三野直子さん

ガラスの町「富山市」の拠点でもある「富山ガラス工房」。ここでは、ガラス作家を目指す人々が全国・国外から集まります。

2017年7月2日~8月6日に開催するNIPPON VISION MARKET「富山ガラス工房 15人のグラス」では、富山ガラス工房に所属する作家の皆様に、同じ形のグラスを作って頂きました。今回、製作してくださった作家にお話を伺ってきました。

 

1. 会社員から作家の道へ

もともとは、会社員として関西で働いていたという三野さん。とんぼ玉作りにはまり、自宅でもよく作っていたそうです。週に1度は教室に通っていたとのことで、もはや趣味のレベルではないような・・・。作家になろうと強く思っていたわけではないそうですが、通っていた教室がなくなったことをきっかけに、ガラスづくりへの思いが募り、勤めていた会社を辞め、思い切って能登のガラス学校に行くことを決心。会社の方からは、「やめておけ!」と心配されたそうですが、ご本人からは不安や一大決心の気負いは感じられず、あくまで自然体なのが印象的でした。

2.透明と不透明なガラスが作る複雑な模様
三野さんの作品は、とても個性的な模様が特徴。初めて見たとき、私は縄文土器の模様のような力強さを感じました。

「見る方によって、模様の感じられ方は違います。植物のように見えると話す方もいますよ」と三野さん。この複雑な模様はどうやって作るのか聞くと「サンドブラストといって、砂を吹き付けて細かい傷を付けて模様を描く方法です」と、実際に見せて下さいました。サンドブラストでは、傷を付けたくないところをテープ等で保護し模様を描きます。

傷をつけたくないところにテープ等で保護

その後、砂を吹き付けて模様にしていく

三野さんが使っていたのは、なんと木工用ボンド。ボンドで模様を描き、その後、砂を吹き付けることで、あの複雑な模様が出来上がります。意外と身近な素材を使って、シンプルな方法で作られていることに驚きました。

グラスにボンドを貼付けた後

3.飲み終わったときに発見のあるグラス
今回の企画展では、このサンドブラストと使った作品を製作して下さっています。

右側の全体に模様を描いた作品は、サンドブラストで削りにかけている時間だけでも40分はかかるそう!とても手間のかかる作品です。左側のグラスは、対照的にシンプルなグラス。ですが、台座の部分にサンドブラストが使われています。

「飲み終わったときに、あっ!と気がついてもらえるように、台座だけに模様をあしらいました」と三野さん。シンプルですが、さりげない遊び心が感じられる作品です。

4.溶けたガラスの美しさ
会社員時代からガラスの魅力に引き込まれた三野さん。そんな三野さんにガラスの魅力をお聞きしました。三野さんの答えは「溶けているときの感触と色」。確かに、炉で溶けているガラスは、普段見ている涼しい雰囲気と対照的な一面があります。赤々と光るガラスは、よく見たいけれども熱くて近寄れず、見つめていたいけれどもまぶしい。炉から取り出した瞬間は、水飴のように柔らかいのに、あっという間に冷めて固まり、色も変化していく。そんな、私たちは普段知ることのないガラスの美しい一面にいつも触れていられること。それは作家さんの特権なのだと思いました。

富山ガラス工房では、ガラス作り体験も実施されています。三野さんの話す溶けたガラスの魅力も、感じて頂けますので、よかったらぜひ参加されてみて下さい。