オリジナルワイン2021ができるまで・イエローマジックワイナリー編

今年、と言ってもすでに仕込んだのは昨年のことになるが、2021年度もイエローマジックワイナリーにて、オリジナルワインの仕込みをさせていただいた。基本的な工程や醸造方法は、昨年とほぼ同じで進めたが、その違いはかなり大きく変化が出たことは、やはり、その年々で同じぶどうといえども大きな変化があり、同時に作用する菌の動きも、時間のかけ方などにも少しずつ変化し続けることを身をもって知ることができた。

昨年の製造はこちら>>オリジナルワイン2020ができるまで・YMW編

まず、昨年と今年で大きく変化したことは、同じ400キロのぶどうから、昨年はおよそ330本のワインを仕込むことができたが、今年は360本のワインが出来上がり、搾汁率が大きく変わった。同じ品種のぶどうからでも、量としてこれくらいの差が出てくるのかと新鮮な驚きがあった。

しかし、もう一つ敢えて変えたところとしては、絞り方を変えたことが挙げられる。昨年は、マシンの搾汁機を使いながら、並行して、定期的にマシンを止め、足で圧をかけて踏み込み、混ぜるなどの作業をしながら、またマシンを動かして搾汁する作業を交互に繰り返した。しかし今年は、マシンの空気圧をじっくりゆっくり長い時間をかけて絞るのみ、に変更した。醸造家の岩谷さんの話では、「試してやってみていった結果、マシンで圧をかけるだけの方が雑味が出にくく、良い結果につながりやすいことが経験値として分かった」という。結果、作業は劇的に効率がよくなり、かつ、人の役割と、機械の役割を、いかに融合しながら、それでいてワインの味にどのようにつながるかを見極めていくことが求められることもよくわかった。ただ判断は常に醸造家自身が判断をしていく必要がある。研究者のようにつぶさに変化を読み取り、最適な仮説をいかに立てていくのかが必要だ。正解は、ぶどうのみが知っているのだろうな……

ぶどうは、昨年同様に山形市で栽培をしている「ぶどうと活きる」さんがつくるデラウェアを100%使わせていただいた。搾汁の当日、イエローマジックワイナリーで彼らもまた委託醸造を始めていて、偶然にも、その中で少量で仕込むワインを、マシンの搾汁機ではなく、少量向けの手でテコの原理を生かして絞る昔ながらの搾汁機を使ってやられていたので、せっかくなのでその作業にも参加させていただいた。上から一方向に圧をかけて、ある程度絞ったら、詰めていたぶどうを一度解体して、再度入れ直し、また絞り直す、その作業を何度も繰り返していく。なかなかの重労働だ。量が多かったら……と思うと、想像を絶する。ぶどうの搾汁機内での収まり方がその都度変化していくので、やればやるほど絞れる量が増えることもあって、確かに大変ではあるが、もう一回だけ絞り直そうか……と繰り返したくなる(マシンは、圧をかけてバラして、また圧をかけるという作業を自動で繰り返してくれる。ああなんて便利なのだ……)。

マシンと手絞りと、両方を同じタイミングで体験させていただけたのは非常に良い経験となった。手絞りだと、仕込める量には限界があるが、少量でやる場合は、設備投資という面では効率が良いとも言える。

「今年は、発酵がややゆっくりなので、山形に来られるタイミングは少し遅れ気味で調整してくれた方がいい」と岩谷さんから連絡をいただいた。同じ温度で管理をしていたとしても、菌の動きは完全に予定通りにはいかない。結果的に、一次発酵期間は、昨年よりも18日程度長くかけることにした。結果、昨年と同様に、デラウェアのマセラシオンカルボニック製法らしさのある、華やかでキュートな香りは残したまま、より厚みのあるボディ感があらわれた。昨年が食前酒~食中酒だとしたら、今年はしっかり食中酒になった、ように思える。

昨年、圧搾と、何も絞らない全房とをミルフィーユ状に、何層にも重ね合わせていく仕込み方をしたけれど、今年も大枠は同じだけれど、少しミルフィーユの配合を変えた。ややボディを強くしてみようかなと思い、ぶどうを潰した状態の層をすこし厚くしたのだ。結果、味にも色にもその影響はしっかり現れた。少し熟成などを楽しむこともできそうな味へと変化したように感じた。どちらが良いか、というわけではなく、毎年、1回しか仕込むことができない中で、より山形の郷土料理、芋煮にも合わせたくなるような、山形のワインを目指してやっていきたい意欲が湧いた。

毎回一次発酵を仕込むタンクには、おいしいワインができますように、と思いを込めてメッセージを残す。

昨年のワインを、もし残している方がいらっしゃったら、ぜひその違いを味わってみてほしい。もちろん昨年のワインはまた1年の熟成が加わっているのでその変化もおもしろいだろうが、その年その年の違いを楽しんでもらうのも、近しいワインをつくり続けていくことで楽しめるワインの楽しみ方と言えるだろう。ぜひゆっくりと時間の変化、年度の違い、少しずつ変わる製法の違いなどがどのように変化するか、2021年の思い出を振り返りながら、飲んでもらえると嬉しい。山形の風を感じてもらえると思う。

商品情報・販売店舗については>>こちらから