オリジナルクラフトビールができるまで・現地レポート

そもそものきっかけは、「d news aichi aguiでオリジナルビールをつくりたい!」というナガオカの一言。D&DEPARTMENTの新業態「d news」は、その土地の素材を生かしたものづくりが、一つの活動テーマ。だからこそ、オリジナルビールも知多半島の人と一緒につくりたい。そう考えたとき、思い浮かんだのが、「OKD KOMENKA BREWING(オーケーディーコミンカブリューイング)」さんでした。
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知多木綿で栄えた土地・岡田の小さなブルワリー
OKD KOMINKA BREWING
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d news aishi aguiの店舗から、車で約15分。愛知県知多市にある岡田地区(旧岡田村)は、江戸時代から木綿の機織りで栄えた地で、木綿工場や卸問屋が立ち並び、現在でも当時の面影が残ります。

この場所に古民家を改装した小さな醸造所「OKD KOMINKA BREWING」があります。


新たな出会いや今までのつながりを大切にしながら、2019年からこの地でビールづくり始めたブルワーの新美泰樹さん。自分の育った土地の魅力を、ビールを通して伝えていこうという姿勢が頼もしく、かっこいいのです。

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ビールの味にこめるブルワーのドイツでの思い出
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オリジナルビールをどうやってつくろうか、という漠然としたところから、どんなスタイルでつくるかの相談に乗ってくださったのは、他でもなく新美さん。

今回のビールの開発は、20代のころ、ドイツでプロ野球選手として活躍した新美さんの思い出の味がヒントとなりました。それは新美さんが練習終わりに、チームメイトと乾杯した「レモンラドラー」。

そんな新美さんのエピソードをお聞きしたとき、わたしの中でも、町内外の人とこのビールを通して、楽しく乾杯するイメージが沸きました。ここからビールのフレーバーとなる原料の調達先探しが始まります。

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母娘の二人三脚で育てる副原料の「レモン」のこと
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阿久比町でレモンを栽培している人が果たしているのかしら…?というところからリサーチスタート。昭和初期から、阿久比町を含め、知多半島は温州みかんの産地として、愛知県下でも有数の産地の一つです。ということは、「同じかんきつ仲間のレモンを育てている人だって町内にいるはず!」という根拠のない自信を携えて、町内の農家の方のお力もお借りして進めていきました。

オリジナルビールに使用させていただいているのは、阿久比町のかんきつ農家・坂部フルーツさんのレモン。「おじいちゃんが残したみかん畑を継いでいきたい」という想いをもって、坂部和江さん、光さん母娘の二人三脚で、栽培されています。

今回は、香りづけにレモンの皮を仕込みのときにつかい、仕上げにレモン果汁を加えています。坂部さんも、「自分のところのレモンが、商品となって世の中に出ることがとてもうれしいです」と喜んでくださいました。


スーパーなどで見かけるきれいなカタチのレモンを育てるのは、こまめな剪定と、草刈りが必要で、大変な労力がかかることを坂部さんのお話で知りました。ビールに加工することで、傷ついたり、規格外のものでも、商品として活かしきれることを、坂部さんが喜んでくださったことがうれしく、出来上がったビールをお届けするのが楽しみです。

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オリジナルビール醸造過程のこと
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さて、新美さんの醸造所にて、新美さんに醸造過程教えていただきながら、オリジナルビールづくりは、1~5までの仕込み(2021年10月26日)と、6~7までの仕込み(2021年11月29日)と2回に分けて進められました。

1.マッシング(お湯に麦芽を投入し麦汁をつくる)
2.スパージング(さらにお湯を加え麦芽に残った糖分を絞ること)
3.副原料の準備(今回はレモンの皮をむく作業)
4.煮沸(途中でホップを投入)
5.貯蔵タンクで熟成
6.レモン果汁投入
7.追加熟成

わたしは、ほぼ言われるがままに、新美さんの手となり、足となり…。それでも「ビールってこんな風につくられるのか!」という新鮮さを感じられる時間となりました。

まず、ビールのベースをつくる作業である「マッシング」。麦芽のデンプンを糖に分解しやすい温度である64℃に設定し、作業が進んでいきます。デンプンが糖に変わったとこを見極めて、二つ目のタンクへ麦汁を移動します。このとき、麦芽のカスが入ると、濁ったり、仕上がりが悪くなるため、慎重に作業を進めます。


「スパージング」は、一つ目のタンクに、お湯を足して麦芽に残った糖を絞り切る作業です。今回は3回にわけて進めて、麦汁を絞りました。


余談ですが、この絞った麦芽のカスは、知多半島の北・大府市にある新美さんのお知り合いの牛舎へと運び、飼料となります。「OKDの麦芽で育った牛だから、OKDビーフ。知多半島で資源の循環ができるのがいいかな、って思っています。」と新美さん。

つづいて絞った麦汁を煮沸します。殺菌に加えて、不快な臭いの除去、濁りの原因となるタンパク質などを凝固する目的があります。また、煮沸のタイミングで香りづけとなる、レモンの皮、ホップを入れていきます。

ホップにも、実は様々な働きがあることを、今回初めて知りました。一般的によく知られているのは、香りや苦味など、味に直接作用する部分だと思います。その他に、ビールの泡持ちをよくすることも、ホップの役目。

ホップにも品種によって、得意とする働きがあるようで、通常はいくつかのホップをブレンドしてつくることが多い中、新美さんはあえて「シングルホップ」にこだわるつくり方を採用しています。今回は、ニュージランド産のホップを使用しています。

煮沸が終わると、酵母が働く温度まで急速冷却。24℃まで一気に冷やして、熟成用タンクへ移動します。移動したタンクに、酵母を入れ、香づけにレモンを投入して、ここから2週間の発酵期間に入ります。

仕込みをしておよそ1ヶ月。いよいよレモンの果汁を投入するタイミングになりました。殺菌したレモンを、一つ、一つ手作業で果汁を絞っていきます。(その量90キロ…おそらく一生分のレモンを絞った気がします)

ビールを天然のレモン果汁で割り、熟成させたそのお味は…?
ぜひ、店頭でお買い求めの上、お確かめください◎

d news aichi aguiでも、今後みなさんに飲んでいただける準備を現在、進めています。

ビールの開発はOKD新美さんはじめ、チームの協力があったこそ。
ビールを通して阿久比町や知多半島の魅力を再発見するきっかけの一つになったらいいな、とも思っています。

みなさんに愛される商品となりますように。

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