“その土地らしさ”の魅力を辿る、茨城県央を味わう食の旅に行ってきました。〈 つくり手編 〉

私たちD&DEPARTMENTは、長くつづいていることやものの価値を見出し、新しい見方でその価値を伝え、未来につなげる活動を行なっています。今回は、いばらき県央地域観光協議会からご依頼いただき、定食開発や生産者を訪ねるツアーを開催し、「食」をテーマに茨城県央の魅力を発信するとともに、茨城県央らしさについて考えました。

d47食堂の料理人が「茨城県央定食」を開発するために巡った旅を追体験する、1日限りの日帰りスペシャルツアーを経て、私たちが体感した茨城県央らしさを、旅の記録とともにご紹介します。

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芋助で美味しいほしいもをいただき、ほくほくしながら向かったのは、那珂市内を車で約15分ほど移動したところにある「木内酒造 額田醸造所」です。フクロウのロゴが目印の「常陸野ネストビール」の醸造士 宮田さんを訪ね、知っているようで知らないビールの製法や、木内酒造ならではの地域の風土を活かしたものづくりについてお話を伺いました。

風土を活かし、つくり手がつなぐ未来
木内酒造は、久慈川と那珂川に挟まれ良質な水が湧く那珂市鴻巣で、190年以上に渡り酒造りを続けてきました。酒蔵では日本酒のほか焼酎やワイン、リキュールなどを醸造し、併設する直売所や食事処でお酒の楽しみ方を身近に伝えています。

1996年の誕生以来、日本らしい、茨城らしいビールを目指してつくられる常陸野ネストビールは、現在、世界40カ国以上で親しまれ、2008年に設立された額田醸造所で、醸造からパッケージングまで全ての工程を経て各地に届けられます。

茨城県はかつて日本有数のビール麦産地でしたが、その後、蕎麦やほしいもの生産が盛んになり衰退。木内酒造は、日本で開発されたビール麦「金子ゴールデン」に着目し、地元の農家と協力して栽培を復活。醸造所の近くでホップの自社栽培に取り組むなど、日本らしい、茨城らしいビールづくりへの挑戦を続けています。その活動は、耕作放棄地の活用や、裏作での蕎麦の栽培・活用など、地域の活性化にもつながっています。

麦芽の殻は近隣の農家へ届け、ビールづくりの過程で出るアルコール分の残った原料はビールスピリッツに再加工する。環境負荷の軽減と資源の有効活用にもこだわります。「目指すのは、地元や日本の風景が見えるビールづくり」と宮田さん。ビールの美味しさだけでなく、その土地らしさにこだわり、土地の歴史を受け継ぎながら、地域の健やかな循環をつくりだす。茨城県央の食の豊かさの背景には、意思のあるつくり手の存在がありました。
>> 木内酒造 本店|茨城県那珂市鴻巣1257

ツアーの締めくくりは、木内酒造の酒蔵の一部を解放し、ビール麦の裏作で獲れた蕎麦を提供する「蔵+蕎麦 な嘉屋」へ。この日巡った生産者のみなさんとの出会いを振り返り、茨城県央の食の豊かさにある背景に思いを馳せ、地元生産者の方々と一緒に、常陸野の蕎麦とお酒、旬の食材を堪能しました。

今回のツアーは、茨城県央の食を通して、その土地らしさにつながる背景をひとつひとつみなさんと一緒に学び、味わう、盛りだくさんの内容となりました。茨城県央の豊かさの背景には、その土地の自然の厳しさを受け入れ、その恩恵を食材やものづくりに活かす生産者や地域の人々の、長い年月をかけた試行錯誤の積み重ねがあり、それらによって“らしさ”がつくりあげられていることを、みなさんに感じていただけたように思います。

本ツアーに参加された方から「茨城県は魅力がないのではなく、魅力がまだまだ知られていないだけ」という感想をいただきました。外に向けた発信はもちろん、その土地に暮らす人々が“らしさ”に気づき、その魅力を高め、伝えていくことが必要だと、みなさんと一緒に茨城県央を巡り、私たちもまた、その土地らしさの見出し方、伝え方について考えました。

d design travel スペシャルツアーでは、D&DEPARTMENTならではの視点で見出したその土地らしさを、一般的なツアーや個人旅行では体験できない学びや体験、交流を通して、みなさんに伝えていけたらと思います。今後のツアー開催情報は、ロングライフデザインの会の会員のみなさんにいち早くお届けし、D&DEPARTMENTウェブサイトでお知らせします。