「昇苑くみひも」工房見学レポート

宇治平等院やお茶の産地でも知られる京都府宇治市。JR宇治駅から、古くから残る町家が並ぶ通りを5分ほど歩き、一本筋に入ると「昇苑くみひも」さんの店舗と工房があります。

昇苑くみひもは、組紐を使った帯締めや髪飾りなどを作る工房として1948年宇治市に創業しました。組紐とは織物・編物と並ぶ組物の一つで、糸を縦横に織る織物に比べ、3束以上の糸を左右斜めに組みあげた紐のことを指します。奈良時代から仏教伝来とともに紐や作り方が日本に伝わり、現在に至るまで帯締めやお守り、寺社仏閣の飾り紐などに使われています。今回は「昇苑くみひも」の八田さんに、店舗と工場を案内して頂きました。

まずは店舗に。1階には手組の体験スペースと組紐のアクセサリーなどの商品が並んでおり、2階には手組の教室と工房がありました。早速2階へ上がると、京くみひも伝統工芸士の梅原さんが迎えてくれました。

手組は重りの玉がついた糸を交差させて手で組み上げていく技法です。主に、着物の帯締めを制作するために用いられます。実際に角台・丸台・綾竹台・高台の、4種類の組み台を実演を交えて見せて頂きました。「台によってそれぞれ組める柄も違い、機械では表現が難しい複雑な柄や立体感を作ることができます」と、教えてくださいました。

玉が当たる音が一定のリズムで心地よく、その音と共に紐が組み上がっていく姿は新鮮でした。

次は工房へ。店舗から歩いてすぐのところにあります。入り口では、うなぎの寝床と呼ばれる細い廊下を使い、手動で糸に撚りをかける工程が行われていました。

仏閣やアパレルメーカーなど、幅広いニーズに対応するため、糸の染めや撚り、組んで製品にするところまで全て自社で行なっています。その時は、糸をボビンに巻きつけているところや、染色しているところも見学させて頂きました。1つの工程に1人ずつ熟練の職人さんがついておられ、製品になるまで多くの方が関わっていることを実感しました。

多様な要望に対応できるよう、手組の技術を高めていくと同時に1958年頃には製紐機も導入し、均一に量産できる製法も追求しています。工房の奥には60台もの製紐機が並んでいました。

大きな音を立てながら、目で追うのがやっとな速さで動き、組紐がどんどん組まれていく姿は迫力があり、圧倒されました。

工房の2階には組み上がった紐を加工する場所があります。

厳しい審査をクリアした細かなパーツや組紐を組み合わせ、飾り紐に仕上げ、完成します。組紐の機能を活かしながら、日常的に使えるアイテムとして商品開発を積極的にされていることを改めて知ることができました。

京都店では、グラスコードとキーチェーンを販売しています。

「四つ組」で組まれたグラスコードは、単色だからこそ、より組紐ならではの立体感が感じられるようにデザインしました。

キーチェーンは「ちりめん組」で組まれています。袋状になっている紐を平たくした構造で、表面の凹凸がちりめん生地のシボに似ていることからこの名前がついています。

結んでベルトやカバンや付けることができます。

シンプルながらも細かな技術が詰まったくみひものアイテムを、ぜひ店頭でご覧ください。