然です。とても芸術的な作品といえますから。でも、型は「作品としての商品を量産するための道具」。やはり、簡単に売っては寂しいと思うのです。よく事情を知らずに生意気なことを書いているかもしれませんが、そして、この話はいろんなことに当てはまるような気もしますが・・・・・・。

本当に細かな手仕事による型づくり。若い作家さんたちも増えているようです。もちろん、素敵な柄による様々な作品、商品を適度に量産するために。型への考え方が歪んで行かないようにしないとなぁ。

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