参加者の声を通して見つけた「渋谷らしさ」とは。

d design travel編集部と、23名の有志参加者で作り上げた『d design travel WORKSHOP SHIBUYA』。制作に参加した23名の方々は、10代から50代までと年齢層も幅広く、学生・デザイナー・広報・ディベロッパー・事務職など、職業もさまざま。それぞれの年代によって「渋谷」という街との関わり方、魅力の捉え方が異なり「渋谷らしさ」の表現にも多様性が表れていました。今回は参加してくださった方の中から、ワークショップ号を通して見い出した「渋谷らしさ」について、伺いました。

まずは、ホテルチームで「MUSTARD?HOTEL SHIBUYA」を取材し、執筆してくれた阿部初音さん。普段はグラフィックデザイナーとして働いています。仕事柄、広報サイトの運営に携わり、取材やライティングなども業務の一環として携わっていたことから、編集の一連の流れを体験したいと、今回のワークショップに参加してくださいました。

「ホテルでいえば、地方はその土地の郷土料理を提供したり、その土地らしい建築があったり、その土地ならではの景色が眺められる場所を探すことで、その土地らしいホテルを選出できるかもしれませんが、渋谷はまた別ですよね。都会の中にあって、渋谷らしいホテルの捉え方が難しかった」と話します。

そんな中、阿部さんが導き出した答えが「その街に集まる人」に注目すること。「取材を通して、MUSTARD?HOTEL SHIBUYAは、コロナ前は、宿泊する方々に外国人観光客が多く、彼らは観光スポットを転々と訪れる観光の仕方ではなく、街の魅力を面で捉え、土地に暮らすようにさまざまなエリアを周遊すると知りました。これまで、ホテルは駅近にあることが良い条件だと思っていましたが、MUSTARD HOTEL SHIBUYAは、渋谷・恵比寿・代官山にアクセスの良い場所にあり、街を手軽に回遊できるようエアスクーターを貸し出ししたり、地域の住民の方の集う場所としての機能を持っていたり……と、まさに渋谷の魅力を体感できる場所だと思いました」。

また「テーマは、観光・レストラン・ショップ・カフェ・ホテル・キーマンとさまざまですが、その場所に集まる人、関わる人に注目すると、その場の面白みや魅力が見い出せた」と話し、今後の仕事でも、その経験を活かしたいと話してくれました。
阿部さんが最終的に提出してくれた「渋谷らしさ」は「さまざまな年代、国籍、歴史が共存する街」。一連のワークショップを経た阿部さんらしい言葉に納得です。

次にご紹介するのは、設計や都市デザインなどの仕事に携わる若狭健さん。渋谷や代官山にある会社での勤務経験もあり、渋谷はとても身近な存在だったそう。今回のワークショップには、魅力を伝える力を磨きたいとの思いで参加してくださいました。

若狭さんが取材を担当したのは、「東急ハンズ 渋谷店」。ショップチームの中でもリーダー的存在感を放ち、コーディネイト側から見ても、安心して任せられるような俯瞰したものの見方をされる方でした。
「ワークショップで大変だったと思うことはそんなになかった……と話しつつ、やはり渋谷という街のデザインを見い出すのに苦労した」と話します。

「取材先の東急ハンズ渋谷は、自分自身も大好きで何度も通った場所。その思いが取材先の広報担当者に伝わったのか、僕以上のハンズ愛に溢れた返答で、盛り上がった取材となりました」と話してくれました。それだけに、一番難しかったのが、限られた文字数の中で「魅力を伝える原稿にまとめ上げること」だったとか。

3回目のワークショップでは、掲載場所の渋谷らしさや魅力を伝える、3つのポイントをまとめ上げるのに、ほかのカテゴリの方々と意見を交わしながら、俯瞰の目を養い、順調に原稿を制作できたようです。

新旧の入れ替わりが激しい渋谷で、若狭さんが最終的に見い出した渋谷らしさは「新しく、変化し続ける勢いが、昼も夜もある街」。

最後にご紹介するのは、ピープルチームで「のんべい横丁」の広報・「会津」の店主をしている御厨浩一郎さんを紹介してくださった、本間順子さん。D&DEPARTMENTの活動や、ロングライフデザインの考え方に共感し、参加を決めてくださいました。

「一番大変だったことは、自分達が行きたい場所・紹介したい場所と、『d design travel』ならではのロングライフデザインという視点で選ぶ場所のギャップだった」と言います。特にピープルチームはロケハンで直接キーマンに会いに行くことが難しい場合もあり、チーム内で何度も話し合いをしながら候補先を選んだそうです。

「取材を通して『会津』に訪れるのと同時に、御厨さんの昼間の仕事の様子も拝見させていただきました。渋谷で70年以上続く横丁文化として『のんべい横丁』の文化を守る活動のほか、昼間はデジタルを駆使し空間演出に携わる御厨さんの活動を見たとき『温故知新』という言葉通りだなと思った」そう。その両軸のバランスを保ちながら、渋谷に根付く「横丁文化」を守り続けている姿に感動を覚えたと言います。

取材やロケハンだけでなく、プライベートでも「会津」に何度も足を運び、時にコーディネイターの私も誘っていただきながら、御厨さんが抱く渋谷への思いを聞き、カウンター越しにつながる人と人の関わりを体験し、その場所の魅力を共有する。そんな本間さんの取材の方法が、『d design travel』の編集の考え方に沿っていて、取材時だけでない関係性作りや、その経験を通して表現される言葉の一つ一つに、重みを感じた紹介でした。

「渋谷には、さまざまな人がいるけれど、根本に熱い気持ちを抱いている人も多い。だから渋谷は、そこに訪れる人にとって憧れの場所となる」と話し、本間さんが考える渋谷らしさについて「夢を持ち、自分らしさを抱く街」と答えてくれました。

『d design travel WORKSHOP SHIBUYA』では、24の渋谷らしさを感じるスポットやキーマンをご紹介しています。一つ一つは、様々な背景をもつ参加者が、自らの経験や、取材を通して得た感動の体験をもとに紹介しています。

編集業務という、いつもとは違う体験に身を置きつつ、さらに「渋谷らしいこと」「土地に根付くデザイン」といった漠然としたテーマを抱きながら進行するワークショップ号。取材先選定から、取材、原稿執筆のそれぞれの過程で、あらゆる悩みを抱えつつ、それでも参加者の皆さんと一緒にゴールを切り、完成の喜びを分かち合えたことが一番の喜びです。
そしてこの『d design travel WORKSHOP SHIBUYA』号を通して、渋谷という街の魅力を、多くの方に体感していただければと思っています。

また、新たな場所で、新たな土地の魅力を発掘できることを楽しみにしています。
関わってくださった皆様、お疲れ様でした! そしてありがとうございました。

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d design travel WORKSHOP SHIBUYA』が完成しました!!