ヒスイ海岸沿いの食堂で味わう「たら汁」

取材3日目、富山市内から東へ。新潟との県境、朝日町へと向かいます。

風のない穏やかな日に突然やってくる高波、寄り回りの波、蜃気楼、千年以上も海底で眠り続けていた、埋没林と海底林。小さな体に1000個もの発光器を持ち青く光るホタルイカ。ヒスイの原石が打ち上がるヒスイ海岸。富山の海は不思議に満ちている。何より、陸から海越しに雄大な立山連峰広がる光景。海もあり山もある県は他にもあるけれど、海面に浮かび上がる様に高い山を眺められるのは、富山でしか見られない絶景。

早朝、市内を出発し時計は、ちょうど8時。朝ごはんにしましょう。

県境手前のヒスイ海岸付近、この通りに、たら汁と書かれた看板がいくつも並んでいる。どこも駐車場が広く、今では少なくなったが、いわゆるドライブイン。

厨房のガラス窓から見える、高く積まれたアルミ鍋の量が凄い。たら汁と書かれた暖簾を潜ると、壁に年季の入ったメニューが、カツ丼、やきそば、ハムエッグ、モツ煮など、その中に紛れる様に、たら汁。その他、ケースの中には、バイ貝の煮付けやポテトサラダ、焼鳥、おでん、好きなものを選んで自分で取るスタイル。

精算は、自己申告制です。たら汁を頼むと、何人分?と聞かれたので人数分頼み、他にそれぞれ、ご飯をお願いしました。プラスにハムエッグも。

待つ事数分、ベコベコに使い込まれたアルミ鍋がテーブルにどんっ。

蓋を取ると、ぶつ切りにされた鱈が、顔から尾まで丸ごと入っています。

取り分けて、ひと口。旨いっ、白味噌の優しさもジワジワ染み渡る。鱈の身も柔らかくホロリと食べやすい。昔、朝日町で鱈が沢山水上げされ、水分が多く鮮度が落ちるのが早い魚だったので、他県には出回らず、地元で消費されてきた事が、今でも食べられている理由の1つだと言われている。白子や真子の肝部分も一緒に煮込まれているのに、全く臭みが無い。1人2~3杯おかわりしてあっという間にペロリ。

ハムエッグは、あの銀皿に乗って出てきた。添えられた、ポテトサラダが妙に嬉しい。

時間と共に店内の人数も増え、近所の人達やトラック運転手、漁を終え瓶ビールと煮込みをつつく人。皆それぞれの楽しみ方で、栄食堂を利用しています。食堂の正しい姿。おいしかった。