和紙造形作家 森田千晶さんのアトリエ見学

d design travel 埼玉号の表紙にも使われている森田千晶さんの作る和紙の作品。この繊細なデザインはどのようなところでどの様に生まれるのか森田さんのアトリエを訪ねました。

森田さんのアトリエはD&DEPARTMET SAITAMA by PUBLIC DINERから車で約1時間、坂戸駅近くの住宅街、それも東武東上線の線路脇にあります。その名も”アトリエ線路脇”
古いアパートを直しながら3人の作家さんが使っています。

アトリエの中に入るとたくさんの森田さんの作品が・・・
私達はその数々の作品に釘付けです。その中でも特に目を惹いたのが部屋の間仕切りに使っているカーテン。和紙を繋げて作られていて、無造作にぐるっと縛りまとめられているのがなんともカッコよくアンティークの生地のようです。長く使っているうちに柔らかくなってこのようになるのだそうです。

森田さんは小川町で小川和紙を学ばれました。小川町には気軽に和紙の手漉き体験が出来るところから、本格的に学べる施設まであります。

小川和紙の原料は楮(コウゾ)を使うことが多く、楮紙は固めでしっかりとした和紙です。森田さんはこの楮をご自分で育てています。

和紙を作る工程で“かしき”というものがあり、落葉した楮を刈り取り、釜で蒸し樹皮を剥いでいく作業です。毎年冬の寒い時期に有志を募り“かしき”をするそうです。樹皮を取り除いた楮を水に晒し何度か水を替えながらアク抜き。それを叩いて節や取りきれなかった樹皮を取り除きながら繊維をほぐしてやっと紙漉きが出来ます。森田さんの特徴的なレースのような和紙はデザインに沿った型紙を作っています。また草木染めなどで着色するなどたくさんの工程を経て作品が作られています。

森田さんが紙漉きを実演してくれました。簀桁(すけた)という道具にデザインされた型紙を置き、繊維とネリと呼ばれる黄蜀葵(とろろあおい)の根の粘液が入った水を汲み込み縦方向に揺らしていきます。水の通り抜ける部分に繊維が残り模様が出来ていき、揺らすことで、繊維同士が絡み合い一枚の和紙になっていきます。産地によっても揺り方が違うようですが、小川の和紙は縦方向に簀桁を揺することが多く、それもまた作られる家によっても微妙な違いがあるのだそうです。

森田さんは日本の和紙の魅力を伝えるために海外でも活動されています。今までにニューヨーク、スペイン、ハンガリーなどを訪れ紙漉きの実演などもされてきたそうです。国内でもたくさん展示会などされていて最近では山形で大学の学生さんとコラボレーション展を開催していました。森田さんの展示会は和紙で表現される光と陰と風がとても神秘的で素敵な空間がつくられます。

いつも店頭で見ている作品が沢山の工程を経て作られていることや、あまり知られていない埼玉の伝統工芸を身近に感じられる事ができた一日でした。まだまだ気になる“かしき”や紙漉き体験のなど、またレポートしていきます!