富山湾の秘宝を届ける「愛場商店」

朝日町観光協会の上澤さんに、ご紹介したい生産者さんがいますと案内されて出会ったのが「愛場商店」さん。

ご夫婦の亮さんと千恵子さん。朝日町で獲れる海産物などを使用して、富山の鮮度と素材を感じるシンプルな商品作りを、おふたりでされています。案内されたテーブルの上には、愛場さんが朝日町の海で採れたホタルイカの沖漬けや燻製、塩辛が用意されています。一目見て、その大きさにビックリ。

ホタルイカは、漁が解禁される3月以降に群れをなして沿岸に押し寄せます。網やザルを入れたら、それだけであっという間に満杯になるほど。底引き網で、一気に獲りさる漁法では無く定置網で漁を行うため、ストレスを与えずホタルイカを傷つけにくいんです。

あ、ここでも獲りつくさない、持続的な漁法。全部じゃなくていい、自分も自然の一部だと言う考え方。愛場さんの話しは、続きます。

そのほとんどか、お腹に卵を持った雌で雄はほとんどいません。産卵期に漁獲されるため、まるまるとしていて他県と比べて大きいのが特徴です。漁場が目の前で鮮度を落とさずに加工できるのも朝日町ならでは。保存料や化学調味料を使用せずに、昆布をたっぷりと使用し沖漬けにし、マイナス60度の超低温冷凍庫で処理します。

また、入善で汲み上げている富山湾の海洋深層水に漬け込み、その後じっくりと丁寧に乾燥させ、ナラの木でホタルイカを燻製に。丸2日かけて仕上げます。

「ぜひ、肝の旨味と深みを味わってください。」

もう、期待しかありませんでした。そして、私の心の中では、密やかに、こうつぶやいておりました。どうか、どなたかお酒を持ってきてはくれませんか?ホタルイカが呑めと言っているのですよ。そんな気持ちを全力で抑えつつ、沖漬けをひと口。

うわっ、口の中が旨味の大波に飲み込まれていく。そこにいた全員がうっ旨い!と声をあげてしまいました。そして至福に包まれ、しばし余韻に浸る取材チーム。燻製は、ややレア。思わずライターで炙らせて下さいと口にしてしまいました。ここに日本酒があれば、徳利内の酒残量に合わせて、ケチケチかじる私がリアルに想像できます。

ぎゅうっと凝縮された旨味には、愛場商店さんの地元への思いと愛情を感じずにはいられませんでした。これは、沢山の人に召し上がっていただきたい。

しかし、こんなに小さなイカが蓄える旨味のチカラは凄い。ホタルイカは、まだその生態が謎な部分が多いと言われています。富山湾の秘宝。それは、酒呑みだけで無く平等に至福を分け与えてくれるのです。