支援者とのキックオフ懇親会を開催しました

D&DEPARTMENTでは、 「ロングライフデザイン活動」を支援して頂くために、2019年のサポートメンバーをクラウドファンディングにて募り、目標額の146%、6,865,000円をみなさまからご支援頂きました。(クラウドファンディングについてはこちらから

支援者の皆様と、直接お会いできる機会があればと思い、一部のリターンに設けておりました「キックオフ懇親会参加」を、1月27日にd47食堂にて開催しました。

当日は約80名の方がご参加いただきました。まずはナガオカより「なぜクラウドファンディングをしたのか」、「『d news』とは何か」、「今後どのようなことを考えているのか」などをスライドトークにて説明。その後、d47食堂での懇親会となりました。

当日ご参加いただけなかった方々をはじめ、これからのD&DEPARTMENTの活動に興味を持ってくださっている皆様に、スライドトークの内容をお伝えします。

D&DEPARTMENT クラウドファンディング 2019
キックオフ イベントレポート

—なぜクラウドファンディングをしたのか、感じたこととは?
新しい路面店の時代へ、その仲間づくり

ナガオカ:D&DEPARTMENTの大阪店と福岡店を閉めました。まず始めに閉めるという話ですみません(笑)。なぜ閉めたかと言うと、私たちが取り扱っているようなロングセラー商品は流行で商売することができません。老舗店もそうですが、自分たちの商売以外で、その土地のためになるような活動もされていますよね。そのようなお店は大量に売ることをしないので、誰かの応援がなければ成り立たりません。私たちD&DEPARTMENTがオーケストラを法人のパトロネージュとして応援していることも同じで、その関係性から学んできたことが沢山あります。


ナガオカ:
WEBショップなどによって、どこでも手に入るものを、誰かわからない人に向けて、高い家賃を払いながら売り続けることは、ほぼ不可能になっています。これまでの大阪店や福岡店のように広いスペースで、これまで通りに路面店をやっていくことが難しくなりました。これは決して悲しい話ではなくて、路面店の新しい時代を感じ、dの路面店も変えようと思いました。


ナガオカ:
私たちがWEBストアを始めた当時、家具なんて誰も買わないと思っていましたが、今では家具がもっとも売れています。メルカリなどの個人売買も盛んになり、路面店で不確定多数に向け、長い営業時間で、ただ物を売るだけでは成り立たなくなっています。


ナガオカ:
そこで、仲間と一緒にお店をつくっていこうと考えています。大量に売るのではなくて、健やかなもの売っていく。流行でないものを売り続けるには、「ロングライフデザインマーケット」を緩やかに育てていく必要があります。


ナガオカ:
ロングライフデザインのマーケットは仲間や応援がないと、あっという間に無くなってしまう。そんな時、僕らの仲間は一体どんな人なのか、誰なのかをずっと考えながら発信してきましたが、明確なコミュニケーションを取ることができなかった。そこで、クラウドファンディングの仕組みや、きっかけを使って仲間をつくろうと、「Ready for」を使って今回のクラウドファンディングとなりました。私たちは今後、毎年1つの「ロングライフデザイン活動」を掲げ、それに賛同してくださる方々と一緒に活動をしていこうと考えています。初めての今年のテーマは雑誌『d news』の創刊です。

—『d news』とは?
ロングライフデザインマーケットを応援し、育てる

ナガオカ:
3年くらい前から頭の中に『d news』の構想があって、それは「みんなでつくる何か」と言うプロジェクトとしての考えでした。なのでスタッフから「d newsって何ですか?」と聞かれても「俺だって知らないよ!」と言いたくなるくらい(笑)。 「みんなでつくる何か」が、どのようなものだった良いのか、私たちと同じようにロングライフデザインを発信する店はどうしたら成立するのか…それを考えて、辿りついたのが雑誌『d news』です。「ロングライフデザインマーケット」を伝えていく。しかも、それが大勢に向けてではなくて、関心のある人に直接手渡しするような存在として考えています。


ナガオカ:
『d』という小冊子を創業当時から発刊していました。表紙にも『「ロングライフデザイン」を考えて生活しよう』と書いてある通り、コンセプトはかわっていません。当時から発信するメディアが必要だと考えていたのですが、全然売れなかったんです(笑)。 そこで、「人参の嫌いな子には、みじん切りにしてハンバーグだ!」という発想から生まれたのが、現在発刊しているトラベルガイドブック『d design travel』です。観光・旅という大きな需要の中で「ロングライフデザイン」の視点を楽しく伝えていく。観光地として人気の県もそうでない県も、47都道府県平等に出していきます。


黒江(まなぶ部ディレクター):
補足となりますが、『d design travel』は今年から年2冊の発行になります。その間に『d news』を季刊誌として発行していく予定です。クラウドファンディングのリターンで「トラベル誌 3号」がセットになっている方は、お送りする期間が1年半と少し長くなってしまいますが、ご了承いただければと思います。

ナガオカ:そして、なぜ『d news』を発刊するかですが、『d design travel』編集部は約2ヶ月ほど、現地に住むようにして取材することで濃厚な関係性をつくります。ですが、次の号の取材が始まると、どうしても関係性が薄れてしまい、非常に勿体無いと感じていました。発刊後も継続的に関係性を持ちたいという思いから『d news』でこれまで取材させてもらった方々を、後追い取材をして紹介したいと考えています。先ほど話した老舗店のように、その土地らしさに繋がる活動をしながら商売をしている方々は、応援されないと簡単に潰れてしまいます。ロングライフデザインを応援するマーケットを育てていくことも非常に重要です。


ナガオカ:
これまでフリーのタブロイド『d news』もつくりました。配布方法は平積みせず、スタッフが必ず手渡しする媒体として、1年ほど実験したものです。


ナガオカ:
そして、これが『d news』のイメージです。


ナガオカ:
不特定多数の多くの誰かに、とにかく発信することが重要と思われていましたが、今は「誰か」という時代ではなくなってきました。相手が見える状態にしていかないといけません。そのためのクラウドファンディングであり、今回のように繋がることができました。皆さんのおかげでここまで来ることができました。


ナガオカ:
内容は例えば、〇〇号で紹介したホテルが今どうなっているか、キーマンの新しい活動などを取材し、写真とともに発信していきます。


ナガオカ:
文字ぎっしりのページは10Pほどにしようかと。文字がびっしりしている雑誌も良いですが、写真と長めのキャプションで伝えていこうと思っています。


ナガオカ:
『d news』は広告ページを設定していません。あくまでも、ロングライフデザインに共感する企業さんとつくる、記事広告として参加してもらおうと考えています。「広告ページを買う」のではなく、「一緒につくりこむ」ことを前提で参加してもらえたらと思っています。


ナガオカ:
すでに興味を持っていただいている企業さんもお声がけいただいていますが、全てが手探り状態。まず1号目は今回のご支援がなければ、つくり始めることができませんでした。本当にありがとうございます。


ナガオカ:
なので、例えば「地元のこんなロングライフ企業があるよ!」など情報も教えてください。

黒江:ここで、クラウドファンディングの中にもあった「研究員」についてですが、ナガオカの話にもあったように、「ロングライフデザイン」を私たちに教えてくれたり、一緒に探したり、企業の方は雑誌づくりに参加していただいたり、時には取材に行ってもらえるような関係性になればと思っています。「で、研究員として何処に出勤すればいい?」という連絡をもらうこともあり、表現が分かりにくく、申し訳ありませんでした。


ナガオカ:
ここで少し、私たちのロングライフデザインに関する活動の報告もさせていただきます。これは「アートコーヒー」のブランディングです。80年以上の歴史がある、今でいうベーカリーコーヒーですが、私たちのロングライフデザインの活動を知っていただいたことで、ブランディングのお声がけいただきました。


ナガオカ:
「養命酒」のパッケージも。左が従来のパッケージで、右が新しくデザインしたパッケージです。2、30年周期で少しずつパッケージを変えている養命酒さん。半年から1年かけてこの「赤」を変えました。

—この先にどんな未来を見ているか
その土地らしさの継続的な応援


ナガオカ:
「その土地らしさ」を伝えている方々を継続的に応援していきたいです。先ほどの老舗店の話でもありますが、「売りたい商品」を売っているのであって、「売れる商品」を売っている訳ではありません。例えば伝統工芸の雑貨化によって、新幹線の中でも買えたりするなど、便利なようで危機的な状況です。 よく例にする話で、お祭りの「よさこい」があります。ある地域だけのお祭りだったものが各地でイベント化され、短期的な盛り上がりになっていることも。そんなことだったら、元々あったお祭りをしっかりと盛り上げ、続けていくことが必要なのではと思います。


ナガオカ:
そして私たちのお店も、5つの体験(産業/季節/仲間/修理/旅)を商品と一緒に販売する場所にしようと思います。

1. その商品の背後にある産業を学ぶ 

商品をきちんと説明して売る時代は終わりました。「その土地らしさ」が続いていくためには、それを取り巻く産業との関係性も学ぶことが必要です。

2. 季節と共に楽しむ
食材や商品を季節と共に楽しむことで、文化や成り立ちを知ることにも繋がります。健やかな暮らしを楽しむことも、「らしさ」が続いていくことになるのでは。

3. 仲間と交流する
一緒につかったり、味わったり、そのモノを通して繋がる仲間、コミュニティがロングライフデザインには必要です。生産者と生活者の交流も。

4. 手入れ・修理をする
長く使うために必要な手入れや修理を一緒に学んだり、店舗で受け付けます。

5. その商品が生まれた場所を旅する
実際に生産現場やその周辺を訪れ、人と出会い、そのものが生まれた気候風土・歴史などを肌で感じる旅もセットで提案していきます。
これを1つ1つの商品に埋め込んでいこうと考えています。


ナガオカ:
もう一つ、新しく準備しているお話を。泊まれるD&Dを準備しています。左が今までの「d」ロゴ、右はその宿泊型のdに使っていく予定の白抜きの「d」ロゴです。皆さんとコンテンツを詰め込んでいくイメージで白抜きになっています。


ナガオカ:
想像してみてください。これが47都道府県にあるとします。例えば包丁研ぎの職人が来て、泊まりながら包丁研ぎの勉強会や受付をしてくれる。三線の演奏家が地元の音楽文化を学びながらライブ、料理人が地元食材を使ったメニューを提供するなど…中身が空っぽな「d」を用意することで、みんなでコンテンツをつくっていく。現在、韓国 チェジュと中国 黄山で準備しています。この泊まれるdの進捗なども『d news』で取り上げていきます。


ナガオカ:
それは、アーカイブをして、その土地らしい物産をつくることにも繋がってきます。これはネタですが、自宅のある静岡県富士宮市の市役所玄関にあるこの場所。ここが大好きで、こういう場所は子供の頃はバカにしていましたが、今見るとすごくいい。この土地に、こんなにたくさんのモノづくりがあるのかと気づきます。私たちもお店などにアーカイブの場所を持ち、その土地に根付いた新しい物産が生まれる場所になればと思います。


ナガオカ:
そして、今年のキックオフでこんなことを言うのもですが…2020年にD&DEPARTMENTR OSAKAを復活させたいです!今までお話したような宿泊型のパターンで考えています。

銀行からお金を貸してもらうのではなく、今回のように出資してくださった方々と共有していければと思っています。引き続きご協力をよろしくお願いします。

会場からの質問
—「d newsの配布方法等で決まっていることがあれば教えてください」


ナガオカ:
だいたい1000人くらいの会員をつくり、誰に届くか分かっている状態にできればと思っています。まず1年目はその1000人の会員づくりを行っていくために、これまでも関係のある書店などでプロモーションは必要かもしれません。

—「鹿児島から来ました! 研究員として具体的に何ができますか?」

黒江:まずは情報交換をできればと思っています。WEBサロンはフェイスブックを使った交流の場として考えていますが、一方通行のやりとりにならないことが重要だと思っています。WEBサロンのご案内は対象の方に別途差し上げます。そこで「ロングライフデザイン」に関する活動を共有したり、情報を募集したり、意見を集めたりするなどができればと思います。 また、私たちの展覧会や企画の際に、現地取材に協力してもらえるところまで、進められたらと思っています。

ナガオカ:もしもd店舗が近くにあれば、是非そのお店と関係性を持ってもらいたいです。あとは、お店のない土地の情報収集がやはり大変です。そのお手伝いなどもしてもらえたら嬉しいです。手伝ってもらいたいことは沢山あるのですが…(笑)。 いつかは皆さんとリサーチしてミュージアムで発表するなどできたらいいなと思っています。

—「現在、ソウルや中国に店舗がありますが、海外展開の意図は?」

ナガオカ:まず、私たちはなるべく直営店をしたくないと考えています。それは、このロングライフデザインの考えを持った、その土地の企業さんを応援したいからです。海外店舗も、全てがそのような企業が共感してくれて、声をかけてもらって実現しています。基本的に国内外問わず、考えは一緒です。

—「モチベーションは何ですか?」

ナガオカ:その土地らしさを守りたい、ということです。商売抜きに何か活動している方の、その土地に対する愛情が本当にすごいです。それを応援したいということに尽きます。また、東京でやるべきこととして、東京のメディア性を生かして、d47 MUSEUMのようなお金のかかることを私設ミュージアムとしてやっていることも、地元に根付いている方々を応援したいという思いからです。そのような応援をしていかないと、どこに行っても同じ風景になってしまうと思います。

この質問でスライドトークを終え、d47食堂での懇親会となりました。
このような機会をいただき、ナガオカがトークで話していたように「仲間づくり」の始まりを感じています。まずは、今回のクラウドファンディングにご参加いただいた皆様と一緒に、少しずつですが実際に進めさせていただきながら、どうやってその「仲間」の輪を広げていけるかを、考えていければと思います。

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。リターンなどに関しまして、引き続きReady Forのメッセージ機能を使ってご連絡して参りますので、お知らせメールが届いた際には、内容のチェックをお願いいたします。

また、WEB掲載を含むコースをお選びいただいた方々のお名前は下記のページに掲載しております。(ご希望された方のみ)ご支援いただきました皆様、本当にありがとうございました。また『d news』などの進捗をご報告させていただきます。
(サポートメンバーのご紹介ページはこちら

D&DEPARTMENT
まなぶ部ディレクター 黒江美穂