dSCHOOL「わかりやすいイト・テキ織物入門-職人から学ぶ糸と織り-」レポート

2019年9月18日~11月10日開催の山梨店独自企画「郡内からうまれる織物」の関連特別 イベントとして、10月6日(日)に郡内織物を学ぶdSCHOOLを行いました。

講師は山梨県西桂の機屋である「武藤株式会社」の武藤亘亮さんと武藤恵さん、通称シケンジョこと「富士技術支援センター」の五十嵐哲也さんにお越しいただき、お二方から郡内織物が辿ってきた歴史や、さらには郡内織物がもつ細番手という特徴から織物の基礎を学びました。

ー織られる前の糸を触るー

織物というものは、当たり前ですが糸が織られて布ができますね。
実際に機屋さんではどんな素材の糸を使っているのか、触って当ててみるクイズが始まりました。

普段自分たちが身につけている服や布小物から想像して、意外にも皆さん正解が続出しました。
リネンは少ししっかりめ、、シルクは艶がある、、など特徴を捉えながら触ってみると面白いです。
ご参加の皆さんに素材に触れていただいたところで、五十嵐さんによる単純明快な講義がスタートしました。

 

 

ー郡内織物が歩む歴史ー

ネクタイ生地が有名と言われる郡内産地では、いままでどんな織物が生産されてきたのか、時代とともに生産される品目が移り変わっていく様子を学びました。
江戸時代より人々の心をとらえた「甲斐絹」から始まり、1950年頃から発生した景気拡大現象「ガチャマン」を迎えるとともに服裏地・袖裏地・和装地・様々な品目の生産が増え、繊維業が盛り上がりを見せた時代がやってきます。
「織機をガチャンと織って万が儲かる」郡内産地でもその景気拡大現象は見られました。

 

ーイトから学ぶー

生地は機屋さんで織られていることは知っていますが、機織りの作業に入る前にも様々な業者が活躍していることをご存知ですか。
作りたい生地の色・柄をデザインするデザイナー、デザインに則り紋紙を作る紋意匠屋さんや紋紙屋さん。
これらの「意図」を形にしていく業者だけでなく、「糸」を作る業者も多岐に渡ります。
撚糸屋さん、染色屋さん、整経屋さん…(もっとたくさんありますが割愛させていただきます)
機織りができるようになる糸を作るまでに、私たちには見えていない本当にたくさんの加工業者が入っていることを学んでいきました。

武藤(株)では空気のように軽く柔らかいストールを作るために、紡績業者に依頼して独自でシルクカシミヤの糸を開発しています。
髪の毛よりも細い糸なので機を織っていく上で扱いが難しく、それでも心地のいいストールを作るために葛藤している様子を亘亮さんから伺いました。
実際の糸を触らせてもらうと、その細さにびっくり!

そしてその糸を贅沢に織り上げたストールも触らせていただきました。

これだけ細い糸なので、織っていると織機の上で切れてしまう糸もあるそうですが、切れてしまった糸は機結び(はたむすび)をして修正。
切れるのも納得の細さです。織機の上にはたくさんの糸がかけられているので、とても細かな作業になっていきます。

亘亮さんたちがこうして苦労しながら織って作ったストールたちは、恵さんたち(主に社内の女性陣で)出荷前に厳しいチェックを行います。
社長の目で「このくらいはOKだろう…」となっても、お客様の性別・世代の近い女性社員の目で少しの傷やほつれも見逃さず、本当にいい状態のものしか出荷をしていないのです。

たくさんの工程を経て、我々は質の良いストールを身につけることができているんですね。

ーハタオリマチフェスティバルって?ー

五十嵐さんも開催をサポートし、毎年秋に開催している「ハタオリマチフェスティバル」のご紹介をいただきました。


富士山の麓、山梨県富士吉田市のマチ全体を使って機屋さんと来場者を結ぶイベントです。山梨のハタオリ製品だけでなく全国各地の生地製品や古道具の販売、おいしい食のブースも並び、ワークショップや音楽会も行われる楽しいお祭りです。
ハタオリマチフェスティバルが開催されるきっかけとなった出来事や取り組みを五十嵐さんからじっくりと学びました。
今年は10月12・13日で開催予定でしたが残念ながら台風19号の影響で中止となってしまいました。
また、今年のハタフェスにはD&DEPARTMENTもFROM LIFE STOCKのプロジェクトで出店予定でした。定番のトートバッグをはじめ靴箱など、個性豊かな郡内産地のテキスタイルを使ったスペシャルなアイテムを揃えていました。
そしてハタフェス出店と同時に開催を企画しておりました、東京店と山梨店での企画展
「FROM LIFE STOCK 2019 -山梨郡内産地-」</a>は通常通り開催中(山梨店では11月12日~12月1日)ですので、ぜひこの機会にご覧になってみてくださいね。

https://www.d-department.com/item/FROMLIFESTOCK2019.html

 

ー定規織りワークショップー

講義を終えた後は、五十嵐さんが考案された手軽に手織り体験ができる「定規織り」をみんなで行いました。
定規・ゼムクリップ・ダブルクリップ・つまようじ・生地・糸だけでできる簡単な体験です。

定規に生地を弓なりになるようにかける(タテ糸の役目)→ゼムクリップに糸を結びその糸をヨコ糸と見立ててタテ糸の間に通していく→繰り返し


難しくなく織る幅も定規の幅程度なので、織り進めていくうちにみなさん真剣に集中して手を動かしていました。
途中で糸の色を変えて織ったり、織りの組織を変えてみたり。

通常、織りの組織は「平織・綾織・繻子織・・・」など多くの構造があり、組織の違いで生地の薄さや丈夫さ・光沢感など風合いも変わってきます。
今回の体験では主に平織でみなさん織っていましたが、もちろん定規織りでも他の組織でチャレンジすることはできます!

詳しい方法が気になる方は富士技術支援センター繊維技術部の公式ブログ
「シケンジョテキ」をご覧ください。
五十嵐さんがわかりやすく説明してくださっていますよ。

http://shikenjyo.blogspot.com

 

今回のd SCHOOLでは実際に体験をすることで織物の基礎を学ぶことができ、さらには糸という織物の始まりも学ぶことができました。
ひとつひとつの製品が、たくさんの人の手を伝って生み出されていくことのすばらしさを感じることができました。
そしてたくさんの想いが込められている武藤さんのストールは、講義を終えたあとには今までよりも、大切に扱いたくなる気持ちを引き起こしてくれました。

【郡内織物をご購入いただける企画展はこちら!】

山梨展独自企画「郡内からうまれる織物」

https://www.d-department.com/item/DD_EVENT_12504.html

2019年9月18日(水)~11月10日(日)
※月曜定休(祝日の場合は翌火曜休み)

時間:11:00~19:00
お問い合わせ:055-225-5222

今回講師を務めていただいた武藤(株)さんのストールのほか富士吉田市の(有)羽田忠織物のネクタイや蝶ネクタイ・ポケットチーフ・バッグなど、同じく富士吉田市の(有)渡小織物のTORAWのネクタイを販売しています。

いずれも普段から取り扱いのあるメーカーさんですが、この会期中にはラインナップを増やしてご用意しています。
ぜひこの機会に郡内織物の魅力に触れてみてはいかがですか。