狭山茶の生産をする茶園見学レポート

今回、茶岡野園の先代からお付き合いを続けている茶園へお茶の生産をする工場と茶畑の見学に行ってきました。

熊谷から狭山、入間方面に向かっていく途中にも茶畑や、自宅用なのでしょうか野菜の畑の生け垣として茶の木が植えてあるところもしばしば見受けられます。

今回見学させていただく茶園も工場に隣接した場所に茶畑がありました。話を聞いている時もお茶を蒸している良い香りがします。

 茶園には寒冷紗という黒い資材で日服縛りをかけ、冬の寒さ、霜が降りてきたときに霜を被らないようにしたり、夏の強い日差しからも守っています。

この日服縛りは常に被せているのではなく、天候を見て必要なときにだけ被せるので、天候を先読みして動く必要があります。
特に茶の木にダメージを与えるのが霜、新茶になる新芽の出る頃1度でも霜があたってしまうと根元の土が凍って茶の木が風邪を引いてしまうような状態になり、茶の葉が黒ずんでしまって全滅ということもあり得るそうなんです。
今年は収穫前の時期に雪や雹が降るなんていう珍事も起きましたよね。この時もとても大変だったそうです。いかに気候を予測し被害を受ける前に対応できるのか、一番大事なのは「勘と予測」だとおっしゃっていました。今年は勘がうまく的中して枯らさず無事に収穫ができたのだととても嬉しそうに話されていて、この収穫がより特別に感じました。

 いよいよ茶畑へと案内をしてもらいます。今回は手摘み用の畑を見せてもらいました。手摘み、機械摘みという区別はよく聞きますがこの二つでは畑も全く別の物なんだそうです。
手摘みの畑は収穫以外でも機械を入れずに管理をしているので土がとても柔らかく、茶の木を植えている間の人が通る部分の「畝間」もふかふかとしています。この土の柔らかさもただ機械を入れないというだけでなく、夏場に畝間の土を人力で掘り起こして空気を入れ込む作業もしています。
また土が柔らかいため有機肥料を与えるときの吸収率も高く、同じ木の種類でも機械摘みの畑と比べたときの違いは一目瞭然なくらいに現れるそうです。

 畑の方へ進んでいくとまずびっくりとする光景がありました。それは一面茶の木を刈り取って地面がさらけ出されているのです。

参加したみんなで何が起きたのかとびっくりとしていましたがこれは「台刈り」といって約2年に1度茶の木を短くカットし、痛みを与えることでより強く成長させる方法だそうです。よく見てみると茶の木の太い根元の幹がしっかりと残っています。伐採した枝葉もそのまま枯らして土へ戻すそうです。

 私は今回初めて茶畑に入らせていただきました。イメージの中の茶の木は幹や枝がしっかりと密になって表面5~10cmくらいに葉がしっかり生えているのかな?と思っていました。
しかし実際枝の長さは70~80cmはあるでしょうか、もう木という感じではないほどです。そして枝はとてもしなやかで大元の幹を見ようと広げても折れることはありませんでした。

驚きはさらに続きます。こんなに深いのに葉が根元側にもしっかりと付いています。これだけ葉がついているのもこの茶の木がとても元気であるからこそなんだそうです。

 さぁお楽しみの茶摘みです。狭山茶の多くは1番最初の新芽の「1番茶」とその後に出てくる新芽の「2番茶」までしか摘まないので1年の中でもこの時期にしか収穫をしていないそうです。この時期に収穫をし、収穫した茶葉を一年かけて製造販売しています。
例年新茶の収穫は八十八夜の日の頃。八十八夜に摘まれたお茶は縁起物でもあるそうです。今年も5月2日の八十八夜の日に初摘みを行なったそうで、年号も変わってすぐ令和初の八十八夜の物なのでより特別ですね。
 今回は一芯二葉の茶摘みを教えてもらいました。新芽1本の脇に2枚の葉がついている部分をつまんで軽く引っ張るとプチっと気持ちよく取れます。
ピンっと太陽に向かって伸び出した新芽を探しだす作業は意外に難しいのですが目が慣れてくると見つけるのも早くなってきてなんとなくおしゃべりをしながら茶摘みを進めていくのがとも楽しかったです。
ここで茶摘みをする摘みこさんは近所のおばあちゃん達でその手捌きは素晴らしいらしく、茶摘み前になると散歩がてらにいつも茶畑を見ている摘み子さん達がまだかまだかと声をかけてくるそうで、そんな一面は地元ならではの素敵な光景です。私もそんなおばあちゃん達に習って一緒にやりたい!と思いました。来年のゴールデンウィークは摘み子入門したいと本気で考えています。もしご興味のある方は是非ご一緒しましょう!
そしておしゃべりをしつつ茶摘みを小1時時間ほどして、約100gほどの収穫です。

摘んだ茶葉を入れた袋の中の香りを嗅ぐとなんとも言えないほの甘い香りがします。この香りが摘みごろを迎えた頃茶畑にふわりと香ってくるそうです。

今回見学の中で話を聞いていて、天候にしても予報だけでなく勘の良さが必要であったり、茶の木の栽培ではそれぞれの畑の木の状態を葉の色や香り、葉の厚み、枝の状況など五感をフルに使って生育状況を観察し、それぞれに適した対応をているのだと感じました。まさに茶の木栽培職人です。

手摘みのお茶が高価となるのも当然だと感じました。またそれと同時に安価なお茶はなぜあの価格が実現するのだろうかという疑問も出てきます。

 

次回見学レポート後半ではこうやって収穫された生葉がどのように煎茶へと加工されていくのか工場の見学を記事にします。

今週末のd SCHOOL「わかりやすい狭山茶」ではこうやって大事に育てられたお茶について、その特性を全国のお茶事情からも学びます。そして、実際にどうやって飲むのか美味しいくお茶を入れるコツを岡野園の相田さんから学びます。また手摘み、機械摘みのお茶に加えて造り込み茶の味がどう違うのかの味比べも行います!全てのお茶を購入するのは大変ですしなかなか三種を一度に味わうことはないので、その味の違いを比べられるのがとても楽しみです。
 茶の木の苗木も持ってきてもらうので実物を見ながら岡野園の相田さんのお話を伺えます。
茶園にて教えてもらった自宅でのお茶の作り方を参考に私が自宅で悪戦苦闘した手揉みの煎茶と紅茶も見ていただくと岡野園で販売している茶葉の針のような美しさが際立つかと思います。ある意味そちらも楽しんでいただければと思っています。
相田さんに同じお茶の葉から煎茶にも紅茶にもなる不思議についても質問したいです。