「つりや」氷見の魚問屋が手がける保存食

富山店でもお取り扱いのある「つりや」の海の保存食。こちらを製造している「釣屋魚問屋」さんの工場を見学させていただきました。
氷見駅から車で約5分、富山市からだと約50分。富山湾の西部沿岸に位置する、氷見漁港で江戸時代から150年以上続く魚問屋です。


まず、富山湾について簡単に記述します。富山湾の大部分は水深300mに及び、深いところでは1000mを超えるという、沿岸には浅い海底がほとんど無く非常に険しい谷になっています。北アルプスの3000m級の立山連峰から見ると、高低差およそ4000mの急な渓谷になり、世界的に見ても珍しい地形だそうです。水深300m以下では豊富な海洋深層水により冷たい海に住む魚が生息しており、それより浅い海には暖流である対馬海流が流れ込み、ブリなど温暖なところに棲む魚も同時に生活しています。また、急峻な地形には多くの河川があり、山からのミネラルを含んだ水が湾内に栄養を送り込むため、多くの魚類が繁殖できる良い条件が揃っているのです。

中でも傾斜がゆるやかな大陸棚が5km沖合まで続く氷見漁港では、定置網漁法が発達しました。歴史を遡ると安土桃山時代から現代まで約400年以上続いています。特に春のイワシ、夏のマグロ、冬のブリが名産品としてよく知られています。
それらの魚が獲れる時期は、それはもう大忙しに、海から港へ、港から市場へ、そして貯蔵するための知恵、保存食の発達へと繋がっていきます。


魚の中でも特に鮮度を保つのが難しいイワシ。
カタクチイワシはイワシの中でも小柄な魚。干してジャコ、丸干しは目刺し、煮て煮干し、と伝統的な利用法を数えてもきりがないですが、アンチョビもその一つです。日本語に訳すと塩蔵品。塩漬けにして熟成及び発酵させて、オリーブオイルなど油分を加えて保存します。(よく似たものにオイルサーディンがありますが、こちらは加熱したもの。アンチョビは非加熱です。)


漬け込んだカタクチイワシは、梅雨を含んだ半年以上、常温で保管します。必ず梅雨の時期を含むことが大事で、カタクチイワシの獲れる時期が初夏だとすると、先人の知恵には頭が上がりません。今回あげた樽は2014年に漬けた2年もののアンチョビですが、漬け始めは白っぽい色をしていた米ぬかは茶色くなり、香りは(みなさまの想像に近いと思われる)発酵したぬかの匂い。掘り起こすと酵母のもったりとした甘みを含んだ香りが漂います。しめ縄と塩水を上に被せ、おもしをのせてじっくりと、空調に頼らず木造の小屋で熟成させていきます。


身から背びれと背骨を取り、まさに、あげたて。ぎゅっと引き締まった身に、まだ尖った塩味。弾力のある皮は、噛むほどに旨みがじゅわっと滲み出ます。さっきまで漂っていた味噌に似た甘い香りとは一転、口の奥がきゅっと締め付けられるような感覚。これからもう少し熟成してオイルに漬けて、あの「つりや」の麹アンチョビになります。


同じ日に、漁港も少し見せていただきました。
漁港の朝は、とてもじゃないけど近づけない、海の男の戦場、、ということで16時ごろの様子がこちらです。


参考にいただいた、普段の様子がこちら。

前シーズンは、氷見の代名詞とも言える寒ブリが不漁だと、全国ニュースでも話題になっていました。今年はイワシの漁獲量も減っているそうで、世界的に見る環境の変化を意識せずにはいられません。自然に寄り添った産業ですから、また時期を変えてレポートしていきたいと思います。

d SCHOOL わかりやすい保存食 -釣屋魚問屋 つりやに学ぶアンチョビの作り方-
2016年7月9日(土)18:00~20:00開催。
①カタクチイワシをさばく②塩漬けしたカタクチイワシを漬け込んで保存する?を学びます。カタクチイワシの小さな身は手でさばくことができ、コツさえつかめば簡単にできますが、なかなか教わる機会も触れる機会もありません。カタクチイワシを数日塩漬けし、さらに麹や米ぬかなどに漬けて約半年熟成させる。当日はアンチョンビを使った簡単なお料理もご紹介いたします。じっくりと時間をかけて作るアンチョンビから、魚の保存食について学びましょう。