鉄砲とともに伝わった種子鋏〈前編〉

現在開催中のNIPPON VISION MARKET「鹿児島 種子島の鋏と庖丁」の企画へ向け、1泊2日で種子島へ行ってきました。1日目と2日目を前編、後編に分けてお届けいたします。

〈前編/1日目〉高速船トッピーに乗り、鹿児島市から約1時間半で種子島へ到着。港に着き、目に飛び込んできたのは種子島のシンボルでもあるロケット。今回は、残念ながら時間の都合で宇宙センターは断念しました。到着後すぐに種子鋏探訪へ!

まずは「梅木本種子鋏製作所」へ向かいました。つくり手の梅木昌二さんは種子島で1000年以上の歴史をもつ牧瀬種子鋏製作所で修行をし、鋏作りのすべての工程を手作業で行っています。工房の設備は先代から引き継いだものを使い続け、道具もほとんどが手作り。材料を入れている小さな缶や、工程ごとの作業をしやすくするために使う木製のお盆もかなりの年季が入っています。師匠と一緒にものづくり励んでいた頃から使っているのだろうと先代の気配や思いのようなものも感じました。

昭和初期までは数多くの鍛冶屋が早朝から槌の音を響かせていたそうです。それは時代ともに消え去り、現在、刀鍛治からの伝統技法である「つけ鋼製法」で1本1本手づくりの鋏を製作するのは梅木本種子鋏製作所の1件のみ。

刃は柔らかい鉄に鋼をのせてつくります。昔からの刀をつくる製法とまったく同じです。梅木さんは1日に3本から多い時で10本鋏をつくります。想像以上に大変な作業だということがわかり、それだけ少量生産なのも納得です。ひとつひとつ納得がいくよう、丁寧に作るためにはその数なのだそうです。鋏の刃部分は「ねり」といわれる種子鋏特有の反りがあり、切るときに刃と刃が擦れて自然に研がれていきます。その為、切れ味を損なわず、長く使い続けることができる。実際にもって動かしてみるだけで、「シャキ、シャキ」という独特の感触と歯切れのよい音が実感できます。

その後、種子鋏のルーツを探るため西之表市立種子島開発総合センター「鉄砲館」へ! ここでは国内外の鉄砲の展示と種子島の自然や風土、歴史について紹介しています。


種子島では古くから良質な砂鉄が豊富に取れたため、日本中から刀鍛治が島へ移住しました。刀や鉄砲を作る傍ら鋏を作っていましたが、廃刀令後は鋏を本業とするようになり、やがて島の伝統産業となります。

宿泊は「あずまや」。建物の中はできる限り種子島産のものでつくられています。壁は種子島の土、キッチンのタイルは種子島焼、庭の植物は種子島固有種でひとつひとつに植物名が書かれていました。梅木本種子鋏製作所の梅木さんの作品は鋏や庖丁以外にもこんなところに!ドアの取っ手やランプシェード、カーテンレールなど。


そしてもう一ヵ所、種子鋏の製作を永く続けてきた場所があります。2日目に訪問した「池浪刃物製作所」です。〈後編〉にてご紹介いたしますので、ぜひお楽しみに!

◎8月29日(木)から9月24日(火)までの27日間、鹿児島店にてNIPPON VISION MARKET 「鹿児島 種子島の鋏と庖丁」を開催しております。日常の道具として永く大切に付き合っていきたい鋏と庖丁です。実際に手に取って頂けますので、ぜひ手に馴染むものを見つけてください。