漆と漆器②

漆器を使うためにまずは知っておきたい、漆や塗る土台となる木地について「漆と漆器①」でご紹介しました。今回は、滴生舎の漆器の仕上げの鍵となる「塗師」について、そしてその漆器の特徴や使い心地、手入れについてご紹介していきます。

・塗師と浄法寺塗
土台の木地が完成したら、漆を塗る「塗師」により、いよいよ下地付け、そして漆を塗っていく作業に入ります。下地付けは土台の木の木目の凸凹を埋め、漆との密着性を高め、表からは見えないながらも器の頑丈さが決まる大事な作業になります。方法は漆器の産地によって様々で、粉末を生漆と練り合わせて塗る「本堅地」や「本地」、さらに壊れやすいところには布で補強する布着せなども行う場合があります。
滴生舎の漆器では「塗り重ね」という漆のみを塗り重ねることで強度を高める技法で仕上げています。そのため下地付けは、たっぷりの生漆を木に染み込ませることで下地を作っていきます。

下地付けは終わり、精製した漆を塗り始めるところ

下地付けの次は精製した漆にベンガラ(赤色顔料)を混ぜ、下塗りを行なっていきます。そしてなめらかさと漆の密着をよくするため砥石やサンドペーパーで磨いていきます。そこから上塗りまで6回ほど塗って研磨を繰り返し、丈夫な膜を作っていきます。下地を中国産漆、上塗りを国産漆と使い分けることもありますが、今回展開している漆器は下地から仕上げまで全行程を「浄法寺漆」のみで仕上げています。

国産漆は硬化すると膜が固く仕上げに良いとされています。国産の漆の値段は中国産漆の約5倍ほど違います。
仕上げの塗りはベテランの10年以上の塗師により、ゴミやホコリがつかないよう専用の部屋で行われます。塗りの出来が商品の質を決める「塗り重ね」は、塗師の高い技術により仕上げられています。そして塗りの全行程は最低でも3ヶ月ほどかけて完成という、とても時間と手間がかけられています。

サラサラとして伸びの良い浄法寺漆は塗師泣かせとも呼ばれるようです。

滴生舎の漆器の「浄法寺塗」その一番の特徴は、仕上げ塗りのあと本来磨いてツヤを出すところを、そのままで終わります。これは使い手とともに育って欲しいという思いがこめられており、日々使い続けることで磨かれ、徐々にツヤが出て仕上がっていくよう作られています。
そして完成した漆器は、どれも深みのある色で、柔らかく光をうつしています。

・たっぷり入る浄漆椀
滴生舎で人気があるのは定番の浄漆椀です。僕は試しにこれで豆腐の味噌汁を飲んでみました。使ってみると見た目の美しさはだけでなく、毎日使いたくなる魅力が分かってきました。

今回使ってみたのは浄漆椀の溜の中サイズ、ぽってりと深みのある形が特徴で、用途や使う方の手に合わせて3サイズから選べます。

まずは味噌汁を注いでみると、我が家のオタマ三杯くらいが入る大容量。そして熱々の味噌汁を入れても持ってる手は熱をじんわりと感じる程度でした。
飲んでみると口当たりは柔らかく、よく見ると口元がわずかに外に開いていることで当たりが良くなっていることに気づきました。

最後に使い終わった後は、ぬるま湯で手でこするだけですっと汚れは取れるので、さっと後片付けも終わりました。ちなみに油などが気になるときは薄めた洗剤をつけたスポンジで洗って下さい。

使用実感から、シンプルな味噌汁やスープをたっぷり飲めていいですが、具沢山な豚汁なども楽しめそうでした。ちなみにヒカリエのd47食堂では冬にぜんざいを出す時などにも使用しています。
一番大きいサイズは軽めの丼やうどんそばも盛れるくらいのサイズ感で日々の主役としても使えそうです。

二回に分けて紹介した、漆や素材、滴生舎の漆器ですが、使い方はつかいての方が自由に日々使うことで、日々の大事な器になっていくと思います。ここに書ききれなかったこともたくさんあり、もっと気になることや質問がありましたら、ぜひ店頭でスタッフまでお声掛けください。

NIPPON VISION MARKET 「浄法寺の漆と器」
2018年9月27日(木)~10月30日(火)※最終日は17時までとなります。

参考書籍(イベントコーナーでも販売中)
・『いわてのうるし』 まちの編集室
・久野恵一監修 萩原健太郎 著 『民芸の教科書③ 木と漆』 グラフィック社