地域とともに生きる味噌蔵「名刀味噌」

太陽のちからと温暖な気候、災害の少ない土地が育み、続いてきた歴史や文化、人々と触れ合い、この度トラベル誌発刊記念28品目となる岡山定食ができました。

今回の定食の味噌汁に使用しているのは名刀味噌の米味噌。食堂チームは瀬戸内市長船町にある名刀味噌にて、醸造場見学をさせていただきました。

案内していただいたのは高原隆平さん(弟)、高原陽平さん(兄)ご兄弟。

名刀味噌は、1945年創業の元糀屋(屋号:こうじ高原)。初代、高原喜久郎さんの代にはご近所から持ち込みのお米を糀に加工し、自宅で味噌や醤油作りに使ってもらう、という加工業でした。創業当時29歳だった喜久郎さんは目の病を患っており、将来的に全盲になってしまう病気だったそう。そこで、目が見えなくなっても仕事を続けれるよう、糀室には様々な工夫が施されていました。

入り口横にどっしりと構える大きな蒸し器。糀の原料となる米・小麦・大豆を蒸すために使用するのですが、木蓋をあけると周りにコンクリートが流し込まれていました。

これは糀を蒸す際、冬場だと蒸し器内と外との寒暖差で結露してしまうため、断熱材としての役割を果たすための工夫だそうです。
当時お金がない中でやりくりしながら、近所の板金屋さんに手伝ってもらって作ったこの蒸し器は他では見られません。
種糀を作る糀室では、大きなステンレスの板が目に入ります。目が見えなくなっても一つの糀板で同じような作業ができるようにと、糀板を一枚の大きい板にして、全ての作業を手の届く範囲で行えるようにしていました。

蒸し器も糀室も全て喜久郎さん考案。その後、45歳で全盲となってしまいましたが、喜久郎さんの残した糀室は現在も現役です。
一枚の大きな板になっていることで菌の繁殖を広範囲で行うことができますが、その代わり難しいのが温度と湿度の管理。一枚板の一箇所で失敗してしまうと、その板全てがダメになってしまうため、今でも糀室での作業には一番手間をかけ、時間をかけて行うそう。

「良い糀を作ることが名刀味噌の味の見せ所。伝統的ではないけれども、僕らの味はこの糀作りを大切にしているから出せる。」と話す高原さん兄弟。
初代から添加物を使わず原材料そのものの食品作りにこだわり、地域の米・麦・大豆を使うことに重点を置いて活動しています。

「伝統を受け継いでいくだけでなく、ブラッシュアップしていくことが僕らの役割だと思っています」

現在は岡山在来種の大豆を自分たちで作ったり、味噌や醤油の元となったと言われる”ひしお”を備前焼作家木村肇さんのフードコンテナで作れるキットの販売を行うなど、新しい活動にも積極的に取り組んでいます。

味噌蔵としての歴史は浅くとも、自分たちの蔵の大事なものを守り、地元を大切にし、地域とともに生きている素敵な味噌蔵との出会いでした。

「岡山定食」

※下から、時計回りに

○備前ばら寿司
酢を効かせすぎない酢飯に、酢締めしたサワラや岡山で獲れる食材をふんだんに使った行事飯

○イシモチ
揚げたイシモチを甘酢で和える。骨ごと食べれる揚げ魚

○ガラエビ出汁と茄子の煮浸し
ガラエビは年中取れて、良い出汁が出る。

○大手まんじゅうの蒸し直し
薄皮の酒饅頭。無添加で、そのままでも美味しいが、蒸し直すと尚美味。

○黄ニラの味噌汁
ニラよりもあっさりとした味わいが特徴の「黄ニラ」をいりこ出汁と「名刀味噌」の米味噌で。

〈店舗情報〉
d47食堂 Facebook / Instagram

住所 渋谷区渋谷2丁目21-1 ヒカリエ8F 【MAP
電話 03-6427-2303 定休水曜
店内利用・テイクアウト 12:00-20:00(L.O 19:30)

※営業時間に変更がある場合はSNSにて最新情報をお届けしておりますので、ご来店前にご確認ください。

※d47食堂では、お客様に安心してお過ごし頂けるよう、以下のような対策を取っております。
○間仕切りのない開放的な空間で換気を徹底
○席間の十分な確保
○入口にアルコール消毒を設置
○スタッフのマスク着用