オリジナルワイン2020ができるまで・東京ワイナリー編

2020年、D&DEPARTMENT初の試みとして、ワインづくりに挑戦しました。今回は、練馬区の住宅街に佇む「東京ワイナリー」にご協力いただき、ワインづくりをいちから学んできました。

東京ワイナリーの醸造家である越後屋美和さんは、元々野菜の仲卸業をされていました。その中で、東京には多くの農地や農家さんがいることを知り、もっと東京の農業を元気にしたい!という思いから、東京産の葡萄を使ったワインで東京の農産物の魅力を伝えるワイナリーを設立されました。

2020年9月下旬、越後屋さんから「葡萄が届いたので仕込みます」という連絡があり、伺ってみると、カゴの中に大きく実った葡萄が詰まっていました。

三鷹市で栽培された、巨峰から派生した「高尾」という品種。毎年収穫期になると、越後屋さんのもとに農家さんから、葡萄を引き取ってほしいと、何件も連絡が来るそうです。

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徐梗・破砕1回目
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最初の作業は「徐梗(じょこう)」といって、房を取り外し、実を潰していきます。

潰すごとに、高尾の甘い香りが醸造室に充満して、作業の途中に味見と称して、つまみ食いをしてしまいました。

機械を使えばすぐに終わるのですが、人の手でひと粒ごとに状態を確認しながら行うことで、葡萄の潰れ具合はさまざまに。地道な作業ですが、これがワインになっていくと考えただけで楽しくなり、あっという間に終わってしまいました。

最後に、桶に雑菌が入らないよう綺麗に拭きあげ「おいしくなってね」と念を込めて。

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圧搾
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1週間後に再び工房へ伺ってみると、桶の中の葡萄は発酵の作用で膨らみ、大きな泡が蓋のぎりぎりまで迫っていました。

前回は甘くてフレッシュだった香りも、少し落ち着いて、すでにアルコールを感じさせる、ワインらしい香りに。この日は、さらに果実から果汁を絞り切るため、、ワインプレス機を使いました。

東京ワイナリーでは、通常圧搾はすべて人力で行います。このプレス機は、ワイナリーを立ち上げた当初から、大事に使い続けてきたもの。

まずは越後屋さんからレクチャーを受けて、いざ実践へ。葡萄の上に木の蓋をし、さらに積み木のように木を重ね、重しを乗せます。

ひとりは、プレス機が傾かないよう抑え、もうひとりは、カチッと音が鳴るまで圧をかけていきます。最初は「カチッカチッ」っとリズミカルに動かしていましたが、それも束の間。だんだん、手だけでなく、全身の力を込めないと動かせなくなりました。

私は力みすぎたせいか、この作業が終わる頃には息切れ状態。抑えるほうも、プレス機が倒れてるとワインが溢れてしまうので、必死に、また慎重に、作業を行いました。

圧搾すればするほど、どんどん果汁は出ますが、最後まで絞り切ってしまうと渋みが強く出てしまいます。どこまで圧搾するかがワインづくりの大事なポイント。だからこそ、見極めが重要でした。

プレス機を外してみると、あんなに力を込めたのに、潰しきれていない葡萄も。ここも、最後は人の手が必要なのですね。しっかりと潰して、ここから3週間待ちます。

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オリジナルワイン試飲会
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この日は、オリジナルワインの味を決める大事な日。しばらく会えなかった「高尾」の様子が気になる3週間でしたが、桶を覗いてみると香りも味も、すっかりワインになっていました。

初めて会った時の可愛らしい印象は、まだ少しだけ残っていましたが、いつの間にか子どもが成長してしまったかのような、あまりに大きな変化に驚きました。

越後屋さんは、それぞれのワインを「この子」と呼び、まるで我が子のように大事にされています。私にも、その気持ちが浸透していました。ワインづくりは、子育てと似ているのかもしれないと(子どもを育てたことはないのですが...)感じる瞬間でした。

他県の産地とは異なり、大きな農場をまとめて持つことが難しい東京では、小さな農場で、少量多品種で葡萄が栽培されています。そんな東京らしい風景を感じられるようなワインを目指し、今回は「高尾」「デラウェア」「ナイアガラ」「山葡萄」「キャンベルアーリー」と、5種類の葡萄でつくったワインをアッサンブラージュすることに。

アッサンブラージュとは、フランス語で「寄せ集め」や「集合」という意味ですが、ワインでは「調合する」「組み立てる」という意味で使われます。この試飲は、まさに味を組み立てる大事な作業です。

初めは、5種類を同量ずつ試したところ、味はおいしくとも、それぞれの個性が主張し合って、うまくまとまりません。特に山葡萄は味わいが濃く、その個性的な渋みをどう活かすべきか、調整する必要がありました。

他の種類も加えてみたり、試作を繰り返してみましたが、最終的に辿り着いたのは、最初に試した5種類のワイン。味が個性的なもの、香りの主張が強いものなど、バランスを考えながら、ようやくオリジナルワインの味を決定しました。まだ外が明るいうちに始めた試飲も、熱が入りすぎて、終わった頃にはすっかり陽が沈んでいました。

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アッサンブラージュ
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12月上旬、約1ヶ月寝かせたワインを、いよいよアッサンブラージュしていきます。

まずは、桶にそれぞれのワインを入れていきますが、これもただ入れればいい、というわけではありません。それぞれの瓶底に澱(おり)が沈んでいるため、澱がワインに入らないよう、慎重かつゆっくりと入れていきます。

瓶に光を当ててみると、澱の様子がわかります。ワインを余すことなく使いたいところですが、微妙な場所に澱が溜まってしまうことも。あまり多く出そうな場合は、慌てて越後屋さんに確認を取りながら、作業を終えました。

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瓶詰め
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オリジナルワイン完成まで、あと少し。瓶詰めは高低差を利用して、泡が立たないよう静かに、ワインが自然に流れるように入れます。

東京ワイナリーでは、すべて手作業でコルク打ちを行います。自分の手で打つと、いよいよ完成するワインへの愛着が強まっていきました。

瓶詰めしたオリジナルワインをいただいてみると、最初はバラバラと、それぞれの葡萄の顔が見えていたのに比べ、まとまりが出てきました。生食葡萄の華やかさと果実味、バランス良く酸味が残り、味わいは「葡萄のミックスジュース」のよう。ごくごくと飲めてしまう、ちょっと危険なワインが完成しました。