太田哲三窯に行ってきました。前編

5/17(木)から始まるNIPPON VISION MARKET「小石原焼 太田哲三窯」展の取材のため小石原焼の作り手である太田哲三さんを訪ね、福岡県朝倉郡東峰村にスタッフみんなで行ってきました。 今回は、哲三さんに小石原焼の歴史、器の特徴や小石原の現状/今後についてお聞きしましたので、レポートしたいと思います。

 

太田哲三窯のある東峰村は、福岡県南東部に位置する山間の村で標高約500メートル。冬場には雪が多く、寒冷な気候なのが特徴です。取材に訪れた4月中旬もまだまだ肌寒く、工房に併設された展示場ではストーブのそばでお話を聞かせていただきました。

 

小石原焼の歴史は今から約350年前にはじまり、元々は周辺の農家のために、すり鉢や蕎麦のこね鉢などを作っていましたが、戦後に日本人の生活様式が変わり、大きな壺や甕、鉢などの需要が低下したことから現在の小石原焼に見られる一般家庭向けの実用的な食器を多く作るようになったそうです。

そんな小石原の産地の変化の中で重要な役割を担ってきた太田家の太田熊雄窯から独立した太田哲三さんは、有田の高校で窯業を学んだ後、父の元で修行をします。民藝運動で知られる陶芸家浜田庄司の元へ弟子入りをする予定だったそうですが、浜田氏から父の元で学ぶようにと促され、以来独立まで父熊雄氏の元で修行。昭和50年に独立し、今は長男の太田圭さんと2人で作陶を続けています。

 

まずは、さっそく実際の作業の様子を見せていただける事に。私にとってははじめて焼き物の工房を目にするので、とてもわくわくしながらお邪魔いたしました。

 

工房の中に入ってまず目に飛び込んできたのは、これから焼かれる器たちが所狭しと並んでいる様子。手しごとなので全く同じものは2つとないけれど、綺麗に形が揃った器が整然と並んでいる光景を見ると修行時代から多くの数物を作り続けてきた技術の高さが伝わってきます。

 

さらに工房の壁にはなぜか、アート・ブレイキー&ザ・ジャズメッセンジャーズの福岡公演のポスターが。お話を聞くとコンサートのあと居酒屋でブレイキー氏に会い一緒にお酒を飲みかわしたのだとか。

 

そういえば、工房の外にはかっこいい車も止まっていました。

 

工房に入った瞬間、すこし哲三さんの人柄に触れたような気がして嬉しくなりました。

そして、こちらが作業場。

 

はじめてみる道具や材料にみんな興味津々で思わずキョロキョロしていると、おもむろに土を練りはじめる哲三さん。

早速、器づくりを見せて下さいました。

繰り返しの職人仕事が根底にある民陶・小石原の伝統を祖父の代から受け継ぎ、「使い勝手の良さが基本であり、見ていて美しいものには迷いがない」と穏やかな口調で話す哲三さんの手しごとを見せていただくと、驚くほど素早い。

 

こちらの質問に答えながらも、ろくろの上で回る土に手をつけると瞬く間に形が変わり、湯飲み、飯碗、すり鉢、蓋つき壺、徳利、お猪口、刷毛目皿、指描き皿、お椀と次から次に器が出来上がり、 わずか20分ほどで9つもの器が哲三さんの手から生み出されていきます。

哲三さんは、修業時代に小さい器を莫大な量作り、その腕を磨いたことで、器のサイズがピタリと決まるほどの技術を持つろくろの名手です。

そんな、哲三さんの手しごとにはほんとうに迷いがなく一つ一つの所作がとても滑らか。おもわず魅入ってしまいます。

そして、特に感動したのが蓋物をつくる場面。

 

まず、壺本体を形づくります。

 

さらに胴体に膨らみを持たせるために、専用の道具で形を整えます。

 

最後に蓋を作ります。型を使ったり、道具でサイズを測っているわけではなく、手の感覚だけで調整します。

 

壺と蓋を別々に作り、サイズがピタリと合った時は感動的でした。繰り返しの作業が培った熟練した技術を持つ職人・太田哲三さんの凄さを間近で感じることができた瞬間です。

 

いつも優しい太田さんファミリーのご厚意で、さいごに小石原焼で美味しいおまんじゅうとお茶をいただきました。下に敷いているのは西アフリカの泥染めの布ではないかと思われますが、小石原焼の器にとても良く合っていて、取り入れたい組み合わせです。なにより、こうして自分たちの作った器で、さりげなくおもてなしをしてくださることに感激しました。

 

余談ですが、太田さんの工房に併設されている展示場には、センスの良い民藝品や家具がさりげなく置かれていてUSED担当の私としてはとても参考になりました。

 

奇をてらわず用途に忠実で暮らしのなかで長く使える器を作り続けている哲三さん。 福岡店では太田哲三窯の器をロングライフデザインと考え、オープン当時から福岡セレクトとして取り扱っています。ぜひ、店頭では手にとってひとつひとつじっくりとご覧ください。

また、5/17(木)から予定しているNIPPON VISION MARKET「小石原焼 太田哲三窯」展では、飛びかんなや刷毛目以外の普段は福岡店で取り扱いのない技法を使った器、壺や甕など元来の小石原焼の仕事として作られてきた器の数々を販売いたします。なかなか現地まで行かなければ目にすることない器ばかりです。

さらに、ギャラリー展示も準備中。今回の取材でお預かりした貴重な年代の古い小石原焼や道具の展示とともに、小石原焼の魅力を体感していただける内容を準備中です。

次回、レポートブログ後編も近日更新いたしますのでお楽しみに。