食の語り部2016レポート 2 天日塩ができるまでと、その使い方

第14回 良い食品博覧会にてd47食堂内で開催された「食の語り部」講座のレポートです。

第2回目は高知県で塩をつくる、土佐のあまみ屋の小島正明(おじま・まさあき)さんに、「天日塩ができるまでとその使い方」についてお話しいただきました。

土佐のあまみ屋が作っているのは、天日塩。

料理だけでなく、わたしたちの命に関わる塩。たばこや樟脳とともに専売制のもとにありましたが、法律の改定により、メキシコやオーストラリアの天日塩を輸入し、それを日本の海水に溶かして再結晶させるという方法が可能になります。こうしてできあがる塩は、原材料に「天日塩」が記載されているもの。小島さんの天日塩は、これとは異なります。高知県黒潮町で汲み上げた海水だけを使用しています。

まずは、輸入天日塩を加工して作った塩と、一般的に食卓塩として流通している塩と、小島さんの塩を食べ比べてみます。

粒が大きい方が、土佐のあまみ屋の天日塩。塩辛さだけではなく、あまさも感じられます。

続いて塩づくりのお話。

海水を汲み上げるのは、珊瑚もいるという土佐の海。

有名なのは鰹ですが、小島さんは蛸の取り方をお話しくださいました(レポートでは割愛します笑)。

汲み上げた海水を、竹とネットで作った、高さ6メートルにもなる装置に、上からシャワーでかけます。表面積を広げるために付けられたネットを、海水がつたわって下に流れるにつれ、塩分濃度が濃くなり、3.5%程の塩分濃度は18%にもなります。

塩分濃度が濃くなった海水をバケツに置いておくと、カルシウム分の塊ができます。これはおいしくないので取り除いているそう。取り除いた物は入浴塩として流通します。また、このときできている液体が、にがり。同じ良い食品づくりの会の認定品、「くぼさんのとうふ」にも使われています。小島さんの塩をかけて、召し上がっていただきました。

この豆腐には、小島さんの天日塩がよく合います。

残った結晶分を天日干ししたら塩ができますが、小島さんは「このあと適切にほぐすことが大事なんだ」とおっしゃっていました。その上、手をかけていても、天候が不安定だと、できあがる塩の形状が若干変わるそう。パウダー状になるものもあれば、1センチ四方くらいまで大きくなってしまうものも。適度な粒にならないと、しょっぱさを強く感じるそうです。

国内で行われている塩の製造には、天日でなく、釜で炊く火を使った方法もありますが、小島さんの塩には、太陽の熱が必要です。天候に大きく左右されますが、それでも天日干し、太陽と風で作ることにこだわっています。

商品パッケージのイラストは、画家のいけたにまきこさんによるもの。「太陽が塩を抱いているのが、まさにわたしの作る塩なんです。」と小島さん。

名前にもあるように、あまさを感じる小島さんの塩。それは塩のミネラル分をたっぷり含んでいるだけでなく、環境への配慮、「おいしい」ものを作り届けたいという生産者の想いがあります。会の最後には、「塩を食べるみなさんの健康な生活を考えています。これはわたしだけでなく、良い食品づくりの生産者はみんな思っていることですが」とお話くださいました。

最近では、国内外、さまざまな塩が手に入りやすくなっています。自分に合った塩を選ぶには、どうやって作られているかを知ることが鍵です。ぜひ、「減塩」よりも、ミネラル分の入った「良塩」を、召し上がってください。